医療法人から事業譲渡によって、診療所を買収する場合のメリットとデメリットとは――①

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2018/03/20
医療法人から事業譲渡によって、診療所を買収する場合のメリットとデメリットとは――①

医療法人を第三者から買う場合に、すぐに思い浮かぶのは持分を売買するという方法です。持分を買った院長先生は、そのまま医療法人を運営するか、自分の医療法人と合併させることになります。ただ、持分を買う場合には2つの問題があります。

 

(1) すべての契約を包括的に引き継いでしまう

医療法人の持分を買った場合、当然ですが、その医療法人の契約書をすべて引き継ぎます。合併した場合でも、被合併法人(消滅する医療法人)の契約書を包括的にすべて自動的に引き継ぐことになります。そのため、

その消滅する医療法人に簿外債務があっても、引き継いでしまうことになるのです。

このような指摘をすると、
「医療法人で、決算書に載っていない負債なんてないだろ」
と笑う院長先生もいます。
確かに、医療法人が理事や他の会社の連帯保証人になることは法律で禁じられています。しかし簿外債務とは、医療法人の持分を譲渡するときに存在する債務だけではないのです。

 

① 医療機器のリース料の簿外債務

医療法人が医療機器を買う時に、銀行から借りるか、それともリースを組むか、を選択します。
銀行から借りると医療法人の決算書に載ります。ところが、リースを組んだときには、会計上は2つの方法を選択できます。

1つ目が買った場合と同じように医療機器を決算書に載せて、未払いのリース料を負債に計上する方法です。これが原則なので、こちらで処理していれば問題ありません。

ところが、2つ目として毎月支払うリース料を経費にのみ計上していく方法です。こちらだと、決算書には医療機器が資産として計上されませんし、リース債務も計上されません。そのため、買う側にとってはリースの未払い残高を確認しておかないと、負債を過少に評価してしまうのです。

また医療法人が実際に使っている医療機器のリース料だけではなく、すでに廃棄した医療機器のリース料まで支払い続けていることもあります。

損益計算書にリース料という勘定科目があり、貸借対照表にリース債務という勘定科目がなければ、現在支払っているリース料に合致する資料を集めてください。

 

② 法人税と消費税の簿外債務

医療法人が儲かっている場合に、無理な節税対策を行っていることがあります。また自由診療が多い場合には、消費税の処理をミスしていることもあります。その場合、あとから税務調査が入って否認されると、買った側がその法人税と消費税を負担することになります。さらに、消滅する医療法人の院長先生は持分を売った後、理事長を退任するときに自分に退職金を支払うはずです。法人税法上、退職金は、下記が上限だとされています。

上記の計算式はあくまで上限であり、これよりも少ない退職金の金額であれば問題ありません。また院長先生の配偶者が理事に就任していて、同時に退任する場合もあります。同様に妻にも退職金を支払う場合には、功績倍率は2倍程度に設定する必要があります。

ところが退職金は所得税が安いという理由で、この計算式を超えて支払ってしまう場合があります。そのあと税務調査で指摘されると、過大な部分は経費として認められません。ただしその場合でも、退職金をもらった院長先生が所得税で損をすることはないのです。

法人税で経費が否認されても、本人の退職金として認められて、所得税は安いままなのです。

ここでも、買った側が追徴される法人税を支払う必要があります。

 

③ 未払い残業代の簿外債務

最近では、残業代などをきっちり支払う医療法人も増えてきました。ただすべての医療法人が勤怠管理をしっかりやっているわけではありません。買った側は、その医療法人と看護師や社員との間の雇用契約もそのまま引き継ぐのです。あとで辞めた看護師や社員から未払い残業代を請求されたら支払うしかありません。

これらの簿外債務については、リース料は確認できますが、それ以外の税金や未払残業代などはM&Aの時点では確認できません。というのも将来、発生する簿外債務だからです。そこで、M&Aの契約書には簿外債務が発見された場合には、売った側の院長先生に請求できるという条項を入れるのが通常です。ところが

実際に簿外債務が発覚した場合に、その院長先生に請求してお金を取り戻せるのかは、疑問が残ります。

引退したあと、院長先生が引越をして連絡が取れなくなっていたり、海外に移住していることもあり得ます。また簿外債務について争いになれば、回収するまでに時間とコストがかかるのです。

 

(2) 持分の定めのない医療法人は譲渡できない

そもそも持分の定めがない医療法人は、持分を売却することができません。その場合には、買う側の院長先生がお金を貸し付けて、それを原資に退職金を支払います。この時、買う側の医療法人がお金を貸してもよいのかと質問されることがありますが、それは禁止されています。

医療法人から直接、貸し付ける場合だけではなく、院長先生を介して、間接的に貸し付けることもできません。

そのため、買う側の院長先生が医療法人から給料をもらって、それで貸し付ける必要があります。ただそれでは所得税をかなり支払う必要があり、資金効率は良くありません。

このように、M&Aで持分を買ったり、合併する場合には、医療法人の簿外債務の存在について、または持分の定めのない医療法人の買収方法について、問題が残ります。そこで事業譲渡という方法でM&Aを進めると、このような問題は起きません。

事業譲渡とは、単純に売る側の医療法人の事業を切り出して買うだけであり、すべての契約書をそのまま引き継がず、もう一度締結し直す方法です。そのため簿外債務の存在の心配もなくなり、また持分の定めのない医療法人であっても資金効率は悪くなく買収を進めることができます。ただメリットだけではなく、デメリットもあります。

次回のブログで、事業譲渡について詳しく解説していきます。

 

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