医療法人になるときに、個人事業主として看護師や社員に退職金を支払おう

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2017/10/20
医療法人になるときに、個人事業主として看護師や社員に退職金を支払おう

個人事業主である医院や病院を廃業して医療法人を設立する場合には、棚卸資産や固定資産を引き継がせると同時に、看護師や社員も転籍させます。このとき、看護師や社員は個人事業主である院長先生との雇用契約を一度解除して、医療法人と再契約を締結することになります。

そのため、このタイミングで個人事業主の院長先生から、看護師や社員に退職金を支払うことができます。

ただし、個人事業主として退職金を支払う時には、退職金規定を設定しておかないといけません。そのとき必ず、下記の項目を確認してください。

ポイントは「法人成り」を、個人事業主が退職金を支払う事由として記載しておくことです。
このとき、よく2つの質問を受けます。

 

(1) 退職金の必要性について

「そもそも退職金なんて支払う必要があるのか?」「退職金規定を作っている個人事業主の医院なんて、他にはあるのか?」と、院長先生から聞かれることがあります。

私は退職金という制度は、医院経営や病院経営にとっては不可欠なものだと考えます。

医院経営や病院経営は、院長先生に協力して働いてくれる看護師や社員を、どれだけ揃えられるかで、その成否が決まります。どれだけ高額な医療機器を導入しても、どれだけ綺麗な建物を建ててても、それを運営する優秀な看護師や社員がいなければ、まったく意味がありません。

その優秀な看護師や社員ができるだけ長く働いてくれることは、医院経営や病院経営にとって本当にメリットが大きいのです。その長く働いてくれる人にメリットを与える制度としては、退職金がもっとも有効な手段です。しかも、退職金であれば全員を対象にする必要もありません。退職金規定に「正社員として3年以上働いた人から対象とする」などとすれば、特定の人だけに支払うことも可能です。

退職金以外で働く人たちに与えられるメリットとなると、取締役、部長、課長などと出世させるという方法もありますが、医院経営や病院経営ではポストを増やし続けることはできません。また毎年の給料を上げてあげることも1つの手段ですが、退職金は看護師や社員にとってメリットがあります。

それは、社会保険料がかからず、所得税もほとんどゼロになるぐらい税率が低いのです。どうせ同じ金額を支払うのであれば、看護師や社員の手取りが多い方がよいはずです。

 

(2) 医療法人への引継ぎ

「個人事業主を廃業するときには支払わずに、そのまま医療法人に引き継がせることはできないのか?」と、院長先生から質問を受けることがあります。

結論から言うと、医療法人への引継ぎはできません。

これを聞くと、法人税基本通達9-2-39の規定を持ち出してくる人がいます。そこには、「個人事業を引き継いで設立された法人が個人事業当時から引き続き在職する使用人の退職給与を支給した場合において、その退職が設立後相当期間経過後に行われたものであるときは、その支給した退職給与の額を損金の額に算入する」と記載されているためです。ただこの中で「設立後相当期間経過後に行われたもの」ということがポイントとなります。

これは、個人事業主である院長先生が所得税の更正の請求ができない期間経過後と読み替えます。

個人事業としての医院や病院を廃業すると、翌年の3月15日までに所得税の確定申告が必要となりなります。1月に廃業したとしても、8月に廃業したとしても、12月に廃業したとしても、どれも申告期限は同じです。そして、更正の請求ができる期間は、その翌日から5年間となります。

もっと具体的に、更正の請求とは、どのような手続きになるのでしょうか?
まず大前提として、個人事業主の時代の看護師や社員への退職金の支払いを医療法人が引き継いだとします。次に医療法人を設立してから、所得税の更正の請求ができる期間(所得税の申告期限の翌日から5年以内)に看護師や社員が1人でも辞めて、かつ退職金を支払うとします。

その場合には医療法人の経費とはならず、過去に遡って個人事業主の確定申告を修正して、余計に支払った所得税を還付してもらってくださいという意味なのです。もし所得税の更正の請求の期間を過ぎたら、所得税を還付してもらうことができないため、医療法人の経費としてもよいということになります。

そもそも看護師や社員が医療法人に5年以上も在籍するかも分かりません。

もし5年以内ならば、看護師や社員が医療法人を辞めるたびに、所得税の更正の請求を行う必要があるのです。

だから、個人事業主としての医院や病院を廃業するときに、看護師や社員に対して退職金を支払って欲しいのです。

 

(3) 原資を貯めておく

「個人事業主を廃業するときに退職金を支払うべきことは理解したが、その元手となるお金はどうやって貯めればよいのか?」という質問も、院長先生から受けます。

これは個人事業主である院長先生が契約者となり、被保険者を看護師や従業員、生命保険の受取人を院長として生命保険に加入すれば、医療法人と同様に保険料が必要経費となります。
個人事業主としての医院や病院を廃業するときに、契約者である院長先生が解約して外部に貯めた生命保険金を受け取り、それを原資にして退職金として支払う方法です。

受け取った生命保険金は個人事業主の雑収入となりますが、退職金を支払うので所得税が増えることはありません。

この方法を使えば、個人事業主のときに保険料が経費になっていた分、所得税が節税できるため、資金効率はよくなります。

それだけではありません。
個人事業主の最後の事業年度に看護師や従業員に多額の退職金を支払ったら、通常は赤字になります。個人事業主の赤字は通常、翌年3年間は繰り越して、将来の黒字と通算できます。ところが、その年で個人事業主は廃業するのですから、赤字は切り捨てになってしまうのです。
生命保険金を使えば、それも防ぐことができるのです。

ただ注意すべきことがあります。
それは医療法人が生命保険に加入するときには、契約者と受取人を医療法人として、被保険者を院長先生に設定することができます。ところが、個人事業主の場合に、被保険者を院長先生とするとそれは医院や病院の経費とは認められません。

つまり、院長先生が個人で生命保険に加入したとみなされて、生活費となってしまうのです。
被保険者を院長先生の奥様としても同様です。そのため、必ず被保険者は看護師や従業員にして生命保険に加入してください。

結果、看護師や従業員が病気になった場合の保証も付けることができて、福利厚生になると思います。なお、被保険者を看護師や従業員にして、保険金の受取人を看護師や従業員の遺族としても福利厚生費として、個人事業の医院や病院の経費になります。

 

 

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