歯科医院の利益を安定させて、黒字化するためには、どうすればよいのか?

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2012/09/18
歯科医院の利益を安定させて、黒字化するためには、どうすればよいのか?

現在の全国の歯科の医療費は、1年間で2兆5000億円前後です。そして、開業している歯科医院の数は68000件です。

単純に割り算すると、歯科医院1件当たり、3600万円の医業収益になります。

地方に行くほど、歯科医院の面積は大きくなり、働く歯科医や歯科衛生士は多くなり、1軒当たりの医業収益は大きくなります。

そのため、都心では1年間の医業収益が3000万円を切る歯科医院も増えてきました。
実際、この医業収益でやっていけると思いますか?
別に脅かしているわけではありません。

この間、東京では1日1件の歯科医院が廃業していると夕方のニュース番組で報道されました。でもこれは、高齢になった歯科医がリタイアしたり、儲かってきた個人の歯科医院が医療法人になったりしたものもカウントされています。

そのため、資金繰りに詰まって廃業する歯科医院は、そこまで多くありません。
実際に先ほどの医療費2兆5000億円という数字は、ここ数年、増えていませんが、減ってもいないのです。

いちお、消費税が増税されて、社会保障費にあてるということになりましたが、別に増やすわけではないので、この医療費は変わらないでしょう。
ただ今後も、歯科医院の開業は、今までほど多くなくても増えていくことは確実なので、シェア争いに負けた歯科医院は撤退することになります。

実際に新しい歯科医院ができたら、そこに行ってみようと患者は考えますか?

歯を治療してもらおうと思ったら、新しい医療機器が揃っていて、予約も取りやすいところに行ってみようかなと考える人が多いのです。

ということは、歯科医院を開業すれば、新規の患者は来ます。だからこそ、その患者をいかにリピートさせるか、他の歯科医院に行かせないように引き止められるかが大切になります。

あなたが歯科医院を経営していたら、「患者にリピートして来てもらうのは、当然だよ」と言うでしょう。

でも私が聞きたいのは、「歯が痛くなくてもリピートして来てくれる患者が何人いるのか?」ということなのです。

というのも、医院や病院は、基本的に熱が下がれば、骨折がくっつけば、水虫がなくなれば、治療は終わりです。骨折が治ったのに、医院に行く人はいませんし、医師もそれを望んでいません。

治療行為がないのに、来院してもらっても、診療報酬点数は高くなりませんし、薬もなければ、処方箋の診療報酬点数もつかないのです。
それならば、今、骨折して痛がっている患者に手厚い診察をした方が、高い診療報酬点数が稼げて、医療収益は上がるのです。

実際には、歯科医院も同じで、何にも虫歯がなければ、来院してもらっても診療報酬点数はつきません。ゼロ円です。

ただ、歯科医院の場合には、歯科衛生士がスケーリングを行ったりすれば、診療報酬点数を稼ぐことができます。

よく歯科医院の自費診療の割合を高くすることが重要だと主張する院長がいます。
もちろん、自費診療が増えて、患者1人当たりのレセプト単価が上がれば、医業収益は上がりますし、利益率もよくなります。

ただ、高額な自費診療を定期的に受けてくれる人が多いわけではありませんし、運が大きくなってしまいます。それに、最新の医療機器がある歯科医院には負けてしまうのです。あなたがいつでも高額な医療機器を買い揃えることはできません。

それに、そもそも、あなたの歯科医院が開業している地域に、そんなに高い自費診療を支払ってくれる患者が何人いるでしょうか?

それに、自費診療の患者を取り込むためには、最新の医療機器だけではなく、内装にお金をかけて、バンバン広告宣伝費を打たなくてはいけません。
それでも運が大きいというのでは、歯科医院の経営が博打になってしまいます。

そこで、歯科医院は自費診療に頼るのではなく、保険診療だけでも安定した医業収益を稼げる経営体質を目指すべきと思うのです。

そのためには、できるだけ歯科医院のユニットが稼働していない時間を減らすことです。

もちろん、ユニットで患者が寝て待っているだけでは、診療報酬点数が1点も稼げません。
そこで歯科衛生士を使って、そのユニットを稼働させることができれば、診療報酬点数がもらえます。この歯科衛生士ができることを考えると、歯科の治療ではなく、歯科のメンテナンスや予防処置に行き着くのです。

あなたが歯科医としてがんばっても稼げる診療報酬点数には限界があります。特に、内科などの医院や病院と違って、どんなに急いでも1人に対して15分間の治療時間はかかるのです。とすれば、1時間で最大で4人です。

しかも自費診療となれば、それ相応の説明も必要ですし、本人が納得した上で始めることを考えると、最低でも30分、もしかしたら1時間かかることもあり得るのです。
その間、歯科医院の他のユニットはずっと空いていることになります。それでも賃料も人件費も水道光熱費もかかり続けるのです。

あなたは、「自費診療であれば、利益が出る」と主張するかもしれませんが、それは本当ですか?
100万円の自費診療を支払ってくれる患者が、そんなにいますか?
せいぜい20万円ぐらいではないですか?

