個人事業主の診療所に税務調査が入ったときに、否認されやすい項目を知っておこう③

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2019/01/30
個人事業主の診療所に税務調査が入ったときに、否認されやすい項目を知っておこう③

前回は売上原価の項目について確認しましたが、今回は経費の2つ目の区分である、販売費及び一般管理費の項目を確認していきましょう。

 

1. 架空人件費の計上

架空仕入を計上する院長先生はほとんどいませんが、架空人件費はありえます。「架空人件費って、雇ってもいない人に給料を支払ったフリをするってことでしょ。そんな悪いことしないよ」と院長先生は言うかもしれません。ただ、架空人件費で最も多いのは、配偶者や親族への給料なのです。

配偶者が働いてもいないのに、専従者給与を計上したり、親族にいたっては、遠方に住んでいるのに給料を支払ったりします。過去に、オーストラリアに住んでいる子供に給料を支払っている院長先生もいました。

一般的に架空人件費と呼ばれるものは、従業員が辞めたのに継続して給料を支払い続け、そのお金を自分の懐に入れてしまうことです。

お金が還流して貯まるため、明らかに脱税です。
ところが、配偶者や親族への架空人件費では、院長先生にお金が還流してきません。つまり、配偶者や親族に実際にお金を支払い、そのままあげてしまうのです。院長先生の名義の銀行口座のお金は増えどころか、減っているため、後ろめたい気持ちがありません。

ただ税務調査のときに、担当官はどんな仕事に配偶者や親族が携わっているのか、直接話をしたいと言うはずです。しかも、親族が遠方に住んでいたりすれば、最初から疑った目で調査が進みます。少しでも働いている実態があれば、給料が相場よりも高いかどうかに焦点が当たり、そこは脱税ではなく、見解の違いで終わります。

ところが医院や病院に来たこともなく、まったく関与していない配偶者や親族に給料を支払っていれば、それは架空人件費と認定されてしまうのです。

架空人件費となれば、重いペナルティも課されて一緒に追徴されます。

確かに、所得税は累進課税ですので、所得を分散するだけで所得税は節税できます。しかし、まったく働いていない配偶者や親族に給料を支払うことは、絶対にやってはいけません。もし給料を支払いたいのであれば、働いているという実績を作ることが必要です。医院や病院の領収書の整理でもよいですし、掃除でも構いません。仕事をしていることが重要なのです。

 

2. 非課税の通勤費

院長先生が毎日、医院や病院に通って来るときにJRの運賃を支払うはずです。それに対して、通勤手当を支払うことはできません。ただ実際に使っている交通費の実費は上限なく、経費として認められます。

一方、勤務医や看護師に対しては、給料と別に通勤手当を支払えば、経費に計上できます。勤務医や看護師にとっても実費を受け取っているだけなので原則、所得税はかかりません。

ところが、この所得税が非課税となる通勤手当の金額には上限があるのです。

まず、勤務医や看護師が電車やバスなどの公共交通機関を使って通勤するならば、1か月15万円が所得税の非課税となる上限です。
例えば、東京駅から静岡駅の区間の新幹線の通勤定期代が133,860円です。そのため、これよりも遠方から来る勤務医や看護師がいて、15万円を超えて通勤手当を支払っていれば、その超えた部分に対して所得税がかかります。
これについて院長先生が源泉徴収をしていないと、税務調査のときに指摘されてしまうのです。

看護師がそれほど遠方に住んでいることはないですが、勤務医の場合には遠方から来ることが珍しくありません。毎週3日間ですが、福岡から東京に通勤している勤務医も知っています。毎日、仙台から東京に通っている勤務医もいます。

