医院や病院には、税務調査が入りやすいという噂は、本当か?

住所
医療関連のコンサルティング
医院経営/病院経営コンサルティング > 医院の所得税、医療法人の法人税、消費税の節税手法 > 医院や病院には、税務調査が入りやすいという噂は、本当か?
2012/04/04
医院や病院には、税務調査が入りやすいという噂は、本当か?

最近は、今まで調査できていなかった個人や法人に重点的に、税務調査が入っています。

これは、大企業に税務調査に入り、大きな金額を探すのではなく、小さくてもよいので、できるだけ、広く調査していくという方針に変わっているからです。

大小に関わらず、不正は正すという姿勢をハッキリ示すことは、ちょっとした誤魔化しならよいという風潮を無くすので、良いのかもしれません。それに、駐車違反と同じで、自分だけ調査に入られて、知り合いは逃れているという不公平感もなくなります。

その中で、院長から、

「医院や病院は、税務調査に入られやすいという噂は、本当ですか?」

とよく聞かれるのですが、そんなことはありません。

「医院経営や病院経営は、70%が黒字であるため、税務調査が入られやすいのでは?」

という質問も受けます。

ただ、赤字になっている会社は、もしかしたら、脱税をした結果という可能性もあるので、黒字だから税務調査が入りやすいとは、一概には言えません。

まず、ここで、税務調査の基本的な知識を
知っておきましょう。

医院経営や病院経営では、1年間の医業収益から経費を差し引いて、利益を計算して、それに対して、個人医院であれば所得税、医療法人であれば法人税を支払います。

このとき、ほとんどの人が、会計事務所に依頼して、税金を計算してもらっているはずです。会計事務所は、税務申告書を作成して、税務署に提出するのですが、そこに、「税務権限証書」というものを添付します。

あなたは、税務申告書の一部として、押印していると思いますが、それがあると、税務署は、原則、その「税務権限証書」に記載されている会計事務所に、「税務調査」が入る旨を連絡します。

もちろん、査察(マルサと呼ばれる部署)の調査では、そんなものは無視されますが、私の今までの経験では、医院経営や病院経営で、そこまでの調査が入ったと聞いたことがありません。(実際には、医院や病院にも査察は入っている可能性はあります)

また、「税務権限証書」がないと、税務調査の立会いができません。

つまり、会計事務所に頼まずに、自分で税務申告書を作成している場合には、税務調査の対応も立会いも、すべて自分で行なうことになるのです。

そういう意味では、やはり、会計事務所に依頼する方がいいのではないでしょうか。

また、私のところには、ときどき、医院や病院の税務調査の対応だけをお願いに来る院長先生もいるのですが、そのときには、「税務権限証書」を新しく作成してもらいます。

決算書や税務申告書を作成したのが誰であっても(別の会計事務所であっても)、「税務権限証書」があれば、税務調査に立ち合うことができます。

ただ、税務申告書を作成した会計事務所と、税務調査に立ち合う税理士は同じ方が、対応はスムーズですし、お互いの意思疎通もよいと思います。

とにかく、通常は、「税務権限証書」に記載されている会計事務所に連絡が入り、税務調査の日程を調整します。

だいたい、医院や病院の調査の場合、2人の担当官が、2日間から3日間、医院や病院の1部屋を借り切って、調査を行うケースがほとんどです。その中で、大きな問題が発覚すれば、その1ヶ月以内に、多くの担当官が、ドカドカとやって来て、もっと長く調査を行うことになります。

そのとき、院長からよく質問されるのは、4つあります。

【1】その税務調査を断ることはできるのか?

税務調査は、表向きは、任意です。

そのため、「悪いこともやっていないのに、なぜ、調査されるのか?」と怒る院長もいますが、実際には、税務署の担当官には、「質問検査権」が与えられています。刑事さんが持っている警察手帳と同じです。この質問検査権を拒否した場合には、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処されます。

つまり、罰則があるので、半ば、税務調査は、強制なのです。

そもそも、悪いことをやっていなければ、ビクビクする必要はないので、調査してもらうという態度がよいのではないでしょうか。

実際、税務調査で、社員の不正が発覚したり、会計事務所の処理の間違いが分かることもあります。税務署がタダで会計処理をチェックしてくれるというように、税務調査を前向きに捕らえましょう。

【2】院長がずっと、立ち会わなければいけないのか?

