医療法人から事業譲渡によって、診療所を買収する場合のメリットとデメリットとは――②

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2018/03/30
医療法人から事業譲渡によって、診療所を買収する場合のメリットとデメリットとは――②

医療法人をM&Aで買収する場合に、事業譲渡を選択すれば、簿外債務があとで発覚することもなく、持分のない医療法人を買う場合でも資金効率が悪くなりません。

この2つが事業譲渡を選択した場合のメリットとなります。
ただ一方で、事業譲渡という方法にはデメリットもあります。

 

(1) 手続きが煩雑となる

医療法人同士が事業譲渡を行う場合には、売り手の医療法人が廃止、買い手の医療法人が分院の開設の手続きを行うことになります。
手続き自体は難しくないのですが、これによって、4つの問題が発生します。

 

① 病床(ベッド)の引継ぎができない

病床の権利は、開設者である医療法人に与えられるものであり、それを勝手に譲渡することはできません。

そのため、売り手の医療法人が病床を返還して、買い手の医療法人が新たに病床を申請しなおすことになります。

ところが都道府県では基準病床数を決めています。そのため、すでに基準病床数を超えている場合には、新たな病床の申請があっても保留することがほとんどです。そのため、事前に都道府県に相談してからM&Aを進めないといけません。

 

② 保険医療機関の指定が遅れる

買った側の医療法人は、保険所に、新たに保険医療機関の指定申請を行います。ところが、保険医療機関として認められるまでに、保健所の担当者が確認のために来院します。そのため、医療法人が診療所を開設したあとでなければ、申請自体が認められません。とすると、申請したあと翌月1月までは保険医療機関の指定を受けられないことになります。

ただし、開設者が変更されたと同時に引き続き診療所を運営して、患者が来ている場合には、「遡及願い」を提出すれば、遡って保険医療機関として指定してくれます。

ただそれでも事前に保健所に説明をしておかないと、場合によっては遡及してくれないこともあるため、注意しましょう。

 

③ 看護士や債権者との交渉が必要となる

事業譲渡は、売る側の医療法人の契約書をそのまま引き継ぐわけではありません。そのため、契約の締結をすべてやり直すことになります。まず一番大変なのが、看護士や受付の社員との雇用契約の再締結です。まったく同じ雇用条件を提示したとしても、今までの条件に不満があればその時に噴出します。また売り側の医療法人を一旦退職するため、退職金を支払うかも判断が必要です。

就業規則に退職金を支払う旨が記載されているにも関わらず、支払わない場合には、あとで買い側の医療法人が負担しなければいけない事態になります。

債権者との交渉ですが、事業譲渡の場合には薬品会社への買掛金や銀行の借入金を買い側の医療法人が引き継ぐことはありません。
売り側の医療法人が精算することになりますので、ほとんど債権者との交渉はありません。
ただ医療機器のリース会社についてだけ、債務者を変更する手続きが行われます。

 

④ 賃貸契約書の再締結について

事業譲渡ですので、買い側の医療法人は再度、賃貸契約を締結し直す必要があります。大家が無条件でそのまま引き継ぎを了承してくれるならば何の問題ありません。

たた通常は保証金を入れ直すときに、その20%の償却等を要求されることが多くあります。

例えば、買い側の医療法人が1000万円の保証金を差し替える場合には、200万円を償却させられるのです。またその物件を管理している不動産会社の仲介手数料が発生する場合もあります。ここは交渉となりますが、買う側の医療法人は大家にそのまま契約を継続させてもらうことを依頼する側となりますので、一定のコストの負担は飲まざるを得ません。

 

(2) 税金などの売り手の資金効率が悪くなる

事情譲渡の方法であれば、買い側の院長先生の貯金を使うわけではないので、高額な所得税がかかるわけではありません。一方で、売り側の医療法人に法人税や消費税がかかることがあります。

 

① 売る側の医療法人に法人税がかかる

売る側の医療法人にとっては、事業譲渡を選択されると売却益が発生します。医療法人が所有する資産のうち、含み益が発生するものは、3つあります。それは、「土地」、「生命保険の解約返戻金」、「営業権」です。土地の含み益が大きい可能性がありますが、その場合には医療法人が所有しているわけではなく、院長先生が先祖代々から引き継いできたことが多いはずです。

M&Aの時に一緒に土地を売却しても、個人が所有している場合には売却益に対して20.315%の税率となるため、それほど所得税は高くはなりません。

次に生命保険ですが、被保険者が売る側の医療法人の院長先生となっている場合がほとんどですので、事業譲渡するときに一緒に解約します。それを原資に退職金を支払えば、法人税がかかることはありません。

最後に「営業権」です。
これは全額が売る側の医療法人の売却益となりますが、やはりこれも院長先生の退職金として支払えばよいのです。ただし、功績倍率を使って計算した退職金を超えてしまうと、そのあとの税務調査で追徴されてしまう可能性が高くなりますので、注意が必要です。

上記の事例では含み益が1億円でしたので、院長先生に退職金として1億円を支払えば、法人税は発生しません。また売る側の医療法人には、銀行からの借金やリース残高などの負債もあるはずです。それは現預金や未収金(保険診療の未収金や自由診療のクレジットカード)、そして事業譲渡で受け取るお金で支払えば問題ありません。

上記の事例であれば、事情譲渡することで3億3000万円の現預金が売る側の医療法人に貯まりますが、そのうち1億円を院長先生の退職金として使い、残りの2億3000万円で負債を返済することになります。そこまで負債が高額でなければ、院長先生の退職金の金額を増額させてもよいでしょう。

このとき、売る側の医療法人が持分の定めのある医療法人の場合には、負債と退職金を支払ってもお金が残る場合には、解散すれば持分を所有する人、つまり通常は院長先生にお金が戻ってきます。出資した金額を超える部分は配当所得となりますので、給与と合算されて高額な所得税がかかります。

一方、売る側の医療法人が持分の定めのない医療法人の場合には、負債と退職金を支払ってもお金が残る場合には、解散するとそれは国や地溝公共団体に帰属します。

それでも、退職金と負債の支払いを事前にチェックしておけば、医療法人にほとんど最後にお金が残ることはないはずです。

 

② 売る側の医療法人は消費税がかかる

合併などと違い、事業譲渡は個々の資産を売却することになるため、売り側の医療法人に消費税がかかります。先ほどの事例では、営業権も含めて2億円でM&Aが成立していますが、建物内装、医療機器、営業権、すべてに消費税がかかるのです。

そのため、消費税率が8%とすれば1600万円もの消費税を納めることになります。ただし、売る側の医療法人が保険診療を中心にやっていて、自由診療の医業収益が1年間で1000万円以下であれば、上記の消費税は納めずに済みます。そのため、

売る側が消費税の課税事業者なのかどうかも、M&Aのときに事業譲渡を選択するときの判断材料になります。

 

③ 補助金や助成金は返還する

売る側の医療法人が特定の医療機器を使っている場合には補助金を、看護士などを継続して教育している場合には助成金を、国や地方公共団体からもらっていることがあります。ところが、

事業譲渡によって医療法人がその医療機器を売却した場合や看護士との雇用契約が破棄された場合には、補助金も助成金も返還しなければいけないことがほとんどです。

これも売る側の医療法人にとってはデメリットとなります。

 

このように医療法人の事業譲渡にはデメリットも多いため、M&Aを実行するときには、よく検討してどの方法で買収すべきかを決めましょう。

 

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