看護師が夜のアルバイトをしていることが発覚したら、処分できるのか?

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2014/12/10
看護師が夜のアルバイトをしていることが発覚したら、処分できるのか?

看護師が夜のアルバイトをしていることが発覚したら、処分できるのか?院長先生から、
「看護師が、終業時間後に、居酒屋でアルバイトをしていることが、判明した。これが、患者に知られたら、医院からの給料が、そんなに低いのかと噂になってしまう。すぐに注意しようと思うが、このままバイトを続けたいと言ってきたら、解雇してもいいのか?」
と相談されたことがあります。

看護師が居酒屋でバイトしていても、患者がそれに気づくことも、たまたま気づいた患者がいても、噂として広がることは、ほとんどないと思います。
ただ、院長先生として心配する気持ちも分かりますし、医院に勤めている看護師であれば、「アルバイト = 二重就職 = 副業」となっています。

では、この副業は、法律的な問題はあるのでしょうか?

実は、医療法で、看護師や社員の副業が禁止されているわけではありません。
医師はアルバイトで、いくつもの医院や病院を掛け持ちしているのが、通常です。
そのため、医院経営や病院経営が、副業で法律違反として罰則を受けることにはなりません。

一方、公務員だけは、

  • 【1】職務に専念する義務
  • 【2】民間企業からの隔離

という理由で、副業が法律で禁止されています。
つまり、国公立病院の医師や看護師、受付の社員は、公務員になりますので、副業は禁止となります。
もしこの法律を破れば、当然に、処分されることになりますし、ニュースになって、医院や病院の名前も公表されてしまうことになります。

実際に、下記が、今年の5月の毎日新聞に掲載されました。

大阪府立母子保健総合医療センター(大阪府和泉市)を運営する地方独立行政法人・府立病院機構は、風俗店でアルバイトをしていた同センターの女性看護師(24)を停職1カ月の懲戒処分にした。

これ以外にも、私は、国公立病院で働く医師でありながら、副業を続けて、何度も懲戒処分受けて、最後は解雇されてしまった医師も知っています。
その医師の副業は、親戚の医院経営を手伝ったということでしたが、懲戒処分を受けた後も、人手不足という理由で、手伝うしかなかったという理由でした。
でも、これは、彼らが公務員という立場であり、どんな理由があろうと、法律を守らなければ、処分されて、周りの知るところになります。

それでは、あなたは、「民間の医院や病院では、副業を禁止してはいけないのか?」と疑問に思うかもしれません。
法律では禁止されていませんが、医院経営や病院経営のリスクを考えて、副業を禁止することはできます。
公務員と同じで、あなたの医院や病院も、看護師や社員に仕事に専念して欲しいと思うのは、当然だからです。

副業を禁止するならば、就業規則に記載する必要があります。

具体的には以下の条文となります。

社員は、以下に掲げる業務専念義務に関する事項を守らなければならない。

  • 医院の事前の許可なく、他医院や他社に雇用されるなど、報酬を得て第三者のために何らかの行為をしないこと。
  • ボランティアなどの公益的行為であっても、医院の勤務のための精力が分散されると認められるときは、医院の事前の許可を得なければならない。

また、副業の禁止に違反した看護師や社員を解雇する場合は上記の条文とは別に、就業規則の懲戒処分の規定を明確にしないといけません。
ただ、就業規則に書くだけで、あとは院長先生のタイミング(副業を続けると主張されて、ムカついたなど)で、その場でいきなり解雇できるわけではありません。

地方の医院や病院で働く看護師や社員の中には、実家が農家で、稲刈りなどの繁忙期に手伝うこともあるでしょう。
夫の体調が悪く、今のままでは生活が苦しいので、終業時間後に、スーパーでレジ打ちのアルバイトをしている人もいるかもしれません。
副業を進んでやりたいという看護師や社員は多くないので、個別の事情も聞かずに、一方的に解雇することはできません。

あくまで、副業が解雇できる理由になる基準は、

  • 【1】労務提供義務
  • 【2】競業避止義務
  • 【3】秘密保持義務

のどれかに違反したときになります。

(1)労務提供義務の違反

これは、副業すると、ただでさえ医院や病院の仕事は立ち仕事で忙しいのに、それが終わったあと、他社で働いていたら、肉体的、精神的に疲労するでしょう。
それが、あなたの医院での業務に影響が出たら、例えば、遅刻が多い、居眠りをするなど、目に余るようであれば、解雇は有効となる可能性が高くなります。

