看護師やスタッフに上手に有給を取らせることが、やる気を引き出します

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2013/10/20
看護師やスタッフに上手に有給を取らせることが、やる気を引き出します

看護師やスタッフに上手に有給を取らせることが、やる気を引き出します医院経営や病院経営では、どのような規模であっても、最少人数の看護師とスタッフで回しているのが現状です。

実際に私が関わった医院や病院で、「うちは人員に余裕があるので、暇な人が多いはずです」ということは、今まで一度もありませんでした。

そのため、看護師やスタッフが有給休暇を取ると、周りにしわ寄せが行くため、申請すらしにくいという医院や病院が多いのです。

院長先生からすれば、「たかが有給じゃないか」と思うかもしれませんが、看護師やスタッフのやる気を引き出すためには、有給休暇でリフレッシュしてもらうことは大切な行事なのです。

ただ今まで有給休暇を取ったことがない看護師やスタッフが、突然、申請をすると、困った事態になることもあります。

【1】当日の朝、電話が入り、「今日は休むので、有給休暇でお願いします」と言われた

【2】医院経営や病院経営が繁忙期であることを知りながら、連続3日間の有給休暇を申請された

原則、有給休暇とは、入社して6月以上勤務して、かつ80%以上の出勤が認められると、「法的に発生する権利」になります。

また、法律では「看護師やスタッフが請求してきたときに与える」と規定されています。

そのため、「社員が申請してきたら、拒否できず、医院や病院は、必ず、有給休暇を取らせる義務があるのか?」と考えてしまう院長先生が多いと思います。
ところが、看護師やスタッフが有給休暇を自由に取られてしまうと、医院経営や病院経営が回らない事態に陥ってしまうことにもなります。

労働基準法では、医院や病院に、以下の権利を与えています。

「看護師やスタッフから請求された時季に、有給休暇を与えることで、医院や病院の正常な運営を妨げる場合には、他の時季に、これを与えることができる」

このことを「時季変更権」と呼び、医院や病院は看護師やスタッフから、有給休暇を請求されたとしても、「今は、繁忙期だからダメ」という理由で、休む日を変更させることができるのです。

なんだ、それならよかった・・・とすぐに思ってはいけません。
時季変更権の行使には、実務的に、注意点があります。

まずは、これに関する判例を見てください。

<林野庁白石営林署事件 最高裁 昭和48年3月2日>
事実【1】社員が2日の有給休暇を取得する旨を出勤簿に記載した
事実【2】その2日で、他の営林署での労働組合活動に参加していた
事実【3】署長は休んだ理由を知り、有給ではなく「欠勤」とし、給料を減額した
事実【4】社員はこれを不服として裁判に訴えた

なんと、裁判は最高裁まで控訴されていき、最終的には、会社が敗訴したのです。
この判決では、有給休暇について、「社員が申請して、会社から承認をもらう」という考え方は間違っているとし、社員側に有給休暇を取る権利があるかぎり、原則として当然に取得できるという判決でした。

もちろん最高裁も、有給休暇を取る日を、会社が社員と話し合ってずらしてもらうこと(時季変更権の行使)は可能だとしながら、このケースでは、時季変更権を行使することは不可能としたのです。

最高裁は、「時季変更権が行使できる場合」は、あくまで、「事業の正常な運営が不可」なときのみと限定しました。

ということで、この事件では、社員が有給休暇を取ったとしても、業務には影響がなかったと認定し、認めたのです。

この判例で明らかになったことは、

「有給休暇の取得理由は自由だけど、業の正常な運営を妨げるか否かの判断は現場で判断する」

ということです。

そのため、医院経営や病院経営に支障をきたす場合のみ、時季変更権の行使が可能ということになります。
とすれば、医院や病院の現場で、「どうやって、事業の正常な運営を妨げるか否かの判断をするのか」ということが問題になります。

