医療法人を設立するメリットを、再度確認しておこう ①

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2018/10/10
医療法人を設立するメリットを、再度確認しておこう ①

個人事業主の医院のままと、今から医療法人を設立した場合では、どちらが税金の面から有利なのか、再度確認してみましょう。あくまで税金に焦点を絞っています。また今回は、所得税だけを確認していきます。

 

(1) 医療法人化したときの所得税について

① 院長先生の毎月の給料について

個人事業主の医院では、儲かった利益に所得税がかかります。
一方、医療法人は院長先生に給料を支払えば、そこに所得税がかかります。ただ給料から給与所得控除として、自動的に差し引いてくれる控除額があるのです。今まではこの給与所得控除額が大きく、これだけのメリットだけで個人事業主よりも、医療法人にして給料をもらった方と言えました。

ところが、平成25年から3回も税制改正がされて、給与所得控除額が下げられてきました。そして、とうとう4回目の税制改正として、給料が850万円を超えると給与所得控除額は195万円の定額(平成32年分以降)となってしまうのです。

通常、院長先生の給料は850万円を超えるため、給与所得控除による節税効果はかなり限定的となりました。それに反して、医療法人となれば、社会保険料に加入しなければいけないというデメリットがあります。医師国保に加入し続けるという方法もありますが、計算してみると協会けんぽに加入した場合と比べても月額数千円とそれほど大きな差はありません。それよりも強制的に加入となる厚生年金が国民年金に比べて高いため、かなり支出が増えることになります。

このことから、月額の給料については、医療法人になることのメリットは、ほぼないと言えるでしょう。

 

② 日当について

出張が多い院長先生がいます。
学会に出席したり、講演会を行うこともあります。出張して手術を行う院長先生もいます。このとき、旅費交通費は医院経営や病院経営に関連して発生しているため、医療法人の経費として計上できます。同時に医療法人の場合には、旅費規程を作成しておくと院長先生に対して日当を出すことができるのです。

例えば、1回の出張の日当を2万円と決めたとします。とすると、交通費やホテルの宿泊費は医療法人の経費となりますが、この日当も経費に計上することができ、かつ院長先生の給料ともみなされません。日当とは出張したときに、ちょっとしたもの(飲み物など)を買うことが増えるため、それを前渡ししているお金と考えてください。だからと言って、使い切る必要はありませんし、買ったものの領収書を医療法人に提出する必要もありません。残ったお金は、院長先生がもらってしまって構いません。

個人事業主の場合には、自分に日当を出すことはできないため、院長先生の出張が多い場合には、かなり差が出てきます。

 

③ 院長先生の退職金について

退職金については、個人事業主の医院や病院では、院長先生に対して支払うことはできません。さらに、奥さんが青色事業専従者として働いていて、給料を支払っていることもあるでしょう。この奥さんに対しても、退職金を支払うことはできません。看護師などの従業員に退職金を支払う規定があり、かつそれと同じ基準であっても認められません。

一方、診療所を継ぐ子供が勤務医として手伝っているならば、その子供が院長先生とは同居していないことが条件ですが、退職金を支払うことができます。個人事業主の院長先生が医療法人を設立するときには、その子供も含めて看護師も全員一度退職となるため、このタイミングで退職金を支払うことができるのです。

そのため、医療法人を設立する予定があれば、事前に退職金規定を作っておいて、子供と看護師に退職金を支払うという方法はあります。そのとき、事前に全員を被保険者とした生命保険に加入しておき、それを原資に退職金を支払うことができます。被保険者が院長先生ではなく、子供や看護師であれば、医療法人が生命保険に加入した場合と同様で、保険料を個人事業主の経費として計上することもできます。これは医療法人を設立するときだけの1回ですが、メリットと言えます。

医療法人となれば、院長先生であっても、奥さんであっても、退職金を支払うことができます。院長先生は理事長に、奥さんは理事になれば、看護師へ退職金を支払わない場合でも、従業員と理事は違うため、理事の退職金規定を作成すれば問題なく支払うことができます。この退職金については、下記の計算式で所得税を計算しますので、かなり低くなりメリットがあります。

ただ医療法人で法人税を支払って貯めたお金で、院長先生に退職金を支払うとなると、それほどのメリットはありません。というのも、医療法人の法人税率は約30%です。それを支払って貯めたお金で退職金を支払えば、低いとはいえ、所得税がかかります。

例えば、それが25%だったとすれば、

100×(1-30%(法人税率))×(1-25%(所得税率)=52.5

の手取りとなり、結果的に47.5%の所得税がかかっているのと同じです。

そこで、生命保険を使って医療法人の利益を繰延べておき、退職するときに解約して退職金の原資とすれば、30%の法人税率を節約することができるのです。

ただそれでも生命保険料の全額が経費として計上できる保険だけではなく、生命保険料の2分の1のみしか経費として計上できない保険もありますので、事前のシミュレーションが必要です。これが個人事業主の医院では、院長先生が被保険者であるかぎり、経費として計上することはできません。年間最大12万円の生命保険料控除の対象となるだけで、ほとんど節税効果がないのです。そのため、生命保険を使って院長先生自身の退職金の原資を作れることは、医療法人を設立する大きなメリットになります。

それでも、生命保険に加入する場合には、注意も必要です。
というのも、生命保険の解約返戻金がピークになるときに、院長先生の退職時期を決めておきます。

ところが、例えば70歳での引退を設定していたのに、そのときになって院長先生が辞めたくないと言い出す場合があるからです。それでも解約返戻金がピークになっているため、生命保険の契約を解約するしかありません。過去に経費になっていた部分については、そのとき一度に医療法人で利益として計上されてしまいます。

このとき、「そもそも医療法人の利益を繰延べていたのだから、戻ってきた利益に法人税がかかっても、結果は同じなのでは?」と考えるかもしれません。ところが、医療法人の売上は社会保険診療が大部分を占めます。この利益には事業税がかからないのです。それなのに、生命保険の契約を解約して戻ってきた利益には、事業税がかかってしまうのです。
ということで、

支払った生命保険料の100%が単純に解約返戻金として戻ってくる生命保険の商品であっても、医療法人の場合には損をするのです。

そのため、院長先生とは退職する時期を事前によく話し合って決めておく必要があります。

とにかく、給料に関してはメリットが小さくなっているため、毎月の給料を低く抑えて、その分、生命保険料として支払っておき、退職金に当てることが所得税を節税する大原則となります。

今回は、所得税について確認しましたが、次回は法人税について考えみます。

 

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