医療法人が、看護師や社員の社宅を借上げてあげると、どんなメリットがあるのか?

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2015/12/20
医療法人が、看護師や社員の社宅を借上げてあげると、どんなメリットがあるのか?

医療法人が、看護師や社員の社宅を借上げてあげると、どんなメリットがあるのか?

医療法人が、福利厚生の一環として、医師や看護師の社宅を借上げることがあります。

この社宅に関して、すべて医療法人が賃料を支払ってあげてもよいのか?
一部は、医師や看護師に支払ってもらうべきなのか?
医療法人の理事に対しても、同じようなことを行っても問題ないのか?

このような疑問が沸いてきます。

 

(1)診療のために必要な社宅

医療法人の理事ではない医師や看護師で、通常の勤務時間外においても勤務が、どうしても必要になることがあります。

例えば、診察時間が、夜の11時までやっている医院や病院もあります。
また、訪問診療を行っていて、契約している介護施設から救急医療まで任されている場合には、24時間体制になっていることもあります。

これらに対応するためには、医師や看護師が医院や病院の近くで宿泊できる部屋を、必然的に用意しなければいけません。

このときには、医療法人が、この社宅の賃料を全額負担したとしても、医師や看護師が便宜を図ってもらっているわけではなく、1円も税金はかかりません。
つまり、医療法人では経費に計上でき、医師や看護師も1円も支払わず、所得税がかかることもないのです。

 

なお、24時間体制の医院病院では、宿直していない医師や看護師に、緊急時に備えて自宅待機させることもあります。
医療法人として時間を拘束するため、給料ではないですが、宿直手当を支払うことがあります。
実際には、ほとんど呼ばれることはなく、一般的に軽微な勤務と言えるため、この宿泊手当は給料となり、所得税がかかります。

 

(2)医師や看護師の社宅

理事ではない常勤の医師や看護師に、医療法人が社宅を提供することがあります。
特に、分院を出していると、本店から医師や看護師を派遣することも多く、周りの社宅も一緒に用意することがよくあります。

このとき、医療法人がすべて負担すると、50%が給料とみなされて、所得税がかかります。
つまり、50%を医師や看護師から徴収すれば、問題ないことになります。

あなたが、
「賃料の50%って、ちょっと高くないか?」
と思ったら、他の計算方法も選択できます。

  • ① その年度における社宅の建物の固定資産税の課税標準額×0.2%
  • ② 12円×その社宅の総床面積(㎡)÷3.3(㎡)
  • ③ その年度における社宅の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%

通常の月額賃料= ① + ② + ③

これが通常の月額賃料になるので、この50%を医師や看護師から徴収すれば、よいことになります。
実際に、計算してみると、実際の月額賃料の10%程度になりますので、こちらを選択した方が、絶対的に得です。

ただ、固定資産税の課税標準額を調べなければならず、社宅がある市区町村の窓口に行く必要があります。
社宅の大家さん(所有者)でなくても、借りている医療法人であれば、課税標準額を見ることができます。

 

この医療法人が借上げる社宅の制度は、医師や看護師にとっては、大きなメリットになります。

例えば、月額100万円をもらっている医師で、月額15万円の社宅に入ったとします。
賃料の90%に当たる月額135千円を給料から差し引いて、医療法人が代わりに、賃料として支払います。
すると、月額100万円、年収1200万円のときに、この医師は、約250万円の所得税を支払います。

一方、医療法人が負担する社宅の賃料分を差し引いた月額865千円で、年収1038万円になれば、この医師は、約190万円の所得税に下がります。
これだけで、60万円もの所得税の節税が可能なのです。

 

ただ、この社宅制度を導入するときには、1つだけ注意することがあります。
それは、医療法人が借上げるので、敷金を預け入れることになるのですが、医師や看護師が転職するときには、社宅を引き払います。
部屋の原状回復費として、敷金が使われるのですが、これは住んでいた医師や看護師が負担すべきです。

ところが、もう辞める医師や看護師が、素直に払わないこともあり、もめているケースもあります。
そのため、医療法人に2年以上、もしくは3年以上勤務した人だけ、分院に派遣された人だけ、など一定の基準で、社宅制度は運用した方がよいでしょう。

 

(3)理事の社宅

医療法人が、理事の社宅を借上げたときには、賃料の10%だけを負担すればよいという訳にはいきません。
原則は、やはり賃料の50%までを医療法人が負担することですが、他の計算方法も選択できます。

  • ① その年度の社宅の建物の固定資産税の課税標準額×12%(木造以外は10%)
  • ② その年度の社宅の敷地の固定資産税の課税標準額×6%

理事が負担すべき社宅の賃料=① + ②

今回は、「理事が負担すべき社宅の賃料」以上の賃料を、医療法人が徴収することが必要です。
それ以外は、役員報酬とみなされて、所得税がかかってしまいます。

これで計算してみると、予想以上に高く、実際の賃料の50%とあまり変わらないということも多いでしょう。
なお、理事の社宅は、次のような豪華社宅であると、そもそも医療法人での借上げ自体が認められません。

  • ① 建物の床面積が240㎡以上のもの
  • ② プール等が設置されているもの
  • ③ 理事の個人の嗜好が大きく反映した設備があるもの

これは例示なので、異様に高い家具が設置されていたり、巨大なシャンデリアが吊るされていると、豪華社宅と認定されます。
税法上もリスクがあるだけではなく、医療法で、理事に対する利益供与とみなされると、指導対象になるので、豪華社宅を医療法人で借上げることは、止めておくべきです。

 

次に、院長先生の社宅を借上げたときに、その一部を医療法人の事務所や応接室として使っていることがあります。
この場合には、理事が負担すべき社宅の賃料の70%を徴収していれば、よいことになります。
医療法人の受付の収納がパンクして、レセプトや消耗品の保管を社宅で代用していることもあるはずです。

 

最後に、医療法人が理事に対して、アパートやマンションではなく、一軒屋を社宅として借りてあげていることがあります。
社宅の床面積が132㎡(木造以外の一軒屋ならば、99㎡)以下であれば、理事ではない医師や看護師に対する社宅と同じ計算方法の賃料を徴収すればよいことになります。

これらの社宅の制度を導入すると、所得税が節税できることで、医師や看護師の手取りが増えて、喜ばれます。

医療法人の総務部の担当者の作業は煩雑にはなりますが、それ以上のメリットがあると考えます。

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