医療法人を設立するメリットを、再度確認しておこう③

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2018/10/30
医療法人を設立するメリットを、再度確認しておこう③

個人事業主の医院や病院のまま行くのと、今から医療法人を設立した場合では、どちらが税金の面から有利なのか、再度確認してみましょう。今回は、前回からの続きで、相続税に焦点を絞っています。

 

(1) 持分の定めのある医療法について

平成19年3月31日以前に医療法人を設立すると、原則、持分の定めのある医療法人でした。一方、平成19年4月1日以降に医療法人を設立していると、持分の定めのない医療法人となります。この2つの決定的な違いは、持分の定めのある医療法人は持分がありますので、その持分は相続財産となります。

医療法人を設立するときに、都道府県から社員は3名必要だと指導を受けることが多いです。ここで社員とは、株式会社の株主のことです。

医療法人の社員となっても出資する必要はありません。出資がゼロであっても社員になることができるのです。そして、出資している社員も、出資していない社員も、1人1票の議決権を持ちます。

まず社員が1人であれば、すべて1人の意思で決定できてしまいます。医療法人の運営を合議制で適正に行うことを考えて、1人は許可していないのでしょう。次に社員を2人にすると、1人で50%の議決権しかないため、2人の仲が悪くなると何も決定できない状態に陥ってしまいます。

そこで、最初の設立時に社員を3人揃えて欲しいと要請されるのだと予想します。ただ都道府県によっては、違う人数を指定してくる場合もあります。

持分の定めのある医療法人は資本金が必要となりますが、通常は2ヶ月分の運転資金を出資して欲しいと要請されます。理由は、医療法人を設立して保健所に申請して、社会保険診療を行った場合、その収入は2ヶ月後に入金されます。その2か月分の運転資金がなければ、いきなり資金繰りに詰まってしまうからです。

厚生労働省の発表によれば、全国の入院施設がない個人事業主の医院や病院の平均の経費が5800万円となっています。そのため、2か月分の経費となると約1000万円です。私が今まで見てきた、持分の定めのある医療法人はその1000万円の資本金を院長先生が全額出資して社員となり、残りの社員は奥さんと医療法人を将来継ぐ長男にしていることがほとんどです。

そのあと、医療法人が儲かっていくと持分の評価は上がっていきます。ところが、奥さんと長男は社員でありながら、そもそも1円も出資していないため、持分はゼロのままです。院長先生の100%の持分の価値だけが、どんどん上がっていくことになるのです。あるとき、相続税の試算をしてみると、医療法人の持分だけで2億円などの評価になってしまいます。

今後も評価が上がってしまうと相続税が支払えなくなるため、その時点で持分を長男に生前贈与しようとするのですが、2億円も贈与したら約50%の贈与税がかかります。長男が1億円の現金を持っているはずもなく、贈与することができません。

そこで、この持分の評価を低くするための対策を考えることになります。もっともよい方法としては、生命保険料によって医療法人の利益を繰延べておき、院長先生が引退するときに、その生命保険を解約して退職金を支払うのです。

退職金を支払ったときに、医療法人の持分の評価はもっとも安くなるため、そのタイミングで子供に一度に贈与するのです。

奥さんも理事として就任しているのであれば、同じように退職金を支払えばよいのです。もちろん、医療法人の仕事を手伝ってもらい、奥さんに給料を支払うことが前提です。

 

(2) 持分の定めのない医療法人について

個人事業主の院長先生の相続が発生すれば、医院や病院の財産はすべて相続財産となります。例えば建物内装、医療機器、机、パソコンなどです。さらに雇用契約を締結していた看護師も解雇となります。もし退職金規定があれば、そのとき支払う必要が出てきます。長男がこの医院や病院を継ぐのであれば、医院や病院の財産を相続して、もう一度、看護師と雇用契約を締結する必要があります。

手続は、これだけではありません。
銀行からの借金やリース契約も、長男名義に変更する必要があります。ただ長男が医院や病院を継いだからと言って、自動的に負債まで引き継ぐわけではありません。

