訪問看護を行っているが、看護師の移動時間は労働時間に当たるのか?

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2019/09/20
訪問看護を行っているが、看護師の移動時間は労働時間に当たるのか?

最近では、訪問診療や訪問看護を行う医院や病院も増えてきています。

基本的に、往診とは通院できない患者から依頼を受けて、院長先生がその都度、診療を行うことです。

突発的に病状が悪化したときに救急車を呼ぶほどでもないケースで、普段通っている診療所の院長先生にお願いして診察に家まで来てもらうもので、臨時の手段と言えます。

一方、訪問診療とは、「毎週火曜日の15時から診察」と約束して医師が訪問して診療するものです。

医師が1週間に1回、又は2週間に1回程度の割合で計画的に訪問し、診療、治療、薬の処方、療養上の相談、指導を行うものです。患者やその家族から、今までの病歴や病状を詳しく聞いて、どのような治療を望むのか、さらに家族が介護できる余力や経済的な状況も考慮して、診療の計画を立てます。

そして、往診と同様に突発的に病状が悪化したときには緊急訪問したり、入院の手配を行うなど、臨時の対応も行います。多くの医院や病院では、24時間体制でサポートしています。そのため、院長先生1人では対応ができず、何人かの医師で組織的に行う必要があります。

また、訪問看護とは、看護師がお宅に訪問して、患者の病状や介護の度合いに応じて看護を行うものです。さらには、院長先生の指示を受けて、医院や病院と同じような医療処置も行います。
具体的には、下記のような看護となります。

こちらも、数名の看護師が必要となりますが、医師を募集するよりは人員は集まりやすいことは確かです。しかも、保険医療機関である医院や病院であれば、原則として介護保険法のみなし指定訪問看護事業所として扱われるため、訪問看護ステーションと同じく介護保険も医療保険も使えます。

実際に働く人は、看護師、保健師、准看護師、助産師だけではなく、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士によるリハビリテーションの専門家も含まれます。そして、どのくらいの頻度で訪問してくるのかと言えば、介護保険の場合は、ケアプランに沿って1回の訪問時間は、20分、30分、1時間、1時間半の4区分となります。

医療保険の場合は、通常週3回までで、1回の訪問時間は30分から1時間半程度です。
当然ですが、患者の意向や病状にもよって、頻度は変わります。それでも、医療保険の場合であれば、1日に4件から5件程度は回らなければいけません。では、看護師が移動する時間は、労働時間に含まれるのでしょうか?

最近では、未払残業代をあとから請求される医院や病院が増えています。そのため、看護師の移動時間が労働時間に含まれるにも関わらず、労働時間として認識していなければ、未払賃金が発生していることになり、かつそれが残業時間となっていれば、割増賃金も必要となります。

そもそも、労働時間の定義は、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」とされています。そのため、医院や病院が看護師や労働契約を締結していたとしても、それによるのではありません。

客観的に見て、看護師の行為が院長先生の指揮命令下に置かれたものと評価されれば、それは労働時間となります。

より具体的には、①使用者から義務付けられた業務である場合、②場所的に拘束されていた業務である場合などは、裁判では労働時間と判断されています。ただし、訪問看護では、移動時間も2つの種類に分けることができます。

 

(1) 通勤や帰宅の時間

看護師が直接、自宅から患者の家に直行したり、患者の家から直接、自宅に帰宅することもあります。これについては、労働時間に含める必要はありません。というのも、医院や病院に通勤してくる看護師や社員についても、通勤時間は労働時間に含めていないからです。

 

(2) 患者の家から、次の患者の家へ向かう時間

看護師が患者の家から次の患者の家へ向かう移動時間については、その移動は院長先生の命令によるもと見られるため、労働時間となります。

これを労働時間から外していれば、労働基準法32条の違反となります。さらに、移動時間を労働時間に足した結果、法定労働時間である8時間を超えていれば、労働基準法37条により、時間外手当として通常の給料の25%以上の割増賃金を支払う必要があります。

それでも、訪問看護の場合には、看護師がずっと患者宅を周っているため、医院や病院としても実労働時間を正確に把握することは難しくなります。そこで、事業場外みなし労働時間制が適用できないかと考えることになります。これは簡単に言えば、「医院や病院以外の場所で仕事をするときに、所定の時間の労働をしたとみなす制度」のことです。

事業場外みなし労働時間制を適用したときには、労働時間のカウントは特殊なものになります。例えば、看護師が月曜日は7時間だけ訪問看護として勤務したが、火曜日は9時間も勤務したとします。としても、いずれも8時間だけ働いたとみなすのです。もし、時間を超えて働いていたとしても残業代を支払う必要がありません。

それでも、通常必要とされる労働時間が、そもそも9時間となっていれば、それがみなし労働時間となるため、医院や病院の所定労働時間が8時間であれば、1時間分の残業代を支払う必要があります。

とはいえ、通常は残業代を支払わないように、みなし労働時間を設定します。ただし、事業場外みなし労働時間制を悪用する会社もあるため、厚生労働省は下記のような通達を出しています。

これを基に、裁判所は旅行会社の添乗員について、下記の事実があるため、事業場外みなし労働時間制を認めないという判決を下しました。

とすれば、訪問看護についても、通常は事前の計画のもとで、院長先生の指示のもとで移動していて、かつ何かあればすぐに連絡してくることになっているはずです。そのため、事業場外みなし労働時間制が認められる余地は少ないと考えます。

そこで、訪問看護により、患者の自宅に滞在している時間だけではなく、移動時間についても報告させて、それらを合わせた時間で給料を支払っておくべきです。

 

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