就業規則を変更して、住宅手当を廃止することはできるのか?

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2018/04/10
就業規則を変更して、住宅手当を廃止することはできるのか?

医院や病院が看護師や社員を募集するときには、できるだけ条件を良く見せたいと考えます。そのため、募集広告に給料以外に手当を付けると記載すれば、少しでも優秀な人材が集まるはずです。通勤手当はどの医院や病院でも当然、出しているはずですが、それ以外に住宅手当、資格手当、家族手当など、様々な種類の手当が存在します。

例えば、住宅手当であれば、
① 医院や病院が社員の賃貸物件の家賃の一部を負担する場合
② 社員の持ち家の住宅ローンの返済を補助する場合
の2つに分類されます。

ところが、医院や病院で働く看護師や社員が実家から通っていれば、住宅手当てをもらうことはできません。そのことで一部の看護師や社員にだけが住宅手当を受け取ることができ、不満につながることもあります。その場合には住宅手当の支給を打ち切り、その分を公平に賞与に上乗せして、みんなに分けるという方法が考えられます。

ただ医院や病院が負担する総額を増やさずに、住宅手当を平等に分配するということになれば、現在、住宅手当をもらっている人は減額されることになります。
このような労働条件の変更は認められるのでしょうか?

 

1. 看護師や社員の同意が必要となる

雇用契約は医院や病院が、看護師や社員が事前に締結した契約書です。そのため、お互いに合意するならば、雇用契約の中の労働条件を変更することができます。また雇用契約にすべての条件を詳細に記載できないため、そこに記載がない内容については、「当該医院の就業規則に従う」という文言を入れます。そこで、同じように

就業規則を追加修正すれば、労働条件を変更することができると解されています。

ただ雇用契約を変更するときも、就業規則を変更するときも、看護師や社員にとって不利益となる場合には、必ず同意が必要となります。雇用契約は本人の署名押印が必要となるため問題ないのですが、就業規則の変更は、本人たちの同意があったのか、慎重に判断しなくてはいけません。原則、同意がなければ、労働条件の変更は許されないのです。

 

2. 同意がもらえなくても変更できる

住宅手当などの手当てについては、通常は医院や病院が作成した就業規則に記載されていることが多いはずです。この就業規則を変更するならば、事前に看護師や社員にその理由を説明するはずです。ここで不利益と分かれば、本人たちの同意がもらえないこともあります。もし同意が得られない限り変更できないとしたら、一度導入した有利な制度は二度と変更できないことになってしまいます。そこで

看護師や社員の同意がなくても、不利益となる場合であっても、労働条件を変更できる場合があります。

労働法10条で、下記のように定められています。
「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする」

結局、労働条件が不利益になるように就業規則を変更する場合に、

① 当該変更に合理性があること
② 周知がなされること

この2つの要件に合致すれば、拘束力を持つと言っているのです。

①の合理性の判断ですが、これは平成9年2月28日の最高裁の判例によって、以下の要素を総合的に判断するとされています。

住宅手当を平等に分配するということは、看護師や社員が受ける不利益の金額にもよりますが、一定の合理性はあると考えます。

②の周知については、そもそも就業規則は誰もが見れる場所に保存しておくことが前提ですので、変更した後も同じ場所に保存しておけば、問題ありません。医院や病院の中は、患者が行き来するので院内に掲示することはほとんどないはずです。

基本的にサーバなどに保存して、その場所を周知しておきましょう。

このとき、あくまで周知すればよく、看護師や社員に個別に知らせる必要はありません。

 

3. 所轄の労働基準監督署に届け出る

就業規則を変更する場合の手続きとしては、医院や病院の過半数代表の意見を聴取して、労働基準監督署に届け出る義務があります。この手続きを行わないと、就業規則の変更の効力が認められないという見解もあります。「過半数代表者」とは、民主的な方法によって選出された、看護師や社員(労働者)の代表のことを指します。民主的な方法での選出については、法律などで定められていません。

ただ一般的に、院長先生が一方的に指名する方法ではダメで、「挙手」、「投票」、「持ち回り決議」などで行う必要があります。つまり、看護師や社員の話し合いで、代表を決めてもらえばよいということです。そして、

過半数代表者の意見徴収だけでよいので、「同意」してくれるのが一番よいのですが、「反対」されたとしても、就業規則を変更することは可能です。

もし反対された場合には、その理由などを書面に残しておいてください。というのも、労働基準監督署に変更された就業規則を届け出るときに、過半数代表者が反対したことを記載した意見書を添付するからです。

またこの意見書には、過半数代表に意見聴取を行ったことを証明するために、署名押印をしてもらいます。一緒に働いている看護師や社員の過半代表が、その署名押印まで拒否することはないと思います。もし署名押印までも拒否されたら、そもそも就業規則の変更が本当に合理的なのか、再度検討すべきです。

ただ大病院となるといろいろな意見を持つ看護師や社員も多く、合理的な就業規則の変更であっても署名押印を拒否される場合もあります。このときでも過半数代表者の「署名押印」が必須ではなく、意見を聞いた事実があれば十分です。

もちろん、少し時間を空けて何度か話し合い、「同意」または最低でも意見書への署名押印を求めましょう。それでも署名押印を拒否し続けられた場合には、その旨を書面にまとめて、労働基準監督署に就業規則と一緒に提出してください。とにかく、

就業規則の変更が合理的であれば、どれほど反対されたとしても手続きを踏むことで効力が発生し、拘束力を持つのです。

そのため、正しい手続きを必ず踏みましょう。

 

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