看護師が「辞める」と言っても、自主的に退職したことにならない

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2013/12/20
看護師が「辞める」と言っても、自主的に退職したことにならない

看護師が「辞める」と言っても、自主的に退職したことにならない5年前に、顧問先の院長先生から、実際に相談されたことです。

もう5年も経つので、公開してもよいと思いますが、その院長先生は、診療時間が終わったあとに、看護師が窓口のスタッフを怒鳴っているのを聞いて、いらいらして怒ってしまいました。

以前から、この看護師がスタッフをバカにしたり、命令口調で仕事を行っていたり、機嫌が悪いと怒鳴り散らしたりするという苦情を、スタッフから院長先生は聞いていました。
ただこの看護師は、院長先生に対してだけは、すごく従順な態度で口ごたえなど一度もありませんでした。

大きな病院や医院ではないので、看護師が怒鳴っている声が聞こえることがあり、その都度、院長先生は注意をしてきました。
それでも、患者さんがいる診察時間に怒鳴ることはなく、きまって朝の診察時間が始まる前、もしくは診察時間が終わった夜でした。だから、その看護師もそれほど感情的に怒っているのではなく、患者さんの迷惑にならない範囲で考えているのだろうと院長先生は考えていました。
さらに看護師としての経験も長く、彼女がいないとできない検査項目もあり、もっとスタッフと仲良くやって欲しいとは思っていました。

院長先生が注意をすれば、1-2週間は看護師も静かになるのですが、忘れたころに、怒鳴り声が聞こえてくるのです。
ところがある日、診察時間が終わるころですが、まだ患者さんがいるときに、看護師がスタッフを怒鳴ったのです。その場にいた、患者さんたちは、びっくりしていました。
その診察時間が終わったあと、院長先生は看護師に対して、自分が切れてしまったのです。

  • 院長先生
    「今まで何回、スタッフを怒鳴るのは止めろと、注意したと思っているんだ! しかも今日は患者さんもいたんだぞ」
  • 看護師
    「別に理由がなく怒っているのではありません。Aさんが失敗するから、注意しているんです。ちゃんと仕事をやってもらえば、怒りません」
  • 院長先生
    「間違いを指摘することは、別に問題ないと思っている。私が言いたいのは、『怒鳴る』必要はないということだ。静かに叱ればよいだろう。お互いに子供じゃないんだから」
  • 看護師
    「怒鳴っても間違うんですから、静かに叱ったら、まったくダメですよ」

いつもは反論してこない看護師の口調に、院長先生はさらに切れて怒鳴ったのです。

  • 院長先生
    「もう、自分の態度を直す気持ちがないなら、辞めてもらう!」
  • 看護師
    「いいですよ。こんな病院は辞めます」

さらに、看護師はスタッフをにらんで、みんなに聞こえるように言ったそうです。

  • 看護師
    「お世話になりました。こんな病院で働きたくないので、辞めます」

そのあとは、診療時間も終わっていることもあり、看護師は着替えて帰ってしまいました。

院長先生はその日、悩みましたが、それほど大きな病院ではなく、検査が少し滞ったとしても、人間関係を大事にする方が、病院経営や医院経営にはプラスになると決心しました。
そのため、院長先生は「看護師に辞表を送ってくるように、明日、連絡してみよう」と考えていました。

ところが、次の朝、院長先生が医院に出勤すると、この看護師は何も無かったように働いていたのです。

院長先生は、スタッフの前で、

「お前は辞めただろう! 二度と来なくてよい!」

とまた怒鳴りました。
看護師は、そのまま医院を出て、戻りませんでした。

しかし、3日目の朝、この看護師はまた何事もなかったように出勤してきたのです。
そこで、院長先生は看護師を呼んで、今度は、冷静に伝えました。

  • 院長先生
    「あなたは、辞めたはずだ。出勤しなくてもいいですよ。今までの給料は、ちゃんと支払いますから、心配せずに。今日をもって、自主退職ということになります」
  • 看護師
    「それでは、自主退職ではなく、院長先生が、辞めたくない私を解雇したということでよろしいでしょうか?」
  • 院長先生
    「あなたは、自分からみんなの前で辞めると宣言したはずですよ」

看護師はその言葉を聞くと、首を横に振ると黙って出て行ったそうです。あとから、院長先生はこの対応で良かったのか気になり、私のところに相談に来たのです。

結論から言いますと、3日目の院長先生の発言が「解雇」の意思表示にあたります。
看護師の自主退職にはなりません。

【1】
院長先生は2日経ったあとに、「冷静」に「解雇」を伝えている

  → 2日間という時間で、院長先生が熟慮したと考えられる

【2】
看護師を院長先生の方から呼び出して伝えている

→ 感情的ではなく、やはり「冷静に」本人に伝える態度で臨んでいる

この2点から、院長先生から「解雇」を通知したことになります。

逆に、初日、2日目の院長先生の発言は、感情的で、冷静な判断を伴っていません。このような意思表示は、「法的に成立しない」のです。

個人医院であれば、院長先生と看護師、医療法人であれば、法人と看護師は雇用契約を結んでいるのです。実際に、契約書がなかったとしても、口頭でも契約は成立しています。

契約は、感情では「法的に」左右されません。

今回の件は、院長先生の「2日間の時間」と「意思を伝える側の冷静さ」が、「解雇」と考える理由になりました。
解雇となれば、当然、医院や病院として、

  • 看護師に対して、1か月分の解雇手当を支給

または、

  • 看護師に対して、1か月後の解雇を通告

のどちらかを、選択することになります。

どんなに医院や病院が主張しても、法的に看護師が自主退職したことにはなりません。

医院経営や病院経営に関わる看護師だけではなく、スタッフであっても専門的知識があり、プライドを持っています。そのため、お互いに衝突することはよくあることです。
そのとき、院長先生が間に入って仲裁したり、上手くコントロールしなければいけないのに、自分もつい感情的になり、

「言い過ぎてしまった・・・」
「口が滑ってしまった」
「言ってはいけないことを・・・」

という反省の弁をよく聞きます。

院長先生だけではありません。医院経営や病院経営の経理や人事を、院長先生の奥さんが取り仕切っていて、看護師やスタッフとつい口論になってしまったという相談も受けます。
ただ、このときの発言は、「法的には効力がない」ことが多いのです。

つまり、法律とは関係のないところで、感情的になることで、トラブルを引き起こしてしまっているのです。

そして、結果的に医院や病院が損をすることになります。
気をつけましょう。

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