持分の定めのある医療法人の持分を、後継者に対して暦年贈与してくべきか ― ①

住所
  • tel:03-3539-3047
  • 初回相談料の特典はコチラ
医院経営/病院経営コンサルティング > 医院・病院の相続税対策と事業承継対策は早い方がよい > 持分の定めのある医療法人の持分を、後継者に対して暦年贈与してくべきか ― ①
2021/02/20
持分の定めのある医療法人の持分を、後継者に対して暦年贈与してくべきか ― ①

持分の定めのある医療法人の持分を、後継者に対して暦年贈与してくべきか ― ①

持分の定めのある医療法人が、認定医療法人の制度を活用すれば、誰も課税されずに、持分の定めのない医療法人になることができます。持分の定めのない医療法人となれば、遺産分割の対象にはなりませんし、相続税もかかりません。ところが、「持分の定めのない医療法人にはなりたくない」という院長先生もたくさんいます。

そもそも、厚生労働省は、医療法人の制度を作った時にも、1人医療法人の制度を導入した時にも、「医療法人の持分は院長先生が保有するのですから、医療法人を設立したとしても、財産が消滅するわけではありません」と説明してきました。

しかも、院長先生の個人口座医のお金が、医療法人の口座に移動するだけという説明もありました。それが突然、「持分を放棄して、医療法人を解散したときの残余財産を国などに帰属するようにすれば、メリットがある」と言われても、納得できない院長先生もいると思います。もちろん、医療法人の持分を放棄することは義務ではありませんので、納得できなければ、そのままでもよいでしょう。

それでも、医療法人の持分は遺産分割の対象にもなりますし、相続税もかかりますので、医院経営や病院経営の安定のためには、一定の対策は行っておくべきです。

相続税対策として、最も簡単で確実な方法は、後継者に対する持分の生前贈与となります。

特に、コロナウイルスの影響で、医院経営や病院経営は赤字となっている可能性が高いはずです。とすれば、医療法人の持分の評価も下がっているため、今がチャンスでもあるのです。

ここで、贈与税率は、相続税率よりも高いということは知っているでしょうか?

というのも、「贈与税率<相続税率」であれば、生前にすべての財産を贈与されてしまい、相続税を支払う人がいなくなるためです。それでも、贈与税は累進課税ですので、贈与する金額が小さければ、贈与税率も低くなります。

この贈与税率についての問い合わせが、国税庁への質問の中で、毎年1番多いと言われています。どのくらいの税率となるのか、感覚的に覚えておきましょう。

このとき、贈与税率は2種類あります。

 

① 特例贈与税率

1月1日において、20歳以上となる子供や孫(直系卑属)に対する贈与のみに適用される税率となります。1月1日に20歳ということは、21歳になる歳から適用されるという点には注意してください。また、年の途中で養子になって直系尊属となる場合には、その養子となった日後に適用できます。

下記が、特例贈与率の速算表です。

持分の定めのある医療法人の持分を、後継者に対して暦年贈与してくべきか ― ①

この表の読み方ですが、左列の「基礎控除後の課税価格」とは、贈与した金額から110万円という基礎控除額を差し引いた金額となります。とすれば、毎年110万円分の医療法人の持分を子供に贈与するならば、贈与税はゼロ円となります。

ただし、医療法人の持分は、相続税法等の評価額で計算するのですが、1億円超となることも普通で、高額となれば、10億円まで上がることも、よくあります。というのも、医療法により、医療法人は配当が禁止されているため、利益が貯まっても吐き出せないことから、評価額が上がりやすいのです。もし、1億円と評価されたとして、毎年110万円ずつでは、すべて贈与が完了するまでに90年もかかってしまいます。

とすれば、もっと大きな金額で、医療法人の持分を贈与すべきなのです。

そして、上記はあくまで速算表ですので、控除額が出てきます。例えば、「基礎控除後の課税価格」が600万円以下の部分に該当したとしても、20%の贈与税率はあくまで、400万円超の部分にのみかかるのです。さらに、200万円以下の部分には10%が、200万円超400万円以下の部分には15%の贈与税率がかかります。

では、医療法人の持分のうち、710万円分を30歳の後継者である子供に贈与したと仮定して、贈与税の実効税率を計算してみましょう。

持分の定めのある医療法人の持分を、後継者に対して暦年贈与してくべきか ― ①

12.6%ぐらいの贈与税の実効税率であれば、院長先生にとっても許容範囲と想定されますし、相続税を支払うよりも安くなることが多いはずです。それでも、先ほどの医療法人の持分の評価が1億円とすれば、毎年710万円を贈与しても、14年もかかってしまいます。

長男が何歳ぐらいで「医療法人を継ぐ」という意思決定をするか分かりませんが、35歳から40歳ぐらいまでには決めるべきです。例えば、40歳で決めたとしても、そのときには、院長先生の年齢は70歳ぐらいです。そこから、すぐに贈与を始めても、84歳までかかります。

このとき、医療法人の持分の評価額が1億円のままということは想定しづらく、毎年、評価額が上がれば、もっと時間がかかります。

そこで、院長先生の妻(配偶者)にも贈与すれば、1年間で1,420万円分の医療法人の持分を贈与できるため、7年間で完了します。しかも、贈与する院長先生の金額で贈与税を計算するのではなく、贈与される子供と配偶者で別々で計算できます。

ところが、妻(配偶者)への贈与の場合には、特例税率が使えず、次の一般贈与税率を使うことになります。

 

② 一般贈与税率

こちらは、①以外の者への贈与の場合に適用される税率となります。例えば、妻(配偶者)、1月1日において20歳未満となる子供や孫、甥や姪に対する贈与が対象となります。

甥や姪に対する贈与は多くないと想定されますし、20歳未満の子供や孫は、そもそも医療法人を継ぐかも分かりません。そのため、妻(配偶者)へ贈与するときの税率だと覚えておけばよいでしょう。

下記が、一般贈与税率の速算表となります。

持分の定めのある医療法人の持分を、後継者に対して暦年贈与してくべきか ― ①

院長先生が医療法人の持分のうち、710万円分を配偶者に贈与したとします。

持分の定めのある医療法人の持分を、後継者に対して暦年贈与してくべきか ― ①

もともと、子供がいる場合には、妻(配偶者)は相続財産の2分の1まで、もしくは1億6,000万円までは相続税がかからないため、16.1%の実効税率は高すぎるでしょう。

とすれば、院長先生の体調が悪いなど時間が少ない場合だけ、事前に相続税をシミュレーションして、後継者である長男だけに贈与した方がよいか、それとも妻(配偶者)への贈与も併用すべきか、判断することになります。

なお、妻(配偶者)に贈与した時には、二次相続までに、配偶者から後継者となる子供に贈与していくことになります。

 

facebook
twitter
google+

コンサルタント必見の書籍 医院経営のからくり