なお、院長先生が勤務医に給料と一緒に通勤手当を支払うのではなく、飛行機代を直接航空会社に支払うなら、上限はなくなります。

つまり、全額を旅費交通費として計上できます。

また、勤務医や看護師が車で通勤してくるケースもあります。
医院や病院は郊外にあることも多く、車での通勤はかなり多いはずです。このときには、片道の距離で1か月の定期代の上限の金額が下記のように決まっています。また車だけではなく、自転車やバイクで通勤してくる勤務医や看護師に対しても通勤手当を支払うことができ、上限金額も同じです。この上限金額を超えてしまうことはないと思いますが、知っておくべきでしょう。

この通勤手当で、最も間違えやすいのは、配偶者への支払いです。
配偶者も医院や病院に通勤してくるならば、通勤手当を支払えます。
当然、通勤手当ですので、所得税は非課税となります。

ところが、配偶者に給料を支払うときには、「青色事業専従者給与に関する届出(変更届出)書」に、1年間の給料を記載して税務署に提出しておかなければいけません。そこに記載された給料の範囲内であれば、経費として認められるのです。このとき、通勤手当も給料の一部ですので、これを含めた金額で記載しておかないと、経費として認められません。これは明らかなミスですので、税務調査で指摘されたら反論できずに追徴されます。

 

3. 残業した勤務医や看護師にお金を渡している

終了時間の間際に来た患者さんを受け入れる医院や病院では、勤務医や看護師の残業が日常的に起こります。あまり残業が多いと、クレームになったり、集団で辞めてしまうことにもなります。その対策の一環として残業したら出前を取ってあげるという医院や病院もありますが、これは福利厚生費として認められます。

ただ出前ではなく、お金を勤務医や看護師に渡すとそれは給料となってしまうのです。

ときどき、お金ではなくクオカードなどで渡している医院や病院もありますが、コンビニで自分の好きなものを買えてしまうため、やはり給料となります。税務調査で指摘されると、給料なので個人事業主の経費としては認められますが、院長先生の源泉徴収漏れとなります。

そのため、そもそも現金を渡すならば、源泉徴収を行った上で、残額を渡すようにしましょう。

 

4. 院長先生の交際費

個人事業主の交際費は、税務調査でもっとも担当官ともめる部分です。というのも、交際費の範囲があいまいで、はっきりと決まっていないためです。

実は、個人事業主の交際費として認められる金額に、上限はありません。

簡単に言えば、交際費となる金額は、青天井で認められるのです。医業収益が1億円の医院や病院の交際費が1年間で2000万円であってもよいのです。それならば、なにを担当官ともめるのかというと、そもそも交際費なのかということです。

勤務医として働くように勧誘する目的で、大学時代の同級生の医師と飲みに行ったら、それは交際費となります。一方、単純に同級生として飲みに行っただけならば、それは個人の生活費となるのです。

結局、院長先生が医院や病院の業務に関連した目的があって、飲みに行けば交際費となるということです。これは、院長先生にしか分かりません。

ただ何の証拠もなく、税務調査の担当官と言い争っても仕方がありません。そのため、本当に勤務医として勧誘したのであれば、事前にメールで要件を送っておき、それを印刷して保存しておけば、確実な証拠となります。

交際費となるのは、飲食費だけではありません。
お中元やお歳暮、慶弔費、商品券や金券などを医院や病院に関連する人に渡せば、それも交際費となります。ただ、お歳暮を誰に贈ったのか、商品券を誰にいつ渡したのか、必ずノートなどに記載しておいてください。

誰に贈ったのか不明なものは、税務調査の時に否認される可能性があります。このとき、院長先生と苗字が同じ人がいれば、親戚ではないかと疑われ可能性があります。当然、親戚や同級生に贈ったお歳暮は、医院や病院の業務とは関係がないため、交際費とは認められず、生活費となります。それが見つかると、他にもあるはずだと予想されて、税務調査が厳しくなります。

生活費と認められる金額は抜き出して、残りの金額だけを経費として計上して、確定申告するようにしましょう。

 

この2つ目の区分である販売費及び一般管理費が税務調査で指摘される項目は、まだあります。それは次回以降に解説していきます。

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