MS法人は医療法人から、どのような業務を受託できるのか? ②

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2018/07/20
MS法人は医療法人から、どのような業務を受託できるのか? ②

医院経営や病院経営において、MS法人を設立して、一部の業務を委託する場合があります。MS法人とは、メディカルサービス法人の略称です。通常は、MS法人は株式会社の形態で設立して、株主は院長先生、または配偶者、子供などにします。
将来の相続対策を考えると、医院や病院の後継者である子供を最初から100%の株主にしておくべきです。これで株主はすぐに決まるとしても、MS法人の役職員の決定が難しいのです。

というのも、MS法人の役職員と院長先生の兼任は原則、認められていないからです。厚生労働省から「医療法人の役員と営利法人の役職員の兼務について」という監督官庁への通知文が根拠となっています。
具体的には、次の場合が禁止とされています。

個人事業主として院長先生が開設者となり、後継者である子供が分院の管理者になっていることもあります。その場合には、子供もMS法人の役員や従業員を兼務できません。ただし例外が規定されています。

 

(1) 個人事業主の医院や病院とMS法人の取引の規制の例外

個人事業主の院長先生が自分で投資しているアパートや株式について、その管理法人を設立した場合には規制されません。あくまで、医院経営や病院経営に関連する業務を行う法人を設立した場合にのみ、兼任の規制が発動します。その場合に兼任できる例外は、2つしかありません。

① 少額な取引であれば問題ない
少額な取引とは、例えば、MS法人が損害保険の代理店となり、個人事業主の医院や病院が医療機器や自動車の損害保険に加入する場合などが想定されます。手数料としては、年額で数万円から数十万円程度が許容範囲だと考えます。

② MS法人から不動産を賃貸する場合
MS法人から、個人事業主の医院や病院が使う土地や建物を賃借する場合には、その賃料は高額ではないと想定されます。このとき、

MS法人の売上規模が小さいという理由から、役職員を第三者に依頼することが難しいと想定されます。そこで直ちに役職員を変更することが困難であるとして、賃料が適正であれば兼任が認められます。

賃料の適正額は、駅前の不動産会社、またはインターネットで周辺の店舗等の平均賃料を調べて、それとほぼ同額であれば、問題ありません。
ただし、個人事業主の院長先生の場合には、自分で不動産を購入してもよい気もします。というのも、MS法人が銀行から融資を受ける場合には返済期間が長くても15年程度になると予想されます。
一方、個人であれば銀行からの返済期間が20年超と設定されるはずですので、資金繰りが楽になるからです。
さらに例えば、個人事業主である院長先生が1棟のビルを購入して、1階と2階を医院や病院の診療所として利用して、上の階を賃貸物件として第三者に貸し付けることもできます。
これで上の階の賃貸料だけで銀行への返済ができるかもしれません。

 

(2) 医療法人とMS法人の取引の規制の例外

医療法人がMS法人と取引する場合にも例外規定があるのですが、あくまで医療法人の理事の過半数が、MS法人の役職員でないことが大前提です。そのため、例えば、医療法人の理事が3人就任していて、そのうち2人がMS法人の役職員であれば、次の例外規定は適用できないことになります。

① 少額な取引であれば問題ない
少額な取引とは、例えば、医療法人の役員が、株式会社の新聞店の代表取締役を兼任している場合に、当該新聞店から1部を購入していたとしても、非営利性に反することはないとQ&Aに例示されています。これからすると、月額数千円から高額でも数万円程度が少額な取引と想定されていることになります。

② 物品の購入、賃貸、役務の提供を受ける場合

MS法人から物品を購入したり、医療機器を賃貸したり、役務の提供を受ける場合で、MS法人の売上規模が小さいと役職員を第三者に依頼することが難しいと想定されるため、例外的に兼任が認められます。

なおこの例外を適用する大前提として、医療法人の理事の過半数の要件に加えて、医療法人の理事長がMS法人の代表ではないことが追加の条件となっています。

③ MS法人から不動産を賃貸する場合
そもそも医療法人は自分が診療のために使う不動産、または看護師や従業員のための社宅にしか購入できません。
医療法人が1棟のビルを購入しようとしたときに、すべてを医療法人の診療所として利用するのではなく、上の階が賃貸になっていることもあり得ます。
区分建物として、1階と2階を医療法人で、上の階をMS法人で購入することも可能です。
ただ銀行から融資を受けるときには、区分建物ではなく、1棟として購入するように要請されることも多いはずです。
その場合にはMS法人で購入して、1階と2階部分を医院や病院に貸し付けることになります。
また医療法人が看護師や従業員の社宅を購入したときに全部の部屋が埋まればよいですが、2-3の部屋が空き室となった場合には、第三者に貸すことができず、そのままにしておくしかありません。
MS法人で社宅を購入して医療法人に貸し付けていれば、もし空き部屋があれば、第三者に貸すこともでき、メリットがあります。
そのため、

賃料が適正という前提のもと、MS法人から医療法人が使う土地や建物を賃借する場合に、MS法人の売上規模が小さいと役職員を第三者に依頼することが難しいと想定されるため、例外的に兼任が認められます。

④ 再生手続き中の場合
事例としては少ないはずですが、MS法人が株式会社企業再生支援機構法又は株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法に基づき支援を受ける場合で、両機構等から事業の再生に関する専門家の派遣を受ける場合には例外的に認められます。
なおこの例外を適用する大前提として、医療法人の理事の過半数の要件に加えて、医療法人の理事長がMS法人の代表ではないことが追加の条件となっています。

 

ここまでが厚生労働省から、監督官庁である都道府県に通知された内容となります。ところが、現場では、上記の通知以上に厳しい指導がされています。
MS法人の規模が小さいとは、卸売業・小売業又は不動産賃貸業のようなサービス業であれば、常時雇用する従業員が5人以下であることが条件となっています。ところが、

監督官庁である都道府県の担当者が、個人事業主である院長先生、または医療法人の理事がMS法人の役員になっていることを知ると、どんな場合でも兼務を認めないという指導を行ってきます。

これは医療法人運営管理指導要綱に、
「医療法人と関係のある特定の営利法人の役員が理事長に就任したり、役員として参画していることは、非営利性という観点から適当でない」
との記載があることが根拠のようです。
当然、すべての監督官庁が同じ指導を行う訳ではないと予想しますが、私が今まで知っている都道府県では、どんな場合でも兼任は許さないと伝えられました。

実務的にはMS法人の従業員の名前が知られることはありませんが、MS法人の役員であれば登記簿謄本を確認すれば判明してしまいます。当然、監督官庁は個人事業主である院長先生、そして医療法人の理事長だけではなく、登記されていない理事全員の名前を把握しています。

あくまで指導ですので強制力はありませんが、それに従わないと、例えば分院を出すときの書類が受理されないなど、医療法人にとってはデメリットしかありません。そのため、結果的に個人事業主である院長先生、または医療法人の理事とMS法人の役職員を兼任させるべきではありません。

では、なぜここまでMS法人との取引を規制しようとするのでしょうか?
理由は大きく分けて2つありますが、これは次回のブログで説明します。

 

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