看護師が退職願を出したのに、「やっぱり、働きたい」と言ってきたら

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2015/04/20
看護師が退職願を出したのに、「やっぱり、働きたい」と言ってきたら

顧問先の院長先生から、「迷っていることがある」と相談を受けました。

先日、今まで3年間あまり、医院のために一生懸命、働いてくれた看護師が「親の介護が大変なので、辞めたい」と言って、退職願いを出してきたようなのです。
院長先生としては、突然のことだったので、その場では「いちお、預かっておくよ」と言い、終わりました。

看護師が退職願を出したのに、「やっぱり、働きたい」と言ってきたら翌日、院長先生は、その看護師の先輩を呼んで、このことを話したところ、「最近、介護疲れもあるのか、残業も一方的に断ってくるし、辞めるのは仕方がない」という結論になりました。

ただ、そのあと、週末まで3日間は、院長先生もずっと忙しく、このことに、お互いに触れずにいました。

そして、土曜日の午前中で診療時間が終わり、皆が帰ったあと、その看護師と2人だけになると、「先日の退職願いですが、親と話し合った結果、撤回して、やはり働かせてください」と申し出てきたのです。
この場合、「法律的には」、どうなるのでしょうか?

 

看護師や社員が、医院や病院を退職する場合、退職願いを提出することが一般的です。
もし今まで、口頭ですませていたという場合には、トラブルになる可能性があるので、必ず、看護師や社員に手書きで退職願いを作ってもらい、それを受け取ってください。

一行で、
「このたび、一身上の都合により、平成〇〇年〇〇月〇〇日をもって退職いたしたく、お願い申し上げます。」
という内容で、問題ありません。

それで、退職願いは、下記のどちらが、正しいのでしょうか?

【1】看護師から、一方的に労働契約を解除された、つまり提出しただけで、法律は有効になる

【2】看護師から、労働契約の解約の申し込みをされただけで、法律は保留になる

実は、看護師が、院長先生に提出したものが「辞表」ならば、 提出した時点で、法律は有効(労働契約が、その時点で解除される)となります。

しかし、「単なる退職願い」であれば、提出しただけでは、有効とはならないのです。

つまり、労働契約は終了しません。

実際、次のような判例があります。

<全自交広島タクシー事件広島地裁昭和60年4月>
この事件は、退職願いが「即時解約か、合意解約か」で争われました。
判決としては、
○雇用関係は信頼が重視される継続的関係
○一般的には、従業員は円満退社を求める
○会社側も同じであるため、退職願いは労働契約の合意解約の申し込み

となったのです。

ここでも、退職願いの提出は、単なる退職の申込みにすぎないとされたのです。
そのため、看護師が提出した「退職願い」から、労働契約を終了させる手続きとして、

(1)看護師が退職願を提出する

 (2)院長先生が承諾する

 (3)退職が決定する

を行うことが必要です。

今回、院長先生から相談されたケースでは、まだ退職願いを預かっている時に、看護師が撤回してきたのです。
院長先生も、先輩の看護師とは合意していても、本人に対して、承諾したと伝えていません。
だから、当事者である看護師は、自分の退職願いを撤回することが可能となるのです。

もし、院長先生が、その場で「分かった」と言っていれば、 それが承諾したことになるため、看護師は、法律的に撤回できないことになります。
もちろん、それでも院長先生が、その撤回を認めてあげるならば、退職しないこともあるでしょう。

ただ、こんなことを看護師が知っているはずもありません。
そこで、就業規則に「退職の手続き」について、下記のように、記載をしておくべきです。

<記載例>
第○条(退職手続)
(1)社員が自己の都合により退職しようとする場合には、少なくとも1カ月前までに退職願いを提出しなければならない。
(2)前項により退職願いを提出した者は、医院からの承認があるまで従前の職務に服し、その後は職務引継等、医院の指示に従わねばならない。
ただし、退職願いを提出したあと、2週間を経過しても承認について、何ら返事がないときは、その経過した日をもって承認されたものとみなす。

ちなみに、(2)は民法によります。

しかし、市販されている就業規則のひな型では、「退職願いを提出したあと、2週間経過した日が退職日」としている場合もあります。
これは、一般の会社を対象としてるからだと考えられます。
医院経営や病院経営の場合には、ギリギリの看護師と社員の数で現場を運営しているはずです。人員に余裕を持たせている医院や病院は、聞いたことがありません。

そのため、実際には、仕事の引継ぎは、新しい看護師を雇ってから行うことも多いでしょう。
とすれば、退職願いを受け取ってから、2週間どころか、1ヶ月でも仕事の引継ぎができない場合もあり得ます。

そのため、私は医院や病院の就業規則では、その期間を1ヶ月ではなく、2~3ヶ月とすることを、お勧めしています。

法律的に、「2~3ヶ月以上前に通知しないと、辞めることができない」と、完全に縛れるわけではありません。
本人にやる気がなく、医院や病院に出て来なくなれば、それを強制的に連れてくることもできません。

 

それでも、看護師や社員は、入社するときに、雇用契約書に署名、押印した時点で、就業規則に同意していることになっているのです。
だから、就業規則に記載していれば、それなりに、効果はあるのです。

就業規則は、医院経営や病院経営に合致したものを作り、それを現実的に運用していくことが、大切です。

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