税務調査で、医院や病院の経費が役員賞与と認定されてしまうと、最悪です

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2012/08/17
税務調査で、医院や病院の経費が役員賞与と認定されてしまうと、最悪です

今回は、医院や病院の税務調査で指摘されることが多い、人件費に焦点を当てます。

医院経営や病院経営における人件費は、大きく3つに分けられます。

1つ目は、役員報酬や看護師や窓口の社員の給料です、
税務調査で、何をチェックするかといえば、架空給与です。

原則、架空給与とは、存在しない、もしくは雇っていない社員に支払う給与です。

でもいくらなんでも、存在しない看護師や社員の名前を勝手に作って、給与を計上する医院や病院はないと思います。通帳の振り込み、源泉徴収票から看護師や社員の名前と住所を調査すれば、すぐにバレますしね。

一番多いのは、雇っていない社員に対する給与、もしくはその給与が過大という場合です。

雇っていない? と疑問に思うかもしれませんが、院長である、あなたは雇っていると考えていても、税務署としては認めたくないという場合です。

つまり、配偶者(妻)や親族への給与のことです。

例えば、妻が週に1回は来ればよいですが、月1回だけ来ているだけで、月額50万円もの給料を支払っていれば、過大すぎるでしょう。そもそも月1回だけで、妻は社員として、どのような仕事をしているのかとチェックされてしまいます。

もし何もしていなければ、すべての給料が否認されることもあります。

次に、個人事業主の医院は問題ないのですが、医療法人の場合には、院長に対して役員報酬を支払います。

この役員報酬は、1年間を通じて、毎月同額にしなければいけません。

医療法人の決算日から、3ヶ月以内に開催される社員総会で、翌年の役員報酬を改定して、そこから1年間は毎月同額で役員報酬を支払うならば問題ありません。

ところが、途中で院長の役員報酬を上げたり、下げたりすると、その差額が役員賞与とみなされてしまいます。

例えば、上記のように医療法人が4月1日から始まり、3月31日が決算日だとします。
最初に役員報酬を毎月100万円支払っていれば、年間1200万円になる予想でした。

年末になり、会計事務所が作成している試算表を見ると、今年は去年と比べて、医業収益が増えていたことが判明したとします。
そこで、医療法人で支払う法人税と役員報酬で支払う所得税を比べると、明らかに所得税の方が安いことが分かりました。

それに医療法人は、そもそも配当ができないため、貯めたお金は退職金まで院長はもらえないことになります。そこで、どうしても医療法人の利益をほとんどゼロにして、役員報酬を高く設定する傾向にあります。

それで、1月1日から毎月の役員報酬を200万円に上げて、3月31日の決算日まで3ヶ月間だけ増やしたとします。100万円×3ヶ月分=300万円の利益が削れることになります。

ところが、この300万円は役員報酬とならず、役員賞与になってしまうのです。

あなたは、「役員賞与だと、何が問題なのか?」と思うかもしれません。
ところが、この役員賞与は大問題なのです。

実は、役員賞与は医療法人の経費になりません。

つまり、先ほどの医療法人の300万円の利益は削られず、法人税がかかるのです。
しかも、300万円はあくまで役員賞与として院長の収入にもなるので、所得税もかかります。

300万円のうち、法人税が40%、所得税が40%とすれば、手残りは20%の60万円になってしまうのです。240万円が税金です。

いやいや、現実には、それだけではありません。

税務調査のときに役員報酬が上がっていることを指摘されると、法人税と所得税にプラスされるペナルティの税金がかかるのです。

それを含めれば、ほとんど手残りはないと考えてください。

あとから、税務調査で役員賞与と認定されてしまうのは、最悪だ

ということなのです。

これによって、法人税と所得税を比べて簡単に安い方を選択する節税を行えないようにしているのです。

それならば、1年間を通して毎月同じ役員報酬を支払うしかないと、あなたは考えるでしょう。

そうすれば、問題ありません。難しいことではないですよね。

ところが、あなたの役員報酬だけではなく、他の親族の給料が否認されてしまうことがあるのです。

まずは先ほどの親族への給料ですが、親族は役員じゃないから大丈夫ではありません。

確かに、医療法人には、「みなし役員」という制度はありません。

「みなし役員」とは、MS法人などで社員として働いている親族が、一定の要件のもと、役員と同等とみなされて、その給料が毎月、一定でなくては、役員賞与になってしまうという制度です。

