これからは、概算経費率が使えない医院や病院が、一気に増えます。

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2015/07/20
これからは、概算経費率が使えない医院や病院が、一気に増えます。

概算経費率が使えない医院や病院が一気に増加

個人で医院経営や病院経営を行っていると、確定申告によって、医業収益から、経費を差し引いて、利益を計算します。この利益に累進課税である所得税がかかるのです。
ただ、医院や病院の社会保険診療収入に対してだけ、特別に、概算経費率を掛け合わせて、経費を計算することができます。

租税特別措置法第26条に規定されているため、略して、「措置法26条の概算経費率」と呼ばれています。

実は、2年前にも概算経費率について説明していますが、税制改正があり、適用できる医院や病院の基準が変わったのです。

  • 前の基準  → 社会保険診療収入が、5000万円以下
  • 新しい基準 → 上記の基準に加えて、医院や病院の医業収益の合計が、7000万円以下

病床(ベット)がない一般診療所(クリニック)の平均の医業収益は、7000万円前後です。
これが、整形外科などになると、1億円近くになります。
そのため、この7000万円という数字は、かなり多くの医院や病院が超えてしまうと予想されます。

まず、概算経費とは、どのくらいの経費を認めてくれる制度なのか、復習しましょう。

社会保険診療収入の額

経費率

加算額

2,500万円以下

72%

0円

2,500万円超~3,000万円

70%

500,000円

3,000万円超~4,000万円

62%

2,9000,000円

4,000万円超~5,000万円

57%

4,900,000円

5,000万円超

適用なし

例えば、社会保険診療収入が4000万円の医院であれば、

4000万円 × 57% + 490万円 = 2770万円

が経費として計上することができ、利益は、1230万円となります。
利益率が、1270万円÷4000万円=約30%で、経費率が約70%となります。
医院や病院の経費は、医業収益に比例して上がってしまう変動費と、比例しない固定費に分けられます。

通常、医薬品や材料は変動費となりますが、それ以外の人件費、賃料、水道光熱費は、固定費となります。
そのため、医院や病院の経費は、ほとんどが固定費となり、医業収益が上がると、一気に利益が増える体質になっています。

社会保険診療収入が4000万円のときに、その経費率が約70%というのは、かなり高いと考えられます。
そのため、医院や病院は、概算経費率を使った方が、得になることが多いはずです。

この措置法26条がすごいのは、税務署に事前に届け出ておく必要はなく、1年間が終わった段階で、自由に選択できることです。
ただ、2つだけ、注意点があります。

 

(1)自由診療収入の売上も関係する

先ほども、説明しましたが、措置法26条の概算経費率を使うためには、社会保険診療収入が5000万円以下だけではなく、医院経営や病院経営の医業収益の合計が、7000万円以下でなければいけない、という条件がつきました。

そのため、措置法26条の概算経費率は、医療法人でも使うことができるのですが、上記の条件があるので、ほとんど使えないというのが現状です。

 

措置法26条の概算経費率を使うつもりだったのに、条件を満たせなかったということも、あり得ます。
10月ぐらいには、予測を含めて、医業収益を集計しておき、措置法26条の概算経費率が使えないと分かったら、節税対策を年末までに実行しておくべきでしょう。

 

また、医院や病院が、医薬品を仕入れたときに、薬品会社から仕入割引(仕入のリベート)をもらうことがあると思います。
これは、雑収入として医業収益になり、同じように、上記の7000万円の判定にも影響するため、注意してください。

 

さらに、医院や病院を医師2人で共同経営している場合には、どうなるのかと聞かれることもあります。
個人事業主としての共同経営であれば、医業収益を按分して判定することができます。
例えば、医業収益が1億2000万円、そのうち、社会保険診療収入が、半分の6000万円だとします。

医業収益 1億2000万円 ÷ 2
= 6000万円 → OK

社会保険診療収入 6000万円 ÷ 2
= 3000万円 → OK

この場合、2人の医師がどちらも、社会保険診療収入に対して、措置法26条の概算経費率を使うことができるのです。
ただ、医療法人で2人が理事となっている場合には、医業収益を按分することはできません。

 

(2)経費を区分する

どの医院や病院でも、医業収益の内訳が、100%の社会保険診療収入となることはあり得ません。
インフルエンザの予防接種など、必ず、自由診療収入が入ってきます。

このとき、社会保険診療収入と自由診療収入に共通して使われた経費(以下、「共通の経費」という)があると、按分することになります。
その按分する計算方法が決められています。
収入割合による計算と、診療実日数割合による計算がありますが、ほとんどの医院や病院は、前者を採用します。

自由診療割合

診療科目

調整率

内科、耳鼻咽喉科、呼吸器科、皮膚科など

85%

眼科、外科、整形外科

80%

産婦人科、歯科

75%

上記の数式で自由診療割合を計算して、共通の経費と掛け合わせて算定された金額は、自由診療収入の経費になります。

同時に、社会保険診療収入から、概算経費を差し引くので、共通の経費に(1-自由診療割合)を掛け合わせて算定された金額は、切り捨てることになります。
ということで、共通の経費に分類されると、勝手に自由診療収入に係る経費を、調整率をかけて、かつ按分計算されてしまうので、不利です。

そのため、社会保険診療収入に直接かかった経費と、自由診療収入に直接かかった経費を、ハッキリ区別しておけば、この自由診療割合を使わないため、節税対策になるのです。

例えば、歯科医院で、歯科技工所から送られてくる請求書を、社会保険診療収入と自費診療収入に区分してもらえばよいのです。それとも、歯科技工士を分けてしまうことも考えられます。

 

医療機器を廃棄したり、医院や病院の内装を大きくリフォームするときには、大きな損失(除去損)が発生します。
これが社会保険診療収入に関係する経費であれば、措置法26条の概算経費率を使っていると、それに含まれてしまうことになります。

当然、「概算経費率 > 経費+除去損」であれば、概算経費率を使った方がよいはずです。
ただ、今年と来年の2年にまたがって、除去損が発生する場合、どうせなら、1回でまとめて行えば、「概算経費率 < 経費+除去損」となることもあるのです。

そのため、大きな損失が発生するときでも、その時期を上手に選定することで、所得税を節税することができるのです。

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