医療法人が、1年間で2年分の家賃を計上することができるって本当なのか?

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2018/05/30
医療法人が、1年間で2年分の家賃を計上することができるって本当なのか?

医療法人は毎月電力会社に電気料金を支払いますが、それは過去に使った電気に関しての精算です。この場合には後払いになりますが、実際に使った時の経費となります。
例えば、医療法人の決算が3月末として、3月の電気の利用量は翌年度に通知が来て、5月ぐらいに支払います。それでも医療法人の決算書には未払費用として計上されます。これは水道光熱費や電話料金などの経費は常に医療法人は後払いとなっていて、同じ取り扱いとなります。

一方、医療法人が常に前払いする経費もあります。代表的なものが、診療所の家賃、または火災保険や生命保険料です。この場合には支払った段階では経費とはならず、時の経過とともに経費に計上されます。
例えば、3月末決算の医療法人が1月に1年分の損害保険を支払ったとします。すると今期の3月末の決算では、1月から3月までの3ヶ月分しか経費にはなりません。残りの9か月分は翌期の経費となります。そのため、医療法人の決算書では、9か月分が前払費用として資産に計上されるのです。

ところが、下記の一定の要件を満たすと今期に1年分全額を経費に計上できるのです。先ほどの事例で言えば、1年分の損害保険料を3か月分と9か月分に分けずに、1月の時点で1年分をすべて経費に計上してしまいます。これを短期前払費用と呼びます。

それぞれの要件を確認していきましょう。
まず①については、金額的に重要ではないことです。明確な基準はありませんが、例えば、医療法人の税引き前の利益が20000万円のところ、1000万円もの短期前払費用を計上したら、利益に対する影響はかなり大きいと考えます。

あくまで短期前払費用は特例で1年分を落としているのであり、やり過ぎると税務調査で否認されるリスクがあります。

医療法人で分院があり、その家賃をすべて合算したものに短期前払費用を適用するときには注意が必要です。

次に②の

等質等量とは、毎月同じサービスが提供されなくてはいけないことを指しています。

また③はそのサービスが毎月費用化されることが前提となります。
先ほどの電気料金では、毎月の費用化は満たしますが、利用量は違ってくるため等質等量は満たせず、1年分を前払いで支払っても経費にはなりません。あくまで実際に使ったときの経費となります。

一方、診療所の家賃は毎月同じ面積を借りていますし、損害保険料も掛けている医療機器は同じですし、医療雑誌などを定期購読した場合にも同じ雑誌が送られてきます。これらは、毎月同じサービスが提供されて、費用化されるため、短期前払費用の②と③の要件を満たすのです。ここで間違えやすいのはコンサルティング料です。

例えば、毎週1回ずつ医療法人に来て助言してくれる弁護士がいても、回数が同じというだけで作成する書類や助言は全く違うはずです。そのため、等質等量のサービスとはならず、短期前払費用は適用できませんので、注意してください。

 

そして、④ですが口頭での契約はダメで、書面にて契約を締結する必要があります。
損害保険料に関しては常に損害保険会社との1年更新の契約がありますし、医療雑誌についても1年分の契約となっているため、この要件を満たせます。

一方、診療所の家賃は通常1か月分を前払いする契約となっているはずですので、その契約書を作成し直す必要があります。大家さんとしては1年分を医療法人が前払いで支払ってくれるならば、家賃の未回収の不安から解消されるため、快く承諾してくれるでしょう。

また、この契約は毎年継続して守る必要もあります。
例えば3月末決算の会社が、3月に1年分の診療所の家賃を前払いで支払うとその年度は2年分が経費となり、翌年以降は1年分が経費として計上されていきます。ところがある年度のときに、医療法人が赤字になるという理由で短期前払費用を止めたとします。
その年度の家賃はすでに前期に経費に計上されていますので、その年度は家賃が一切計上されずに赤字を補てんできます。これを繰り返すと税務署から利益調整とみられて、過去の短期前払費用自体を否認されることになりますので、注意してください。

なお1年分の家賃を前払いで支払ったとしても、年の途中で賃貸を止める場合には経過していない時期の家賃は戻ってきます。そのときは戻ってきた金額が、その期の利益として計上されます。

最後に⑤となりますが、実際に年度末までに支払っていることが必要です。

短期前払費用の特例を使う場合に、未払いとして計上はできないことを指します。

先ほど継続する必要があると説明しましたので、毎期、年度末までに支払う必要があるのです。
とすれば、1度始めたらずっと前払いで支払う必要があり、医療法人の資金繰りにはマイナスとなり、かつリスクを負うことになります。

そもそも短期前払費用に該当するすべての経費を対象にせずに、例えば、損害保険料だけを対象に行うということもできます。また分院がある医療法人であれば、1つの分院だけに適用することもできます。医療法人の資金繰りを予想して、無理のない計画を立てて、前払いで支払う項目と金額を決めてください。

この短期前払費用については、医療法人の税務調査で担当官ともめたり、実際に国税不服審判所にも多数の裁決事例があります。また一度始めたら止めることができません。
医療雑誌の購読料や保険料は短期前払費用を使って1年分を経費に計上してもよいと思いますが、それ以外の項目はよく検討してから適用するようにしましょう。

特に、医療法人の診療所の家賃は高額であり、あまり短期前払費用を適用することはお勧めできません。

 

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