個人事業主の医院(クリニック)が知っておけば損をしない所得の区分とは-②

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2017/06/20
個人事業主の医院(クリニック)が知っておけば損をしない所得の区分とは-②

個人事業主の医院(クリニック)が知っておけば損をしない所得の区分とは-②

前回のブログでは所得区分について解説しましたが、今回は医院経営や病院経営の事業所得の売上や必要経費として認められるのかを検討していきます。院長先生からよく聞かれることを、Q&A方式で考えていきます。

 

質問1
社会保険診療の窓口収入を値引きした場合には、その部分は売上に計上する必要があるのか?

答え
国税不服審判所において、社会保険診療のうち患者が負担すべき金額を医院が請求しなかったとしたら、それも売上に計上しなくてはいけないとされて、医院側が負けています。(平成4年3月9日裁決)
ただし、値引きした金額は医院の必要経費として同時に計上することもできます。(所令141条1号)。
あなたは、「それならば、値引きして売上を計上しても利益は同じになるのでは?」と考えるかもしれませんが、医院や病院が概算経費(租税特別措置法26条)の特例を適用する場合には、結果が違ってきます。
つまり、値引きした分も含めて売上として計上して、それをもとに概算経費を計算するため、有利になることもあります。
一方、これにより社会保険保険診療の売上が5000万円超となり概算経費が使えないことで不利になることもあり得ます。
なお概算経費は個人だけではなく、医療法人にも適用できます。

 

質問2
歯科医が歯列矯正やインプラントの装着を行ったときの売上の計上時期とは?

答え
歯列矯正やインプラントの装着では、矯正装置等を装着したときに売上を一括計上することが原則となります。
あなたは、「最初の契約の締結時で売上に上がらないならば、利益を遅らせることができて、得になる」と考えたかもしれません。
ところが一度に売上が上がることで、所得税は累進税率であるため、逆に損をすることもあるのです。
その場合、契約締結時から少しずつ一部のお金をもらっていくのであれば、その都度、売上に計上することも認められます。
インプラントの場合でも癒着という経過観察がありますが、基本はセットされたときに売上を計上することが原則となります。
それでも、歯根に埋め込む下部と上部を別々に患者から支払ってもらえるのであれば、その都度、売上に計上することもできます。

 

質問3
取引先や社員へに貸付金が回収できない場合に、貸倒れとして医院や病院の経費になるか?

答え
個人事業主の院長先生が取引先の担当者、医院で働く看護師や社員、または友人の医師が開業するという理由で、お金を貸すこともあります。
貸付が回収できれば問題ありませんし、当然ですが、利息をもらったら雑所得として確定申告しなければいけません。
ではこの貸付が回収できなくなったら、医院経営や病院経営の経費として計上できるのでしょうか?
結論は、貸倒れは経費になりません。
貸付という行為は貸金業であり、医院や病院の事業とは関係がないからです。

 

質問4
医院や病院の制服、院長先生のメガネ、工ステなどの費用は経費になるか?

答え
通常、看護師は制服を着ていますが、この購入費用は医院や病院の必要経費に計上できます。
理由は日常生活で着ることはなく、医院や病院内でわざわざ着替えて着用しているからです。
患者からも、受付の社員であっても、私服よりも制服の方が印象はよいはずです。
一方、院長先生から身だしなみのためにエステに通っていて、これも患者に嫌われないために使う費用になると主張することもあります。
ただ、エステに行くことが医院や病院の事業に直接関連することでもなく、医院や病院外でもその効果が発揮されるため、必要経費にはなりません。

 

質問5
治療で使うものであれば、医療機器以外でも必要経費になるのか?

答え
医師が治療のために必要だと認めて医院や病院のためにだけ使う場合には、それが医療機器以外のものであっても必要経費となります。
実際に精神科医がピアノを患者の治療の一環として使っていて、それを経費に計上したことがあります。
ピアノであれば診察室から動かすことができず、治療だけで使っていると主張できるかもしれません。ただ例えばバイオリンなどとなると持ち運びができるため、院長先生が日常生活でも使っているかが焦点となります。
ただ少しでも日常生活で使っていると、まったく医院や病院の必要経費に計上できないというわけでもありません。
生活費で50%、医院や病院の治療で50%となれば、購入費用の半分は経費として認められることになります。

 

質問6
ロータりークラブはその会員の親睦や地域の社会奉仕を主たる目的としているが、院長先生が参加することで医院や病院の新規の患者を呼び込むことも期待できるため、その会費は経費として認められるか?

答え
院長先生の生活費(家事関連費と呼ぶ)が必要経費として認められるためには、医院経営や病院経営の業務と関連があるだけでなく、業務上の必要性及びその部分が客観的に明らかでなければなりません。
確かに、院長先生がロータリークラブの各種会会合に参加することで、地域の経営者との懇親が深まり、医院や病院の社会的信用を高めることにつながることは認められます。
ただ、院長先生の参加が医院や病院の業務上の必要性に基づくものであるとは客観的には認められないため、事業所得の必要経費に計上することはできません。

 

質問7
医師会の役員になった場合、その親睦会での交際費は医院や病院の必要経費になるのか?

答え
院長先生が、地元の医師会の活動を行う場合、それはあくまで医師会の業務であって、医院や病院の業務ではありません。
そのため通常であれば、院長先生が医師会の業務を遂行するにあたって使った費用は、事業所得の必要経費としては計上できません。
ところが最近の裁判例などでは、その専門の団体に所属することが自分の医院や病院の運営上必要なことであれば、その交際費を必要経費に算入できるとされています。
医師会の役員になることが医院や病院の運営上必要とすれば、それに立候補するための費用も必要経費に計上できるとされています。
先ほどのロータリークラブと比べて、医師会の役員に就任したり、その親睦会に参加することは医院や病院の業務として必要だと認められやすいからだと思います。
ただし、その場合でも二次会の交際費はあくまで院長先生の私的な経費であり、医院や病院の必要経費に計上することはできません。

 

以上のように、院長先生が個人事業主の場合には、院長先生の生活関連費と医院経営や病院経営の必要経費の境目を慎重に判断する必要があります。

 

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