不正請求と指摘されて社会保険診療を返還したら、更正の請求をすることになるのか?

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2019/08/30
不正請求と指摘されて社会保険診療を返還したら、更正の請求をすることになるのか?

社会保険診療の一部についてあとから指導や調査、または医療監査によって不正請求と指摘されて返還することがあります。不正請求と聞くと自分には関係がないと考える院長先生もいるかもしれません。ところが、厚生労働省が発表している平成29年度における返還金額の合計は、下記となります。

このとき、返還した金額があれば、それだけ過去の医業収益が減ることになります。とすれば、個人事業主の院長先生であれば、所得税を多く支払っていたことになり、それを取り戻す必要があります。

一般的に、国税通則法によれば申告期限から5年以内であれば、更正の請求と言って、過去の利益を修正することで所得税を還付してもらえます。

ところが、国税通則法では、各国税についての基本的な事項及び共通的な事項を定めているとしていますが、各税法に別段の定めがあれば、そちらを優先するとしているのです。

 

(1) 所得税における取り扱い

所得税では、後発的な事由によって過去の利益の金額が変動したときに、それを更正の請求で修正できるのは、事業を廃止したケースに限定されています。そのため、院長先生が事業を廃止していない限り、社会保険診療を返還したときに資産損失として経費に計上して修正することになります。

このとき、注意すべきことがあります。
それは通常、所得税で経費に計上できるのは、債務が確定した時です。そのため、保険者から返還請求及び納入通知を受けた日が属する年度の経費に計上すると考えがちです。

しかし、資産損失が計上できるのは、社会保険診療として医業収益に計上したこと自体が無効であったという理由です。

そのため、実際にお金を返還した日が属する年度の経費に計上されるのです。

国税不服審判所の裁決でも、

「原告は各返還同意書を提出するなどしており、他方各保険者からは原告に対する返還請求が行われているのであるから、原告が返還債務を負っていることは、当事者間において既に確認されているものといえるのであるが、このことのみで、原告が診療報酬の不正請求等をしたことにより生じた経済的成果が失われたということはできないのであり、原告が返還債務を現実に履行した場合に初めて、その部分についてその経済的成果が失われたものとして、その履行した日の属する年分の事業所得等の金額の計算上、必要経費に算入することができるものというべきである。」

と結論づけられています。

ところで、院長先生が医院経営や病院経営を継続していれば、資産損失として計上することになりますが、廃止していたらどうなるのでしょうか?

「事業を廃止」と聞くと廃院と考えるかもしれませんが、それだけではなく、医療法人を設立したときにも個人事業主である医院や病院を廃止することになります。

このときは、所得税の特例によって、後発的な事由で経費に計上すべき金額が発生したときには、廃止した日の属する年分又はその前年分の経費として計上できるとしています。

当然ですが、すでに事業を廃止したあとなので経費に計上する意味はなく、更正の請求で所得税を取り戻すしかありません。

具体的には、事業を廃止した年の利益を限度として、経費に計上します。このとき、自分の診療所の利益からだけではなく、他の医院や病院で働いて受け取っていた給与があれば、それとも通算できます。差し引きしても経費が余ることもあります。

例えば、1月に医療法人を設立していれば、廃止した年の個人事業主の利益は1か月しかありません。これでは差し引けない可能性が高くなります。その余った分については、廃止した年の前年分の利益とも通算できます。それでも余った経費がある場合には、前々年の利益とは通算できずに、切り捨てられてしまいます。

これに関しても、平成9年4月15日の国税不服審判所の裁決で、

「請求人は、社会保険診療報酬に係る不正請求について、不正請求金の返還請求と納入通知を受けた段階で債務が確定したのであるから、返還請求を受けた全額について平成3年分及び4年分の更正の請求を認めるべきである旨主張する。
ところが、無効な行為により経済的成果が失われた場合には、資産損失の必要経費算入の規定により資産損失に該当し、当該損失の生じた日が事業廃止後である場合は事業を廃止した場合の必要経費の特例の規定により、これをまず事業を廃止した年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入し、なお控除しきれない金額については前年分にさかのぼつて更正の請求ができることとされている。
請求人は、事業廃止後に不正請求金の一部を返還しており、現実に返還した金額については、まず平成5年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入し、なお控除しきれない金額については平成4年分について更正の請求をすべきである。」

と結論づけられています。

なお、社会保険診療の返還金を見越して、個人事業主の廃止の月を決定するなどということはできませんが、更正の請求は2年しかできないということは覚えておくべきです。

 

(2) 法人税における取扱い

法人税では、所得税のような特別な取扱いはありません。そのため、資産損失が確定した年度に債務が確定するため、そこに遡って経費を計上することになり、更正の請求を行います。

ただし、法人税の更正の請求も、申告期限から5年以内に限られています。

もし5年超経過している場合には、そこに該当する資産損失の経費は切り捨てられてしまいます。

 

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