その制度が医療法人にないのであれば、安心・・・と簡単に考えてはいけません。社員として働いていても、それに見合った仕事をしていないと、給料という経費とは認められないことになるのです。

これは、例えば、妻が経理や人事の仕事を実際に行っていたとしても、業務自体が変わったわけでもなく、仕事量もほとんど同じなのに、途中で給料が上がっていれば、それはおかしいと税務調査で指摘されてしまいます。

原則は、院長先生の親族であったとしても、社員であれば、他の看護師や受付の社員と同じ待遇にしなければ、高額の給料の部分は否認されてしまうのです。

それが嫌ならば、理事に就任させれば、医療法人の経営の意思決定に参加するという仕事が増えるので、看護師や受付の社員と比べて、給料が高くてもおかしくないという結論になります。ただ理事になれば、その給料は毎月一定でなければ、変動させた部分は役員賞与とみなされてしまいます。

なお、ちゃんとやっている仕事に対しては給料を支払っても、全然問題ありません。院長よりも、医師でもない妻の給料の方が高いということもありました。税務署も、妻の仕事量を見て、納得しました。

さらに、役員賞与と認定されるのは、給料だけではありません。
医院経営や病院経営では、どうしても院長のワンマン経営になりがちです。
院長が少しぐらいお金を自分のために使っても、それを怒る役員はいないのが現状です。

もちろん、私も院長がお金を使ってはいけないと言っているわけではありません。
ただ、その使ったお金に関して、税務調査で役員賞与と認定されてしまうと、あとで多額の税金がかかるので注意して欲しいのです。

また、あなたが医療法人ではなく、個人事業主として医院や病院を経営している院長であっても、同じように注意してください。

税務調査によって、個人事業主の経費を否認されてしまうことについては同じです。その場合、法人税はかかりませんが、所得税が追徴され、かつ同じようにペナルティの税金がかかります。

【1】別荘について

看護師や社員も使える福利厚生施設として、別荘を買うことがあります。
ところが、これを院長やその親族が使うためだけに別荘を買っていることもあるのです。

この場合には、別荘にかかる経費は認められません。

「看護師や社員に、使ってもよいと伝えているけど、まったく使わないんだよね」

という場合もありますが、税務調査では実質的に、院長やその親族以外が使っていなければ、やはり経費としては認められなくなります。この別荘にかかる経費はかなり金額が大きくなるので注意してください。

別荘を買ったときの不動産取得税や登録免許税などの経費はもちろんのこと、毎年かかる維持管理費、それに減価償却費もすべて経費として認められなくなります。

もし医療法人の税務調査で、これを役員賞与とされてしまうと、支払えないぐらい多額の法人税と所得税が追徴されてしまいます。

そのため、あなたが別荘を買う場合には、何を目的にしているのかをハッキリさせましょう。

もし院長やその親族だけしか使わない別荘であれば、自分の名義でかつ医院経営や病院経営の経費にしない方がよいでしょう。

ただ実際に、看護師や社員の研修を行う施設として、別荘を使っている医院や病院もあります。その場合には、ちゃんとその研修メニューや看護師や社員に施設の利用したときの報告書などを書いてもらいましょう。それによって、別荘にかかる経費はすべて認められるのです。

他の場合もそうですが、グレーにしておくと、税務調査で突っ込まれてしまいます。

黒であれば、経費にするのは止めて、他の方法で節税しましょう。

白であれば、当然、経費にしてよいのですが、
それを主張するための資料を揃えましょう。

別荘以外でも、経費にならず、役員賞与とみなされてしまうことがあります。

その説明については、次回します。

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