院長は、医院や病院の診察で忙しいのは、当然です。2日間から3日間の調査は、平日に連続で行なわれるのですが、それに、どこまで立ち合う必要があるかと心配になる院長がいます。

できれば、初日の1時間は、医院や病院の成り立ち、患者の層、診察の内容などを簡単に説明する必要があります。

ただ、それ以外は、立ち合う必要はありません。医療事務の社員と会計事務所の担当者に任せ、どうしても院長に聞きたいことがあれば、あとでまとめて、質問してもらえばよいのです。

税務署の担当官も、嫌がらせをして、医院や病院の経営を妨害するために来たわけではないので、交渉すれば、柔軟に対応してくれるはずです。

【3】お土産が必要なのか?

税務署の担当官は、まったく、税務上の否認する事項がないと、上司に怒られるから、何かを見つけるまでは、居座るのではないか?それならば、お土産として、何か否認されるものを教えてしまった方がよいと考える院長もいます。

ただ、お土産を渡す必要は、まったくありません。

別に、税務上の否認項目がゼロであることは、珍しいことはではないのです。

これは、国税庁が発表している、平成22年度の税務調査の統計資料を見れば分かります。

東京国税局では、所得税の調査対象件数は、24万7千件あり、そのうち、申告漏れなどの問題があった件数は、12万6千件でした。ということは、税務調査が入ると、51%の確率で、何かしら問題があり、追加で税金を納めることになったということです。ただ、昨年度に比べて件数は減っているようです。

ここで、注目すべきは、49%の個人は税務調査が入っても、何の指摘事項がなかったことになります。この中には、個人医院も入っています。

さらに、法人税の調査を見ても、調査対象件数は、33,351件であり、そのうち、申告漏れがあったのは、23,581件となっています。

つまり、法人では、70%の確率で、何かしら問題があったということです。

ただ一方で、普通に事業を行なっている会社のうち、30%もの会社が、税務署から何の指摘もなかったことになります。この中には、医療法人も含まれます。

そもそも、税務署の担当官が、問題が発見できるまで、居座ることもありません。

彼らは、ドンドン、次の税務調査のスケジュールが詰まっています。この医院や病院には、何も指摘することがなさそうだと思ったら、早めに切り上げて、次の調査に行きたいというのが、本心なのです。

もう一度、言いますが、
税務署の担当官にお土産はいりません。

【4】税務調査の結果は、2-3日で出るのか?

2日間から3日間かけて、税務調査を行いますが、それは、現場で資料を引っくり返したり、質問をしたりする日数です。そのあと、税務署に資料を持ち帰り、検討して、会計事務所に否認したい事項を伝えてくるのですが、そこから、交渉が始まります。

交渉と言っても、税金を安くしろとか、見逃せというものではありません。

明らかに、否認される項目は認めるにしても、グレーな項目もあります。法律的には問題ないけれど、見方によっては、アウトかもしれないという項目です。

これに関して、医院や病院に残っている証拠や資料を税務署に提示して、否認されないようにするのです。これが長ければ、半年、1年間となりますが、最低でも1ヶ月はかかると考えるべきです。そのあと、修正申告書を作成して、税金を納めることになります。

ということは、会計事務所に税務調査の電話があってから、すべてが終わるまで、2ヶ月から3ヶ月はかかると考えてください。

さらに、国税庁のホームページには、面白い統計資料も載っています。それは、最初に私が言ったことに繋がるのですが、東京国税局が、赤字の会社に税務調査に入り、224億円もの税金を追徴したということです。

赤字の会社の調査対象は、14,055件で、このうち仮装・隠蔽による不正計算のあったものは3,273件だったと記載されています。14,055件というのは、東京国税局の管轄の数字なので、全国で合計すれば、もっと件数は多くなるということです。

しかも、本当に休眠会社で赤字であったり、売上が数百万円で赤字の会社には、税務調査は入りにくいのです。ということは、売上が大きければ、黒字でも、赤字でも関係なく、税務調査はあると考えるべきです。

そして、この国税庁のホームページには、

「全体の約76%を占める赤字を申告した会社の中には、税負担を逃れるために故意に赤字に仮装している会社もあることから、赤字を申告した会社に対しても、積極的に調査を行っている」

とも記載されています。

院長から、

「医院経営や病院経営で、赤字で申告しているうちは、税務調査が入りにくいと聞いたのですが、本当ですか?」

と聞かれることも多いのですが、この統計資料を見ると、個人医院や医療法人が赤字であっても、税務調査が入ることは分かります。

院長の給料を高くして、かなり所得税が高く、医院や病院は赤字になっている決算書を見たことがあります。所得税は累進課税です。

給料を上げれば、一気に所得税はあがり、医療法人は赤字なので法人税はゼロというのでは、税金がかなり無駄です。

そんなことで、医院や病院を、わざと赤字にしても無意味です。

赤字でも、黒字でも、税務調査は入るのです。

facebook
twitter
google+