医療法人を設立するときに、借金は引き継ぐ必要があるのか?

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2020/11/20
医療法人を設立するときに、借金は引き継ぐ必要があるのか?

医療法人を設立するときに、借金は引き継ぐ必要があるのか?

顧問の会計事務所などが、院長先生に対して、

「診療所を法人化すれば、節税できて、資金効率が良くなります」

と提案することがあります。

所得税は累進税率ですが、所得が900万円までが、所得税率は23%で、住民税は10%であり、合計33%となります。一方、法人税率は、資本金が1億円以下の法人であれば、最大で34%ですが、医療法人の場合には保険診療に関する利益に対しては法人事業税がかからないため、30%程度となります。

自由診療の利益には法人事業税がかかるため、その割合によって、税率は変わります。もちろん、医業収益の100%が自由診療という医療法人であれば、34%となります。

それでも、一般的に診療所の平均の利益は2,500万円程度となりますので、900万円を大幅に超えていますので、「所得税>法人税率」となります。

医院経営や病院経営は、建物や土地を購入することもありますし、賃貸ビルで開業しても、建物内装設備をかなり造り込みます。そして、高額な医療機器を導入したり、最初の人件費や広告宣伝費などの運転資金が必要となるので、初期コストが多額にかかります。そのため、最初の1年間の医院経営や病院経営は赤字となることも多くなります。一般的に、医院開業した時に5,000万円から1億円の間で、銀行からお金を借りることがほとんどです。

そのあと、医業収益が上がり、利益が出てきて借金を返済していきますが、途中で内装を改装したり、儲かっている院長先生に限って、高額な医療機器を導入したりするのです。結局、銀行からの借入金は借換えとなり、元本はそれほど変わらなかったりします。

例えば、個人事業者である院長先生が1億円の借金をして、銀行に元本を全額返済するとします。

元本返済の部分も経費として計上できると勘違いしている院長先生もいますが、利息部分だけが経費となり、元本部分は経費とはなりません。

つまり、税金を支払って残ったお金で、借金の元本は返済していくのです。

診療所の利益が平均の2,500万円程度とすれば、1,800万円から2,500万円に対しての所得税率(住民税も含む)は50%となります。(1,800万円から4,000万円までの利益に対しては、50%の所得税率です)

確かに、900万円から1,800万円までの所得税率(住民税も含む)も43%となりますが、ここでは、計算を簡単にするために、50%の所得税率の部分からだけ、銀行へ元本を返済するとします。すると、2億円の利益を出して、1億円の所得税(住民税を含む)を支払って、残りの1億円で返済することになるのです。このように、個人事業者の院長先生は銀行から借りたお金の2倍の利益を出して、やっと返済が完了します。

では、医療法人で銀行から1億円を借りた場合には、どうなるのでしょうか?
法人税率は、800万円の利益までは、法人事業税がかからないとすれば、20%程度となり、それを超えた部分は30%となります。ここでも、計算を簡単にするために、30%の部分からだけで銀行の元本を返済するとします。

すると、1億5,000万円の利益があれば、5,000万円の法人税を支払って、残りの1億円で元本を返済できるのです。単純に医療法人の方が、5,000万円も得です。この説明を聞けば、一般的に院長先生は医療法人化したいと考えるはずです。

ところで、院長先生が個人事業者として開業していれば、医院経営や病院経営で必要な建物内装設備や医療機器は、個人で所有していることになります。医療法人化するときには、この個人所有の資産を法人に移転させます。このとき、銀行からの借金も医療法人に移転させるケースが多いのですが、本当にそれでよいのでしょうか?

一般的に、個人事業者時代の借金は残したまま、医療法人に引き継がせない方が設立手続きは簡単です。

これを聞くと2つの反論をよく耳にします。

1つ目の反論は、個人事業者である院長先生の借金は、医院経営や病院経営の負債なので、引き継がせなければいけない、というものです。

医療法人を設立するときに、負債を引き継がせる義務はありません。

実際に、下記は厚生労働省から公表されている「医療法人制度について」という通知です。

医療法人を設立するときに、借金は引き継ぐ必要があるのか?

上記の「差し支えない」という文言からも分かりますが、医療法人が個人事業者の院長先生の負債を引き継ぐ必要はありません。医療法人を設立するときに、都道府県の担当者から「引継ぎが必要だ」と言われたときにも、これを見せれば、「引き継がなくてよい」という意見に変わります。

2つ目の反論は、先ほど、医療法人から銀行に元本を返済すると資金効率がよいと解説していたのに、個人に借金を残して元本を返済するならば、医療法人を設立するメリットがない、というものです。

この反論は間違いです。
というのも、医療法人に負債を引き継がせないため、資産も運転資金の現預金だけなど、最低限のものしか拠出しません。ただし、医療法人を設立したあとで、建物内装や医療機器などを、院長先生個人から譲渡するのです。もちろん、医療法人は設立したばかりで、資金がありませんので、割賦払いとします。

医療法人を設立するときに、借金は引き継ぐ必要があるのか?

医療法人としては割賦払いの金額は経費となりませんので、法人税を支払った残りのお金で、院長先生に支払います。上記の図で、「医療法人の未払金の支払い=院長先生の銀行への元本返済」とすれば、結果的に、医療法人が返済していることと同じです。

また、院長先生が銀行に支払っている利息分はどうするのかという意見もありますが、割賦払いですので、医療法人は利息も付けて院長先生に支払えばよいのです。院長先生は医療法人から受け取った利息を、そのまま銀行に支払えばよいため、所得税もかかりません。

ただし、このような間接的な融資の関係を銀行が嫌がる場合もあります。

そのときには、医療法人を設立したあとで、銀行から新規にお金を借りて、院長先生に未払金を支払えば、借換えたことになります。

医療法人を設立するときに、借金は引き継ぐ必要があるのか?

このとき、院長先生に貸している銀行が、医療法人に貸し付けることを嫌がるならば、新しい銀行に声をかけて、新規で借りればよいのです。一般的に、個人事業者として院長先生が儲かっているからこそ、医療法人化するのですから、貸してくれる銀行は必ず、見つかります。

ということで、医療法人を設立するときに、院長先生の個人の負債を引き継がせる必要は全くないことが分かったと思います。

手続きは、簡略で迅速な方がよいはずです。

 

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