これに関連する判例として、次のものがあります。

<小川建設事件 東京地裁 昭和57年11月>
● 同社の社員がキャバレーの会計係をしていた
● キャバレーの仕事は夜間のため、昼間の業務に支障が出た
● 就業規則の二重就職禁止に違反ということで解雇
● 本人はこれを不服として、裁判所に訴えた

結果は「就業規則の副業禁止による解雇は有効」となりました。
この場合には、業務に支障が出たことが、会社が勝訴した理由でした。
そのため、あなたは、そのような具体的に業務に支障がでている事実があれば、その都度、記録を残しておくとよいでしょう。

特に、医院経営や病院経営では、ちょっとした不注意が命の危険にさらされることもあります。
通常であれば、薬を取り間違えることがなくても、疲れていると、起こることもあります。
まずは、その勤務態度の記録を見せて、副業を止めるように進言し、それでも続けて、態度も変わらなければ、解雇すべきです。

(2)競業避止義務の違反

競業避止は同業である他の医院での副業を禁止することを指します。
ただ、アルバイトの医師であれば、バイトを掛けもちしているかもしれませんが、それは許しているはずです。
一方、事務局長や看護師が、他の医院で働くことは、現実的にはないと思います。
そのため、競業避止義務の違反に関しては、医院や病院は、そこまで気にすることはないはずですが、もしその立場を利用して、自分に利益を還元させるようなことがあれば、解雇すべきです。

これに関連する判例として、次のものがあります。

<東京貨物社事件 東京地裁 平成12年11月>
● ある社員Aが在籍中に別会社の取締役になった
● その別会社はAが在籍する会社と同業
● 会社はその事実をつかみ、就業規則により解雇した
● 社員は不当だと裁判所に訴えた

結果は「解雇は有効」とされたのです。
同じような裁判が、他にもあります。

(3)秘密保持義務の違反

副業により、自社の秘密がもれた場合は、当然、解雇できます。
特に、医院経営や病院経営では、患者の病気だけではなく、名前、住所、年齢、家族構成という情報をカルテなどに保存しています。
医院や病院で働く医師、看護師、社員、全員が、この情報を秘密にしておく義務があります。
この情報を漏らしたら、当然、解雇すべきでしょう。

秘密保持を違反した社員が解雇された事例はかなりたくさん、あります。
しかも、社員側から、「不当として、解雇を撤回して欲しい」という裁判もたくさんあるのです。
ただし、下記の例のように、会社が勝訴となっています。

● 古河鉱業事件 東京高裁 昭和55年2月
● 延岡学園事件 宮崎地裁 平成10年6月
● 甲南学園事件 大阪高裁 平成10年11月

ここでの争点は、漏らしたという事実もありますが、その情報が守るべき秘密に該当するのかどうかも争点となります。
そして、医院や病院が、その情報を漏らさないように注意していたのかも、争点になります。

例えば、患者の情報を紙やデータで、医師や看護師が自宅に持ち帰ることを自由に許していたりしたら、医院にも落ち度があることになります。
院長は、「医院や病院で働く看護師や社員であれば、当然、患者の情報を漏らしてはいけないことは分かるだろう」と思い込んではいけないのです。
棚に鍵を掛けたり、データを持ち帰るときには、「何を、どんな理由で」という申請を出してもらうべきでしょう。

 

話しを元に戻しますが、最初の院長先生の発言のように、
「単に、看護師が夜のバイトをしていた」という事実だけで、解雇することは難しいのです。
正しい手順を踏まずに解雇した場合、不当解雇になる可能性もあります。 
それでも、無条件で副業を許すわけにもいかないことも分かります。

ここは、院長先生として冷静になり、副業をしている理由を確認しましょう。

それをもとに、解決策を話し合うことが重要です。

ちなみに、看護師から、不当解雇として訴えられ、医院が負けた場合には、
【1】看護師の精神的苦痛などに対する損害賠償金
【2】医院に解雇されていなかったとしたら、もらっていたはずの給料
を支払うことになります。

就業規則に違反して、副業していたにも関わらず、院長先生がカッとなって解雇すると、これだけの負担を強いられることになるので、損をするだけだと覚えておきましょう。

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