どうしても、6か月の試用期間で、解雇したいスタッフがいるが、問題はないか?

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2013/10/30
どうしても、6か月の試用期間で、解雇したいスタッフがいるが、問題はないか?

どうしても、6か月の試用期間で、解雇したいスタッフがいるが、問題はないか?医院や病院では、女性が多いこともあり、結婚や出産、旦那の転勤などで、一定の確率で必ず、辞めていきます。

他の業種に比べて、社員の回転数が低いとは感じられません。

辞めた穴を埋めるために、新しく看護師や社員を雇うのですが、職務経歴書や面接だけでは、すべてを理解することはできません。

とくに医院や病院に面接に来る人の経歴で、「えええ、なんで、こんな経歴で、うちに来るのか?」ということは少なく、だいたい同じ経歴になるはずです。
そのため、実際に雇ってみないと、その人の実力が分かりません。

ほとんどの医院や病院では、本採用する前に、「お試しの期間」として、試用期間を設けています。
なお、試用期間を定めれば、その期間には基本的に上限はありませんが、通常は3ヶ月から6か月ぐらいが多いはずです。

医院や病院の現場では、この試用期間で解雇したいという人も出てきます。
あなたは、「解雇できるように、試用期間を定めたのだから、よいはずだ」と主張するかもしれません。

ただ、本当に医院や病院側の理由だけで、または院長先生の気持ちだけで、試用期間という理由で、看護師やスタッフを解雇できるのでしょうか?

まずは、試用期間中の解雇を考える前に、一般的な解雇はどうなるかを見てみましょう。
通常の社員を解雇する場合、次の2つのことがポイントとなります。

【1】 解雇の原因となる客観的な事実があるか?

客観的な事実とは、就業規則に書かれている具体的な解雇原因に照らし合わせて、合致するかどうかです。

【2】 社会通念上、妥当な判断なのか?

医院や病院だけではなく、一般の会社であっても、解雇することがやむ得ない状況に見えることが必要です。

法律的には、この2つを満たせば、医院や病院は、看護師やスタッフを解雇することができます。ただ、実際の裁判事例などを見ると、そこにいたるまでの過程が必要となってきます。

  • 看護師やスタッフに改善させる機会を十分に与えて、解雇を回避する努力をしたか
  • 看護師やスタッフの考えを聞き、話し合いの場を設けて、弁明の機会を与えたか

このような事実がないと、「医院や病院が強引に、看護師やスタッフを解雇に追い込んでいる」となり、あとで裁判になった場合、負けてしまいます。
そのため、実際には、就業規則で手続きを具体的に記載して、必ず、それに沿う形で進めていくことが大切です。

このように、「一般的な解雇」は、高いハードルと時間がかかります。
これに対して、「試用期間中の解雇」は、「一般的な解雇」より、かなり緩和されて認められています。

具体的には、どの部分が緩和されているのでしょうか?
これに関する裁判があります。

<日本基礎技術事件 大阪高裁 平成24年2月>
事実【1】 会社は6ヶ月の試用期間を設けていた
事実【2】 新入社員が入社したが、睡眠不足で業務に専念していない
事実【3】 新入社員は研修中に門限を破った
事実【4】 業務についての課題が未提出だった
事実【5】 指導員が繰り返し注意したが、改まらない
事実【6】 4ヶ月を経過し、改善の見込みがないと判断して、本採用拒否の解雇を実施
事実【7】 新入社員は解雇権の濫用と裁判に訴えた

高裁まで争い、結果は下記になりました。

判断【1】 新入社員に改善の可能性が無いと判断したことは相当の理由あり
判断【2】 就業規則に「能力、勤務態度、健康状態等で不適当な場合は解雇」と規定がある
判断【3】 試用期間中に、指導や教育は十分に行われていた
結論  解雇は妥当

会社が勝訴しています。
この社員も高裁まで争うぐらいならば、最初から課題などは提出すればよかったのに・・・と個人的には思います。

ここで注目すべきは、「本人に弁明の機会」を与えていなくても、「改めて機会を与える必要なし」と、裁判所が判断したことです。
つまり、試用期間中の解雇については、指導、教育の実施が重要視され、「本人の弁明は関係なく、結果が全て」ということになるのです。

この部分が一般的な解雇と違う部分です。
しかし、「医療法人が試用期間中に解雇したのは、不適当」と判断された裁判もあります。

<医療法人財団健和会事件 東京地裁 平成21年10月>
事実【1】 試用期間は、3ヶ月間であった
事実【2】 新入社員の勤務状況が悪かったので、注意指導を実施
事実【3】 社員の態度は改善傾向にあったが、2ヶ月と20日で解雇した
事実【4】 新入社員が解雇を不当として、裁判を起こした

裁判所の判断は、下記となりました。

判断【1】 解雇すべき時期の選択を誤った(試用期間満了まで様子をみること)
判断【2】 誰が見ても解雇が妥当とは言い切れない
結論  解雇は無効

医療法人が負けて、この社員を雇いなおすことになったのです。
それだけではありません。
裁判が明るみになったことで、医療法人の名誉にも傷がつきましたし、業界的にも不当な解雇をしたという噂もすぐに回ってしまいます。

前者の裁判と、この裁判の違いは、

  • 単純に期間の問題
  • 指導や教育の状況、本人の改善状況

が基準になったと推察されます。

特に、前者の裁判(日本基礎技術事件)は、「試用期間が6ヶ月のうちの4ヶ月のときに解雇」だったのに、後者の裁判は、「試用期間が3ヶ月のうちの2ヶ月と20日のときに解雇」でした。
ということは、医院や病院で、試用期間に解雇しても問題ないようにするためには、下記の2つの点に注意しておけばよいことになります。

  • 指導、教育について口頭のみではなく、指導日誌等で記録をとる → 証拠になる
  • 解雇の見極めは試用期間満了時に実施 → 十分な判断期間を取る
  • 解雇の手続きとして30日分の解雇予告手当を支払い、試用期間満了時に解雇する

ただし、懲戒解雇事由に相当する重大な事実があった場合は、労働基準監督署に除外申請を行い、予告手当を支払う必要はないと思います。

また、よく医院や病院から質問されるのが、

「試用期間では人物が分からなかったので、試用期間を延長することができるか?」

というものです。

ただ、あとで争うと、医院や病院が不利になることが多いので、原則、試用期間で判断すべきです。もし現在、3ヶ月では短いと院長先生が思っているならば、6か月に直しておきましょう。

なお、試用期間中で入社後2週間以内ならば、健康状態が悪い、遅刻等を繰り返すなどの勤務態度が悪ければ、即日解雇できます。

この場合には、勤務した日数に対応する給与だけを支払えばOKで、解雇予告手当は必要ありません。

面接だけでは、どうしても見抜けないことは絶対にあります。
もちろん、解雇しない方がよいに決まっていますが、その人がいることで、医院経営や病院経営をかき回されて、他の看護師や社員、そして患者さんにまで、迷惑をかけるならば、解雇すべきでしょう。

ただ、どのタイミングで解雇するかが、医院や病院にとっては重要な問題であり、これを間違えると、あとで長い争いに巻き込まれてしまうことになります。

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