持分の定めのある医療法人の持分を、後継者に対して暦年贈与してくべきか ― ②

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2021/02/28
持分の定めのある医療法人の持分を、後継者に対して暦年贈与してくべきか ― ②

持分の定めのある医療法人の持分を、後継者に対して暦年贈与してくべきか ― ②

前回は、持分の定めのある医療法人のままで、医院経営や病院経営を続けると院長先生が意思決定したのであれば、その持分を後継者である長男などの子供に贈与していくべきと解説しました。確かに、生前贈与することで、相続税の対象から外すことで、節税対策にはなります。

しかし、生前贈与された医療法人の持分は、遺産分割の対象とはなるのです。

院長先生からは、

「生前贈与しているんだから、相続財産にはならないのでは?」

と聞かれることもありますが、持分自体は対象とならないのですが、その価額が対象となるのです。これを、特別受益と呼びます。

特別受益とは、遺産分割の時に、その価額を他の相続財産と合算して法定相続分で分割するのです。しかも、医療法人の持分は贈与した時ではなく、相続が発生したときの価額で法定相続分を計算するのです。

そのため、子供が後継者である長男だけであれば、単純に生前贈与して、相続税の節税対策だけを考えればよいのですが、相続人が長男だけではなく、長女などもいるときには、違う判断となる可能性もあります。

実際の事例から確認していきますが、ここでは、院長先生の財産は、医療法人の持分、自宅、上場株式、預貯金の4種類とします。そして、法定相続人は、妻(配偶者)、長男(後継者)、長女の3人とします。院長先生は、長男に医療法人の持分をすべて生前贈与したと仮定してみましょう。

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長男などの後継者がいる場合には、院長先生が亡くなるまで、医療法人の理事長として働くケースは少ないと予想されます。一般的には、長男が医療法人の理事長に就任して、院長先生は体調が良ければ、理事のまま、医院経営や病院経営を手伝うはずです。もちろん、体調が悪くなれば、病院に入院したり、介護付きの老人ホームに入所するので、理事は退任します。

とにかく、コロナウイルスの影響で、医療法人の持分の評価が下がったときに、数回に分けて、長男に贈与していました。その贈与したときの価額の合計が、1億円です。その後、長男が理事長に就任して、コロナウイルスの騒動も納まり、医業収益も利益も元に戻ったとします。

それから数年して、院長先生の相続が発生したときには、医療法人の持分はその時点の評価額、ここでは2億円で財産に加算して、それぞれの相続分を計算することになります。贈与した時の価額の合計1億円はまったく関係ありません。

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この相続分をもとに、遺産分割時の財産を分割するのです。相続開始時から、遺産分割時まで時間がかかりますので、ここでは上場株式が値上がりして、1億円の評価額が、2億円に上がっていました。

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これを見ますと、長男は1億円の医療法人の持分を生前贈与されているだけです。一方、長女は、2億3,333万円の財産を相続することができます。医療法人の持分が1億円から2億円の評価に上がったのは、コロナウイルスの騒動が納まっただけではなく、長男の理事長としての努力もあったはずです。

もちろん、長男としては、医療法人の持分だけでも、生前贈与しておいたことで、遺産分割で長女と争うことはありません。それに、医療法人から給与も十分もらっているし、父親である院長先生も理事として最後まで協力してくれたので、この遺産分割の結果に対しても文句はないというケースもあり得ます。それならば、生前贈与という方法だけでもよいでしょう。

一方、長男として、このような結果になるのは嫌だというのであれば、これを回避する方法が2つあります。

 

① 医療法人の持分を長男が買い取る

院長先生から、長男が適正な価額で医療法人の持分を買い取るのです。特別受益は、生前贈与が対象ですので、買い取っていれば、対象外となります。このとき、長男は分割払いでもよいでしょう。

例えば、先ほどの1億円の持分を分割で支払い、5,000万円支払った時点で、相続が発生したとすれば、残りの5,000万円が未収金という財産となります。

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長男に対する特別受益はないため、相続開始時点での相続分は4分の1となり、遺産分割時の7億5,000万円に4分の1を掛け合わせて、1億8,750万円を相続することができます。長男は、「こちらの方が、得になるのでは?」と考えるかもしれませんが、院長先生は1億円の持分を長男に譲渡したときに、20.315%の譲渡所得税がかかり、相続財産も5,000万円増えていますので、相続税も上がるのです。

家族全体で見れば、父親の財産が譲渡所得税の分だけ減り、相続税が上がり、かつ妻(配偶者)と長女の取り分が減るという結果になります。

 

② 院長先生が遺言書を作成する

院長先生が遺言書を作成して、相続財産を適正に分配できれば、長男が不利になることもなく、①のように無駄な税金を支払うことも避けることができます。

ただし、長女は、法定相続分の2分の1、つまり、8分の1の遺留分があるため、そこだけは中飛する必要があります。

院長先生が医療法人の1億円分の持分を長男にすべて生前贈与して、かつそれ以外の財産を遺言書で分けると仮定してみましょう。

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医療法人の持分は、長男に生前贈与したとはいえ、換金できるものではありません。そこで、院長先生としては、自宅と生活費は妻(配偶者)に相続させて、長男と長女は平等に、5,000万円ずつ相続させると考えたのです。

このとき、妻への遺言書で遺贈した自宅は特別受益として、持ち戻さないことになっています。そのため、長女の8分の1の遺留分のもとになる金額は6億円となり、7,500万円を相続する権利があります。現在、5,000万円を相続していますので、残りの2,500万円を請求できることになります。実際に、請求するかは分かりませんが、家族で争いのリスクが残ってしまいます。

これをさらに回避する方法として、遺留分の対象となる特別受益の加算は、相続開始前の10年間の生前贈与とされているのです。

そのため、院長先生から医療法人の持分を長男に贈与する時期をできるだけ早くすれば、遺留分の対象とはなりません。これにより、長女が遺留分を請求できるもとになる相続財産は4億円となり、その8分の1は5,000万円ですので、家族で争うリスクはゼロとなります。

 

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