医療法人には、法人税法上の「みなし役員」となる人はいるのか?

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2019/11/10
医療法人には、法人税法上の「みなし役員」となる人はいるのか?

法人税法上では、役員とは「株式会社の取締役などの従業員以外の者で、かつその法人の経営に従事している者」と定義されています。

これを定義している理由としては、役員に対する給料、つまり役員報酬は事前の届出がない限り、原則として定時株主総会から、次の定時株主総会までは同額とするとしているからです。定時株主総会は決算日から3か月以内に行われるのが通常ですので、1年間は同額の給料となります。もし、1年経たずに期中で役員報酬を増額したリ、減額すれば、その差額は役員賞与として経費には認められなくなります。

法人の経費とは認められなくても、役員賞与として給料には違いないのですから、所得税はかかるのです。

例えば、100が役員賞与とみなされて、その役員の所得税率が住民税を合わせて50%だとすると(最高税率は55%)、手取りは下記となります。

役員賞与を経費として計上したい場合には、定時株主総会で役員賞与を支給する決議を行い、その日から1か月以内に税務署に届出書(支払日と支払金額を明記)を提出する必要があります。それを届け出たら、その通りに支給しなければいけません。つまり、事前に届け出た役員賞与を増額したり、減額することもできないのです。

とすれば、事前の届出などせずに12か月で割って平準化して支払えばよいため、あまり使われている制度ではありません。これらの制度を作った理由は、安易な節税を防ぐためです。

決算日が近くなった段階で、法人税と所得税を比べて、法人税が得だと分かったら役員報酬を減額し、所得税が得だと分かったら役員報酬を増額できてしまうからです。従業員は自分の給料を決めることができませんが、役員であれば、自分の給料は簡単に変動できてしまいます。

この制度は、医療法人の理事にも同じように当てはまります。

理事の給料は定時社員総会から、次の定時社員総会まで毎月、同額とする必要があるのです。

医療法人の定款には、定時株主総会は決算日から3か月以内に開催するとの記載があるはずです。ところで、法人税法上の役員の定義を先ほど確認しましたが、単純に株式会社の取締役とイコールとはなっていません。使用人兼務役員とみなし役員という制度があるのです。

 

① 使用人兼務役員について

株式会社において、取締役兼営業部長という肩書を持っている人がいます。
この人は、取締役としての仕事もしますが、営業部長としても働いているのです。そのため、取締役の給料は固定しないといけませんが、営業部長の仕事については他の従業員と同じ基準で給料や賞与を支払っても、経費に計上できます。取締役の報酬は、取締役会に出席したり、重要な経営判断をするときに代表取締役に助言したりする仕事です。

同じように、医療法人でも使用人兼務役員は認められています。

ただし、理事長、代表理事、副理事、常務理事など、平理事以外の使用人兼務役員は認められません。

これは平理事ではない人が、従業員のような仕事を常時行っているとは想定されないためです。
それでも、一般的な医院や病院で理事長以外に、副理事や常務理事という肩書を付けている理事はあまり見かけません。

結果的に、医療法人で使用人兼務役員と認められるのは、「理事の中で代表権などを有していない者で、医療法人で使用人としての地位を有していて、常時使用人としての職務を行っている者」と定義できます。

医療法でも、「理事長は、医療法人を代表し、医療法人の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」としていますので、理事長以外は代表権を有していません。
実務的には、分院長、事務長、薬局長、看護師長などが使用人兼務役員になることができる者と言えます。もちろん、理事に就任していなければ、このような議論は存在しないため、賞与を支払っても問題ありません。

それで、理事に就任している1人の分院長に賞与を支払うならば、その根拠となる基準を示す必要はあります。例えば、分院の売上に対してインセンティブを渡しているのであれば、他の分院でも基本的には同じ基準を採用しなければいけません。もしその分院長にのみ賞与を支払っていれば、税務調査のときに、それは理事としての役員賞与と認定されるリスクがあります。

役員賞与とみなされると、手取りが一気に減るため、理事に就任している者に賞与を支払うのであれば、細心の注意が必要です。

 

② みなし役員について

法人税法上では、株式会社の取締役や医療法人の理事でなくても、下記の2つのどちらかに該当すると「みなし役員」とみなされます。これは、親族などに賞与を支払いたいという理由から、株式会社の取締役を退任させて、従業員として働かせるという安易な方法を防ぐためです。

このとき、(2)の同族会社には、医療法人は該当しません。

理由は、2つあります。
1つ目は、法人税法の2条に同族会社の定義があります。

単純に「会社」と記載されていて、医療法人は「社団法人、または財団法人」であり、会社ではないため、そもそもの定義から外れるのです。

2つ目は、平成15年3月25日の国税不服審判所で裁決がありました。

争点は新株予約権ですが、その裁決文の中で医療法人は同族会社に含まれないとしています。

このことから、医療法人において(2)による「みなし役員」の認定はあり得ないのです。

次に(1)ですが、具体的には相談役、顧問などで、法人内における地位、その職務等から見て他の役員と同様に実質的に法人の経営に従事していると認めれられる者となります。これは医療法人にいてもおかしくないような気もします。

ところが、医療法において、役員は理事と監事に限定され、医療法人運営管理指導要綱に基づき主務官庁が運営の指導監督をしていることから、理事以外の者が実質的に法人の経営に従事することはできないと考えます。

そのため、医療法人には、(1)における「みなし役員」という認定もないことになります。

以上のことから、医療法人は使用人兼務役員という制度を作ることができる一方で、みなし役員というリスクはないと言えるのです。

そのため、院長先生の奥様などは、理事に就任させた方がよいのか、従業員のままがよいのか、事前によく検討すべきです。

原則は、毎日医療法人に出社して重要な仕事をするのであれば従業員としておけば、賞与を支払うことができます。一方、1週間に1回から2回程度しか出勤せずに経理や総務の仕事をするのであれば、理事に就任させることで従業員ではなく、理事としての高額な給料を受け取ることができます。

 

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