医師の年俸に、残業代は含まれているのか?

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2019/11/30
医師の年俸に、残業代は含まれているのか?

医院経営や病院経営の経費の中でもっとも大きな割合を占めるのは、人件費です。個人事業主の医院や病院でも、医療法人であっても、同じです。通常、アルバイトやパートは時間給(支払いは月額)で、看護師や従業員は月額で給料(月給)を決めているはずです。

時間給であれば、決まった時間よりもオーバーすれば、その時間に見合った給料を月額で支払います。月給の場合には、みなし残業代を決めていることが多いと予想されますが、通常は月額30時間程度となっています。みなし残業を50時間としている医院や病院もあるようですが、最近は30時間程度にしているケースがほとんどです。

もしくは、郊外になると雇える人が少なくなる関係から、みなし残業をゼロとしている医院や病院もあります。つまり、1ヶ月で合計30分以上の残業したら、その分の残業代を支払うということです。

ところで、看護師や従業員とは違い、医院や病院が医師と締結する契約の内容は様々です。常勤で勤務してくれる医師に対しては月額の給料として設定したり、年俸として決めることもあるでしょう。

週に2回程度勤務してもらう場合には、1時間1万円などの目安で、1日7時間勤務であれば7万円としているはずです。ところで、この勤務医には残業代が認められるのでしょうか?

これについて争った事例があり、平成29年7月7日に最高裁で判決がありました。

ということで、最高裁は、医療法人と医師との間で年俸の雇用契約が締結されていたとしても、残業代を支払わなければいけないと結論付けました。

この判決のあと、今まで残業代を支払っていない医院や病院から、「何か方法はないか?」という問い合わせを受けることがあります。そこで、最初に説明した看護師や従業員に導入していることが多い「みなし残業」を、勤務医にも設定する方法が考えられます。

みなし残業とは、具体的には固定残業代のことで、例えば、「月額100万円 月間30時間分の時間外手当を含む」などと定めます。これで、月給に1か月30時間までの残業代が含まれているため、それ以上残業しない限りは、月額100万円の給料を支払えばよいことになります。

ただし、間違ってはいけないのは、その勤務医が1か月で30時間超の残業を行えば、その分については残業代が発生するのです。それでも、入院施設がなく外来患者だけの医院や病院であれば、そこまで残業が増えることはないはずです。

例えば、午前中の診察が朝9時から13時まで、午後の診察が15時から夕方19時までとします。とすれば毎日、お昼は13時30分ぐらいまで、夕方は19時30分ぐらいまで残業となったら、1日1時間です。1か月の稼働日数が22日程度とすれば、22時間ですので30時間を超えません。そのため、みなし残業の制度を導入すれば、ほとんど追加の残業代は発生しないことになります。

また、通常はこのみなし残業の制度を導入するときには、同時に「残業の届出制・許可制」も導入することがほとんどです。

これにより、勤務医は院長先生の許可を受けたうえで残業するため、「早く終わらせる」という意識が働きます。そのことで、仕事の効率が改善して、今までは1か月50時間程度の残業をしていたのに、みなし残業の30時間以内に納まるようになったりします。

結局、時間を効率よく使えば、医院や病院側だけではなく、勤務医にとっても自分の時間が作れてメリットがあるのです。

なお、ときどき、院長先生から「管理職にすれば、残業代が発生しないんじゃないか?」と聞かれることがあります。

確かに、労働基準法41条では、管理監督者は労働時間、休憩、休日の規定が除外されるとなっています。

しかし、深夜労働の割増賃金の規定からは、管理監督者であっても除外されていません。それでも、深夜労働とは、午後20時から翌午前5時までの労働ですので、入院施設がない医院や病院であれば、発生しないはずです。

それでも、管理監督者とは単なる管理職とは違い、下記のすべてに該当する者となります。

以上のことから判断すると、医院や病院では、院長先生、副院長、事務長などしか該当しないことになります。

分院長、薬局長、看護師長が管理監督者に該当するかについては、よく飲食店の店長でも未払残業代を請求する事例が多いことから、実態で判断することになります。そのため、通常の勤務医が管理監督者に該当することはありません。

結局、未払残業代を請求されたら、支払うべき金額はそれほど多くないかもしれませんが、その交渉や弁護士への依頼で無駄な時間を使ったり、働いている看護師や従業員の士気も下げることにもなります。先ほどの事例でも、最高裁から判決をもらうほどもめていますので、相当な時間がかかっています。

ということで、医院や病院は勤務医に対して、1か月合計で30分からの残業代を支払うことにするのか、みなし残業の制度を導入するのか、どちらかの選択になると考えます。

 

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