同じ場所で夫が内科医、妻が耳鼻科医を開業していますが、別々の確定申告ができるのか?

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2018/02/28
同じ場所で夫が内科医、妻が耳鼻科医を開業していますが、別々の確定申告ができるのか?

父親が自宅の横の建物で内科医として開業していました。そこに、子供が耳鼻咽喉科を同一の場所で開業したとします。父親と子供は生計が別です。生計別とは、一緒の家に住んでおらず、財布が別という意味になります。

実際に息子は結婚をして、近くにマンションを購入して、そこから父親の自宅(実家)の医院に通っています。子供は診療所開設届出など保健所への届出は、父親とは別に行いました。このとき、父親は内科の診療だけの医業収益を計上して、子供は耳鼻咽喉科の診療だけの医業収益を計上しました。というのも、医師や歯科医師には措置法26条(正式名称は、租税特別措置法26条)という特例があるからです。

上記の2つの要件を満たすと、社会保険診療に対しては、下記の概算経費率で計算した経費を計上してよいことになっているのです。

父親は高齢なので、午前中のみの診療だったこともあり、医業収益は3000万円以下でした。新しい医療機器を購入することもなく、ほとんど経費はありません。この状態ではほとんどが利益となるところ、措置法26条が使えれば自動的に概算経費を計上できるため、かなり所得税が節税できます。

一方、子供はまだ40歳と若く、1年間の医業収益が1億円近くあり、措置法26条の概算経費は使えないため、実際に耳鼻咽喉科でかかった経費を集計しています。もともと所得税は累進課税(所得が上がるほど税率が上がってしまう制度)です。そのため、父親と子供の医業収益を合算せずに分けるだけでも、利益が分散されてお得です。

その上、父親が措置法26条を使えるならば、さらにお得になっているのです。父親と子供はそれぞれが保健所に届出を提出して、しかも診療科目も違います。それだけではありません。診察室も2つあり、検査器具も違い、経費の支払い、レセプトの提出も別々になっています。

このように医業収益だけではなく、経費もしっかりと区別されていれば、生計別の親子がそれぞれで事業主として申告しても、まったく問題ありません。

1つだけ注意点があり、子供が父親に対して賃貸料を支払うべきかどうかという点です。子供が賃貸料を支払うと経費が増える一方で、父親の収入が上がります。ただ先ほども言いましたが、所得税は累進課税ですので、父親の所得が低いようであれば、賃貸料を支払って、子供の所得税を節税した方がよいと通常であれば、考えます。

ただ近い将来、父親の相続が発生するならば、かつ財産があり相続税がかかりそうであれば、子供が賃貸料を支払わないという選択肢もあります。これはシミュレーションしてみないと分かりません。

ここまでは生計別のケースですので、内科の医業収益と耳鼻科の医業収益が別々の財布に入って、それぞれの家庭が通帳を管理していることが前提でした。ところが、夫が内科医で、妻が耳鼻咽喉科医で、自宅の隣りで開業していたらどうなのでしょう。夫が親から相続した土地の上に、夫名義の自宅とその隣りに医院の建物を建築しました。つまり建物も、土地も夫の名義となります。

そこで夫と妻は別々に保健所への診療所開設届出を行いました。内科の医業収益は夫の通帳に、耳鼻科の医業収益は妻の通帳に入金されて、経費もそれぞれが区別して支払っています。ただ先ほどの親子と違い、夫婦は生計一(せいけいいつ)となります。生計一とは同居して、同じ財布を使い回すことです。

実際に、夫の内科の通帳から毎月一定額を、妻の耳鼻科の通帳から毎月一定額を、妻が引き出して、それを1つの通帳に入れて、そこから生活費や子供の教育費を支払っています。でも結果的に、夫の内科の通帳は妻が保管して自由に引き出せるのです。勤務の実態としては、夫は1日中診察を行い働いていますが、妻は子育てがあるため、午前中しか診察を行っていません。そのため、先ほどと同じで妻は措置法26条の概算経費率を使いたいと考えています。これに関して所得税には、下記のような通達があります。

通達とは国税庁長官が、国税庁の職員に対して発令する命令文です。

そのため、彼らはこの通達に縛られて、かつこれをもとに税務調査でも判断します。納税者は国税庁の職員ではありませんので通達に従う必要はありませんが、通達を見ることで税務署がどのような考え方を持っているのかが分かります。

もっと簡単に言えば、通達に書かれていることに反論せずに従っていれば、税務署と意見が食い違うことはなくなるのです。もちろん、通達に書かれていないこともあるので、それは納税者の判断となります。通達の文章は長いので、該当する部分だけを抜き出すと下記となります。

これにより、医師や歯科医などの自由職業の場合には、下記の2つの条件を満たせば、別々の事業主として認めると言っています。

妻は耳鼻咽喉科医であり、その医業収益も経費も区別されて、自分の通帳で管理しています。また診察室も2つあり、検査器具も夫とは違い、レセプトの提出も別々です。とすれば、

通達では「推定する」と記載されていますので、実態として妻が夫に従属していないのであれば、それぞれが申告しても、まったく問題ないことになります。

ただここでも注意点が賃貸料です。妻が夫に賃貸料を支払っても、生計一である場合には、経費として認められません。そのため、妻が夫に賃料を支払うという選択肢はないことになります。それでも妻の所得が低いので、支払わないことでデメリットはないはずです。

 

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