医療ミスがあった場合、誰が訴えられて、誰に責任があるとされるのか?

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2018/04/30
医療ミスがあった場合、誰が訴えられて、誰に責任があるとされるのか?

医療ミス(医療過誤)があったと患者が訴えてきた場合には、

① 診療契約の債務不履行に基づく損害賠償請求(民法415)
または
② 不法行為に基づく損害賠償請求(民法709、715)

のどちらかとなります。
この2つの違いは、下記の表の通りになります。

被告(訴えられる人)についてですが、債務不履行の場合には、診療契約を締結している人が対象となるため、個人または医療法人となります。一方、不法行為では被告は個人に限られます。

それでは不法行為の場合には、医療法人は責任を負わないのかと疑問に思うかもしれません。

実は、使用者責任(民法715)により、医療法人は連帯して責任を負わされることになります。

使用者責任とは、医療法人が診療を担当した院長先生、または勤務医を適切に管理していなかった責任となります。この責任ですが、担当した院長先生や勤務医に過失が認められた場合には、医療法人がこの責任から逃れることはほとんど不可能となります。そのため、結果的に不法行為で訴えられた場合でも、医療法人も被告となると考えてください。

どちらで訴えてくるかは、患者の弁護士が集めた資料によりますが、どちらであっても、3つが裁判の争点となります。そのため、この争点を把握して、事前に対処しておきましょう。

 

1. 医師に善管注意義務違反があったかどうか

院長先生や勤務医の診療行為が適切だったのか、つまり過失がなければ、善管注意義務違反とはなりません。当然ですが、患者にわざと診療ミスをしてやろうという医師は存在しません。そのため、重過失や故意ではなく、「あるべき医療水準に沿って診療を行っていたのか」が争点となります。あるべき医療水準に達していなければ、院長先生や勤務医に過失があったと認定されます。

最高裁の判例では、医師の善管注意義務の基準となる医療水準とは、

① 医師の専門分野
② 医療機関の性格
③ 所在地域の医療環境の特性

等の諸般の事情を考慮して決まるとされています。

これだけでは漠然としているため、事前の防衛策を練ることができません。そこで最近では診療ガイドラインが具体的な判断の証拠の1つになってきていることから、これを事前に確認しておくことがよいと考えられています。

そもそも医療水準とはその当時に適切であった診療行為であれば問題にはなりません。

つまり、現在では不適切とされる診療行為になっていたとしても、過失があったと認められないということなのです。

その当時の診療ガイドラインに沿っていれば、適切だと主張できるはずです。しかも、院長先生や勤務医に過失があったことを証明する責任は患者側にあります。そのためにも、事前に診療ガイドラインは確認しておくべきでしょう。

ただ1つだけ、患者のために診療ガイドラインから外れた診療を行っていたとしても、それによって過失があったと認められるわけではありません。

 

2. 医師の不適切な診療行為が原因で、患者の生命と身体が侵害されたのか

院長先生や勤務医に過失があったと認定されたとしても、それと患者の生命と身体への悪影響との因果関係がなければ、責任は問われません。

患者がガンに侵されていて、かなり進行していて、その時点で医療水準に沿った診療行為が行われず、結果的に亡くなってしまったとします。すでに手の施しようがない状態だったとすれば、因果関係はなく、院長先生や勤務医に責任はありません。そのため、患者の病状について詳細に記録しておくことも大切です。

院長先生が説明したあと、患者本人の意向によって診療行為の内容を変更したり、取り止めることもあり得ますので、その場合には同意書などを取るようにしましょう。

 

3. 損害賠償の金額がいくらになるのか

院長先生と勤務医に過失があり、患者の生命と身体への悪影響の因果関係もあったと認定されたとしても、患者に損害が生じていなければ、請求されることはありません。

損害とは、医療ミスがなかったとしたら患者が貯めることができた財産と医療ミスがあったことによる現在の貯めることができた財産の差額となります。

当然ですが、もともと患者は病気となり働くことが制限されていたはずですので、医療ミスがなかったとしても健康だった状態の財産が貯まるはずはなく、その部分は考慮されます。すでにガンがかなり進行していれば、医療ミスがなかったとした場合の余命までを限度として勤務した計算となります。

院長先生からは、
「被害者である患者側にも過失があれば、それは損害賠償の金額から相殺されるのでは?」
と質問されることもあります。

ただ患者が積極的に診療行為を行うことはできず、裁判で損害賠償の金額から大きく過失相殺された事例はほとんどありません。それでも食事やリハビリなど、患者も診療行為に協力してもらわなければ、病気は治りません。そのため過失相殺がゼロというわけもなく、事前に患者が協力的であったのかという記録も残しておくべきでしょう。

医療ミスがあった場合を想定すると事前に用意すべき資料は増えてしまったり、患者に対しても書面への署名をいちいち求めていたら不信感を与えてしまう可能性もあります。

「内科の診療所で、病棟もなく、そこまで医療ミスは起こらないよ」と言う院長先生もいます。もちろん、患者から訴訟されるリスクは診療科目や院長先生の専門分野によっても変わってきます。

それでも歯科医院の麻酔で子供が亡くなるという事故も起きているのです。また医療法人などは患者から訴えられた場合には、理事長や理事は役員としての責任まで追及される可能性もあるのです。院長先生だけではなく、配偶者や両親が理事に就任していれば、連帯して損害賠償の責任を負うことになってしまうのです。

医療ミスで訴訟となった場合に、もっと証拠となる資料を事前に作成しておけばよかったと後悔しないように、できる限りの準備はしておきましょう。

 

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