その患者が直前で予約をキャンセルすれば、その時間はすべてのユニットが空になるのです。
キャンセルがあったとしても、他のユニットを稼働させることで稼げる歯科医院にすることの方が大事ではないでしょうか。

そこで、あなたが歯科医としてやるべきことは、下記の3つになります。

  • 1.患者の意識を変えるために、予防歯科について丁寧に説明する
  • 2.あなたの歯科医院ができるメニューを、できるだけ増やす
  • 3.歯科衛生士を雇って、その人が辞めないようにケアする

 

まず「1」ですが、患者は歯科医院に来院したいとまったく思っていません。私もそうですが、ハッキリ言って、歯科医院に歯が痛くもないのに行きたくありません。

それでも、定期的にメンテナンスをすれば、虫歯になりにくいことは理解できます。
癌になっても早期発見がいいに決まってます。

虫歯になりそうな歯があれば、先に予防しておくことで、進行を遅らせることができるでしょう。分かっていても、歯科医院に行きたくないのです。

その意識を変えさせるのは、院長である、あなたからの説明しかありません。

それでも、患者全員の意識を変えることは不可能ですが、歯が痛くなくても、あなたの歯科医院に来院する患者を地道に増やしていきましょう。

 

次に「2」ですが、歯のメンテナンスをしている患者の歯が痛くなると、もちろん、あなたの歯科医院で治療するはずです。

医院や病院の場合には、治療する場所が違うと、例えば、お腹が痛いときには内科に行きますが、肩が痛い時には整形外科に行くはずです。患者が、自分の痛みから医院や病院を選択しているのです。

ところが、歯科医院の場合には、ほとんどすべての治療が行えてしまいます。

そのため、歯のメンテナンスで来院してくれた患者から、
「この歯科医院では、審美歯科、インプラント、矯正などもできるんですか?」
と聞かれたときに、
「それはやっていません」
と答えれば、その患者は別の歯科医院に行ってしまうでしょう。

ずっと患者を引き止めておくためには、ほとんどの治療メニューを揃えておくことが重要です。

あなたは、「インプラントは自分の歯科医院でやるにはリスクがある」と言うかもしれませんが、そもそもインプラントの手術は、歯科医院の院長である、あなた自身がやるべきではありません。
手術が上手な歯科医の先生に依頼して、やってもらえばよいのです。

インプラントの手術は、院長である、あなたを半日も拘束してしまいます。
その間、歯科医がいなければ、他のユニットの売上は確実に減ります。

とにかく、ユニットをフル稼働させるためには、院長はできるかぎり、1人の患者、そして1つの治療に拘束されてはいけないのです。

 

最後の「3」についてですが、郊外であれば近所に歯科衛生士の方が住んでいて、パートや時間を限って働いてくれることが多いのですが、問題は都心です。

ハッキリ言って、歯科衛生士の応募自体がありません。
歯科衛生士がいなければ、歯科医しかユニットを稼働させて、診療報酬点数をもらうことができません。

1年間待って、1人の歯科衛生士の応募が来ればいい方です。しかもほとんどの場合、内定を出しても、歯科衛生士側から断られてしまうのです。

というのも、歯科衛生士に対して、「入社するときに、一番重要視することは何ですか」と聞くと、「仕事を教えてくれる人がいる歯科医院がよい」と答えるからです。

つまり、あなたが初めて歯科衛生士を雇おうとすれば、教えてくれる人がいません。
今までたった1人いた歯科衛生士が辞めてしまい、補充しようとすると、やはり教えてくれる人がいません。そのため、歯科衛生士を雇うことができないのです。

もしあなたの歯科医院に歯科衛生士が1人すでにいるならば、もう一人雇いましょう。
人件費が高いという問題でありません。
そもそも歯科衛生士がいれば、80点の診療報酬点数も加算できるのです。
それで人件費はカバーできるはずです。

もしどうしても歯科衛生士を雇えない場合には、勤務医の歯科医を雇うことから考えましょう。
とにかく、ユニットの稼働率を上げることが、歯科医院が儲かる秘訣だからです。

私は、自費診療を減らせばよいとか、軽視してもよいと主張しているわけではありません。

ただ、これから歯科医院の利益を安定的に黒字にするためには、運や競争が激しい自費診療の患者の獲得にお金をかけるよりも、保険診療でよいので、ずっと稼ぎ続けられてシェア争いに捲き込まれない経営を目指した方が得だと主張しているのです。

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