医療法人を設立するメリットを、再度確認しておこう②

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2018/10/20
医療法人を設立するメリットを、再度確認しておこう②

個人事業主の医院のままと、今から医療法人を設立した場合では、どちらが税金の面から有利なのか、再度確認してみましょう。

今回は、前回の続きですが、法人税に焦点を絞っています。

 

(1) 法人税率は、かなり低い

医療法人の法人税率は、社会保険診療に対する利益に事業税がかからないため、一般の法人よりも低く、実効税率は約30%程度となるはずです。現在、一般の法人で資本金が1億円以下であれば、法人税の実効税率は33.8%となります。

地方税は市町村によって変更されますし、そもそも売上に占める社会保険診療と自由診療の割合も医療法人によって違うため、一概には決まりません。それでも30%程度になると予想され、かなり低いことになります。

一方、個人事業主の院長先生の所得税率は、住民税も含めれば、15%から55%となります。
 
医院経営や病院経営では、医療機器を買ったり、建物の内装を作ります。そのための資金は、院長先生の自己資金では足りず、銀行から借りることが多いはずです。医療機器はリースも使えますが、現在は銀行の金利が低いため、できれば借りて買った方が得になるはずです。

ということで、法人税率が所得税率よりも低いことから、医療法人は個人事業主の院長先生に比べて資金効率がかなりよいのです。

例えば、個人事業主の院長先生が、銀行から1億円を借りてきて、医療機器を購入したとします。このとき、院長先生の所得税率は50%だったと仮定します。個人事業主の院長先生の利益が1,800万円を超える部分には、50%の所得税率(住民税も含む)がかかります。厚生労働省が発表している平成29年度に調査した入院施設がない個人事業主の診療所の全国平均の利益は2800万円となっています。そのため、1,800万円を超える部分が1000万円もあり、50%と仮定してよいでしょう。すると、1億円の借入金を銀行に返済するためには、個人事業主として2億円の利益が必要となるのです。

一方、医療法人が銀行から借りてきて、同じように1億円の医療機器を購入したとします。すると、法人税率は30%ですので、1億4300万円の利益で返済できることになります。

つまり、1億円の借金を返済する場合で考えても、個人事業主の院長先生は医療法人に比べて5700万円も資金繰りが悪いことが分かります。

医院や病院が銀行から1億円程度の借金をするのは、よくあることです。もちろん、医療機器は減価償却できるため、その分は所得税や法人税を支払わずに、銀行に返済することが可能です。そのため、そこまで資金効率に差はありませんが、それでも大きな差があることは確かです。また診療所のための土地を1億円で買った場合には、減価償却ができませんので、実際にこれだけの差が生まれることになるはずです。

 

(2) 措置法26条について

ときどき、「個人事業主の医院であれば、措置法26条が使えるため、医療法人に比べて有利なのでは?」という質問を受けることがあります。

措置法26条とは、概算経費のことです。まず医院や病院がこれを使うためには、下記の2つの条件を満たすことが必要です。

次にこれを満たすと、社会保険診療の売上にのみ、下記を経費とみなしてよいというものです。

例えば、ぴったり5000万円の社会保険診療の売上があれば、

と概算経費を計算できます。

つまり、「5,000万円-3,340万円=1,660万円」が、個人事業主の院長先生の利益となります。これに自由診療の売上から、それにかかった経費を差し引いて合算します。

実際に5,000万円もの社会保険診療の売上があれば2,000万円程度の利益はでるため、それと比べてかなり有利です。しかも概算経費で計算して申告していれば、自由診療の部分以外で経費の誤魔化しやミスは起きないので、税務調査も入りにくくなります。

さらに「経費としてみなしてよい」ということですので、実際の経費を使って利益を計算してもよいのです。

毎年、継続して概算経費を使う必要もありませんし、税務署に事前に届け出る必要もありません。そのため、大型の医療機器を買って、特別償却したことで1年間だけ経費が膨らんだ場合には、実際の経費を選択して利益を計算すればよいのです。

ただ実は、これは個人事業主にのみ認められた制度ではありません。

医療法人でも、2つの条件を満たせば、概算経費を適用できるのです。

それでも、医療法人の場合には売上が大きくなりがちで、条件を満たせない場合がほとんどです。そのため、医療法人には適用がないと勘違いしている人が多いようです。なお、医療法人の概算経費の特例は、措置法67条と呼ばれています。つまり租税特別措置法で定められている条文番号が違うのです。ということで、概算経費は医療法人を設立したときのデメリットにはなりません。

逆に、医療法人を設立した年度は、1事業年度が12ヶ月とはなりません。それに、個人事業主の院長先生も1年分の売上が集計されません。

例えば、5月末に医療法人が設立できたとして、個人事業主の院長先生は1月から5月までの売上で判定して、概算経費の適用を判断できます。通常であれば、1年間の売上が1億円であったとしても、その年度は5か月間しかないため、売上は5000万円となります。

また医療法人も、決算日にもよりますが、その事業年度でやはり1年分ないはずですので、概算経費が使える可能性が高くなるのです。

個人事業主の院長先生と医療法人の売上を通算して判定しなければいけないというルールはなく、どちらも別々に判定して使えることになります。

これは医療法人を設立したときの1年間だけですが、メリットとなります。

 

(3) 交際費について

個人事業主の院長先生が、医療法人を設立することで不利になることもあります。
それは、交際費の上限が決まってしまうことです。

個人事業主の院長先生であれば、経費に計上できる交際費に上限はありません。近隣の医院や病院の院長先生と情報交換のために食事をすることもあるでしょう。患者さんと飲みに行ったり、旅行に行くこともあるかもしれません。このとき使った飲食費は、全額を交際費として計上できます。

一方、医療法人の場合には、資本金が1億円以下であれば、1事業年度で800万円が交際費の上限となります。院長先生からすれば、「1年間で800万円も飲みに行かないよ」と言うかもしれません。ただ交際費とは飲食費だけではなく、業者へのキックバックなども交際費と認定されることがあります。それでも、医療法人がキックバックする取引は少ないはずですので、そこまで気にすることはありません。

それでも、1つだけ注意すべきことがあります。
先ほど資本金が1億円以下という条件を付けましたが、資本金が1億円超となると、交際費は飲食費の50%しか経費として認められなくなるのです。ここで「しか」と言いましたが、飲食費以外の交際費、例えばキックバックなどは1円も経費として認められないのです。

それでも、「資本金が1億円超の医療法人なんてないよ」と考えるかもしれません。確かに、持分の定めのある医療法人で、資本金が1億円超となっている場合をほとんど見たことがありません。医療法人を設立するときに、2か月分の運転資金を資本金として出資してくださいと都道府県から指導されるため、通常は1000万円前後の資本金となっているはずです。

では、持分の定めのない医療法人は、どうなるのでしょうか?

平成19年4月1日以降に設立された医療法人は、すべて持分の定めのない医療法人となります。これには資本金がありません。

その場合には、純資産価額(資産-負債-当期純利益)×60%を資本金とみなすのです。

医療法人が儲かって、利益が貯まってくると資本金が1億円超とみなされて、院長先生が飲食した場合には、1円からでも50%しか経費に計上できなくなります。これは医療法人を設立したことによる法人税のデメリットです。

今回は、法人税について確認しましたが、次回は相続税について考えみます。

 

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