さらに、これに関する最高裁(電電公社此花電話局事件 昭和57年3月18日)の判例があり、時季変更権が行使できる条件が、明確にされています。

条件【1】 代わりに働ける人の確保が可能なら、時季変更権は行使できない
条件【2】 代わりに働ける人の確保が不可能なら、行使できる

つまり、「医院経営や病院経営で、有給休暇を取る看護師やスタッフの代替が確保できるかどうか」が、判断のポイントとなるのです。

そして、この判例では、就業規則についても注目しています。
この会社の就業規則には「有給休暇の請求は、原則として前々日の勤務終了時まで」と記載してありました。

これに関しては「代替者を探す時間として合理的なもの」と認められたのです。
だから、一般的には2~3日前までの有給休暇の届出ならば、合理的であり、有効に取得できると判断されてしまいます。

一方、突然、朝から電話して有給休暇を申請してきた看護師やスタッフがいれば、その代替者を見つけるのは難しいことが多いので、時季変更権を行使できると言えます。

さらに、看護師やスタッフから、長期で連続の有給休暇を請求された場合には、代替者の確保がより困難になると考えられます。

しかし、現実に、連続で有給休暇を取ることができなければ、遠出で旅行にはいけません。
すべての長期の有給休暇を医院や病院が拒否することは、看護師やスタッフのやる気を下げる結果になります。

そこで、医院や病院の就業規則に、一定日数以上の有給の連続請求の場合には、別途、一定期間以上前に請求することを義務付けておき、シフトが組める余裕を持つべきです。

具体的な、就業規則の条文は以下となります。

第○条 看護師やスタッフが有給休暇を取得するときは、原則として1週間前までに、少なくとも前々日までに所定の手続により会社に届け出なければならない。
ただし、突発的な傷病その他やむを得ない事由により欠勤した場合で、あらかじめ届け出ることが困難であったと会社が承認した場合には、事後の速やかな届出により当該欠勤を有給休暇に振り替えることができる。この承認は医院や病院の裁量に属するものとし、必ず行われるものではない。

2 看護師やスタッフが連続4日以上(所定休日が含まれる場合を含む。)の有給休暇を取得するときは、原則として1ヵ月前までに、少なくとも2週間前までに所定の手続により、会社に届け出なければならない。

ここまで具体的に記載すれば、医院や病院と看護師やスタッフとの間で、誤解が生まれる確率が低くなるでしょう。

有給休暇は社員の権利だけにトラブルになりやすいのですが、看護師やスタッフは時季変更権という医院や病院側の権利を知りません。
結果として、「請求したのに、休ませてくれない」と勘違いし、トラブルに発展することもあります。
過去には、「有給休暇が取れないので、この医院や病院を辞める」という退職理由を見たこともあります。

院長先生からしたら、「そんな理由で、退職をするのか?」と思われるかもしれませんが、看護師やスタッフにとっては、とても大きな問題なのです。

だから、医院や病院の業務運営が正常にできるならば、有給休暇は請求されたとおりに認めていく必要があります。

ただし、業務の運営が滞り、代わりの人がいない場合は、そのことを社員に伝えて、時季変更権を行使しましょう。
医院や病院が絶対にやってはいけないことは

【1】有給休暇を取らせない
【2】合理的理由もなく、時季変更権を使い、有給取得をズラす
【3】有給休暇の取得に関して、しつこく理由を聞く

ことです。

「たかが有給、されど有給」です。

もちろん、「医院経営や病院経営に支障が出るかどうか」には明確な基準がないため、医院や病院と看護師やスタッフの間で、この判断に温度差が出る場合があります。
だからこそ、就業規則などの形式を整えるだけでなく、看護師やスタッフと、日ごろの信頼関係の構築が重要なのです。

わざわざ、有給休暇を取るように制度を作ったのに、結果としてトラブルに発展してしまうならば、意味がありません。
看護師やスタッフには、気持ちよく有給休暇を取ってもらい、やる気を出してもらうことが、医院経営や病院経営を成功させる鍵になるのです。

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