MS法人は医療法人から、どのような業務を受託できるのか? ③

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2018/07/30
MS法人は医療法人から、どのような業務を受託できるのか? ③

 

個人事業主である院長先生、または医療法人の理事が、MS法人の役職員と兼務してはいけないと説明してきました。これはMS法人との自由な取引をさせないように牽制しているのです。
ではなぜ、ここまでMS法人との取引を規制するのでしょうか?
理由は大きく分けて2つあります。

 

1. 医療は非営利事業である

医院経営や病院経営は非営利の事業を追求しなければいけないという考え方が、そもそも原点にあります。
一方、MS法人は通常、株式会社で作るので、営利法人となります。
その営利法人の役職員が、個人事業主の院長先生だったり、医療法人の理事と兼任していて、医院経営や病院経営に介入していれば、非営利性が疑われることになります。しかも理事と役員を兼任していれば、お互いに締結する業務委託契約書も簡単に作成できてしまいます。その金額もお手盛りで自由に決定される恐れがあるため、兼任させないことを原則としているのです。

 

2. 医院や病院のお金は税金である

医院や病院の医業収益は約80%から90%が社会保険診療となるはずです。

最近は内科でもインフルエンザの予防接種以外の自由診療も増えてきましたが、それは都市部に限った話で、郊外や地方では医業収益の90%超がいまだに社会保険診療となります。社会保険診療は、原則は患者が3割負担となりますが、70歳以上の高齢者が2割負担、75歳以上の高齢者は1割負担となっています。この高齢者のうち、生活保護世帯については、患者の負担はゼロとなります。

また小学校入学前の未就学児であれば2割負担となりますが、ほとんどの市町村で乳幼児医療助成を行っていて1割負担または医療費の負担はゼロとなります。このことから、3割負担をしている患者は小学生から69歳までとなりますが、もっとも医院や病院に通院しない年齢層となります。当然ですが、

高齢者と未就学児が医院や病院に通院する割合が高くなるので、結果的に、医業収益の90%は社会保険料と税金から構成されているのです。

だからこそ、医療法人の定款には下記の条項があるのです。

医療法人が医業収益として稼いだお金を不動産や株に投資したり、配当によって株主に還元してはいけないということなのです。そのお金は、労働の対価として院長先生、看護師または従業員に給料として支払うのはよいとしても、それ以外は医療のために使って欲しいという意味なのです。

監督官庁としては個人事業主の院長先生の医業収益も管理したいはずですが、これは個人の通帳にお金が入金されてしまうため、他の収益と区別ができません。院長先生が個人でアパートに投資することは問題なく、その賃料も個人の通帳に入金されるとすれば、区別することは難しくなります。ただそれでも、個人事業主の院長先生の通帳からMS法人に業務委託する場合には、適正でなければいけないと規制をしているのです。

でも院長先生の中には、
「今までも医療法人の理事とMS法人の役職員は兼任しているし、業務委託の金額も自由に決定してきたけど、都道府県の担当者から指導されたことはない」
と疑問を持つ人がいるかもしれません。
それは、今まで都道府県が知らなかっただけです。兼任している事実を知れば、必ず指導してきます。そして、平成29年4月2日以降に事業年度が開始する医療法人について、下記に該当するMS法人との取引を報告する義務ができました。

ここで④に関しては、図にすると下記のようになります。

また医療法人が上記に該当するMS法人と1円でも取引を行ったら、監督官庁である都道府県に報告義務がある訳ではありません。一定の金額以上の取引を行った場合に限定されます。

 

① MS法人から受け取る事業収益が1000万円以上で、かつ事業年度の事業収益の10%以上

MS法人から医療法人が業務委託を受けるケースは少ないですが、例えば、MS法人の役員や従業員の健康診断や予防接種を行う場合などが想定されます。それでも年間で1000万円の事業収益となるとかなり高額なので該当するケースは少ないこと、また該当しても医療法人が診療行為を行い、かつお金が流入するため問題にはならないでしょう。
もちろん、健康診断の診療報酬を値引きして、破格の安さで請け負えば問題になりますが、その場合に事業収益が1000万円以上とはならないはずです。

 

② MS法人に支払う事業費用が1000万円以上で、かつ事業年度の事業費用の10%以上

もっともよくあるケースで、

MS法人に対する賃貸料の支払い、医薬品の仕入れ、総務経理業務の請負に対する支払いが想定されます。

1ヶ月80万円程度であれば、すぐに超える金額であり、かつ事業費用の10%以上にもなるはずです。そのため、周辺の賃貸料を調査したり、同じ事業を行う会社からアイミツを取るなどして、その価格を決定したプロセスを説明できるように資料を揃えておく必要があります。

 

③ MS法人から受け取る事業外収益が1000万円以上で、かつ事業年度の事業外収益の10%以上

MS法人から医療法人が受け取る事業外収益としては貸付金の利息などが想定されますが、これが1000万円以上となるケースはまずありません。もし該当した場合には、医療法人がMS法人に多額の資金を貸し付けていることになりますので、そちらを早急に解消するように指導されます。

 

④ MS法人に支払う事業外費用が1000万円以上で、かつ事業年度の事業外費用の10%以上

MS法人から多額の借金をしていて、利息を支払う場合などが想定されますが、これも1000万円以上となるケースはまずありません。これに該当した場合には、MS法人に早急に返済するか、MS法人に債務免除してもらう方法で返済を消滅させることになります。

 

⑤ MS法人との取引で特別利益、または特別損失が1000万円以上

医療法人が所有する不動産をMS法人に売却したときに特別利益、または特別損失が発生する可能性があります。

やはり特別利益であれば、そこまで問題視されませんが、特別損失であれば、譲渡する経緯からその価格が適正であるか確認される可能性があります。そのため、不動産鑑定士に依頼するなどして、価格が適正であることを証明できる資料を準備しておく必要があります。

 

⑥ MS法人に対する資産、または負債が事業年度末の総資産の1%以上、かつ1000万円超の残高

③と④における医療法人がMS法人に貸している場合、または医療法人がMS法人からの借りている場合に、それが多額であれば、該当します。

 

⑦ MS法人との個別取引額が1000万円以上、かつ事業年度末の総資産の1%以上

MS法人への不動産の譲渡など、有形固定資産及び有価証券の売買等の取引の総額が1000万円以上であれば、特別利益や特別損失がなくても、報告する義務があるのです。そのため、価格が適正であることを証明できる資料を準備しておく必要があります。

 

⑧ MS法人に対して1000万円以上で事業譲渡した場合

医療法人の一部門をMS法人に譲渡する場合もあります。このときには、その事業譲渡の資産又は負債の総額のいずれか大きい額が1000万円以上であり、かつ事業年度末の総資産の1%以上を占める取引であれば、報告の対象となります。ただ医療法人から事業譲渡するケースはほとんどないと考えられます。

 

このようにMS法人との取引金額が1年間の合計だけではなく、個別の取引でも1000万円を超える場合には報告義務があります。MS法人の名称を届け出れば、登記簿謄本をチェックされて、そもそも兼任していることが判明すること、そしてその取引が適正でなければ元に戻すように指導されます。

過去の会計処理を修正することになるため、税務上も修正申告、または更正の請求をすることになります。

このような事態にならないように、理事と役員の兼任は止めること、MS法人と取引をする場合には適正額の根拠となる資料を準備することが必要です。

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