相続財産は遺産分割の協議で分け方を決定できますが、借金やリース契約は相続人に法定相続分で自動的に分けられることになります。

下記の事例で確認してみましょう。

合算して1億5000万円の父親の財産を、遺産分割で分けることになりました。医院や病院の財産は建物内装や医療機器なので、医院経営や病院経営にタッチしていない奥さんや長女が相続しても意味がありません。そのため、当然、医院や病院を継ぐ長男が相続します。それ以外の自宅や現預金については、すでに財産を相続した長男はもらえず、奥さんや長女が相続することになります。

問題は借金に関しては、奥さんが2500万円、長男と長女が1250万円ずつを自動的に引き継ぐことになるのです。相続人間で負担割合を決定することもできますが、銀行に対してはそれを主張できません。そのため、5000万円の借金を引き継ぐ人を長男にまとめてもらうように、銀行と交渉することになります。

とすれば、長男は医院や病院の財産として建物内装、医療機器などを相続しますが、現預金は相続できません。それなのに5000万円の銀行の借金を引き継ぎ、かつ相続税も支払うのです。

そのため、院長先生が個人事業主のままで医院経営や病院経営を続けるのであれば、一部の財産を生命保険に変えておき、受取人を長男に指定しておく必要があります。

一方、院長先生が持分の定めのない医療法人を設立しておくと、その持分には相続税がかかりません。しかも、相続財産とならないため、医療法人の経営にはまったく関係がない相続人である長女がいたとしても、争うことがなくなります。

ただし、持分の定めのない医療法人を設立するときにも、やはり2ヶ月分の運転資金を拠出する必要があり、これは基金と呼ばれます。この基金は劣後債と同じ性質を持っていて、拠出した1000万円に関しては院長先生に払い戻す必要があります。これに関しては、長男に生前贈与してしまいましょう。

持分の定めのない医療法人がどれだけ儲かっても、設立当時に1000万円である基金はずっと1000万円の評価のままです。1000万円を一度に贈与しても、贈与税は177万円となります。これならば支払えるはずです。さらに、医療法人を設立しておけば、長男が理事長になる届出を都道府県に行うだけで、看護師との雇用契約もリース契約も、銀行からの借金についても巻き直す必要はありません。

ただし、ここで注意点もあります。
それは、持分の定めのない医療法人であれば、相続対策が必要ないという訳ではないことです。確かに、相続税はかからなくなります。しかも、院長先生が個人事業主のままで相続が発生した場合には、医院や病院のお金でも、院長個人の貯金も合算されて、現預金となります。

だから先ほどの事例の5000万円は、医院や病院の運転資金も交じっているのです。それが医療法人を設立しておけば、医院や病院のお金と院長個人の貯金はきっちり区別されます。そして医療法人が保有する現預金は遺産分割の対象にもなりませんし、相続税もかからないのです。長男がそのまま引き継げばよく、医療法人を設立したメリットは絶大です。

しかしだからと言って、医療法人にお金を集めておき、その経営にタッチしていない長女に少ない財産を渡せばよいわけではありません。院長先生である父親にとっても、医療法人はそれを継ぐ長男に渡せばよいですが、奥さんや長女にもそれなりのお金を相続させたいと考えているはずです。長男だけ贔屓したい訳ではないでしょう。

このとき、父親の財産のほとんどを奥さんや長女に相続させる遺言を書いておくと、長男が遺留分を請求する可能性があります。そこで、

一部の財産は生命保険に変えておき、受取人を長女とすることで遺留分が請求されないように対策を打っておくべきです。

また医療法人で生命保険に加入しておき、院長先生の死亡退職金も支払えるようにすべきです。相続人が3人であれば、500万円×3人=1500万円までは非課税となります。これは奥さん、または長女が受け取れるようにしておくとよいでしょう。

このように、医療法人の持分が相続財産ではなくなったことで、別の対策が必要となるのです。

 

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