医師の業務委託の報酬を、株式会社の売上として入金させることはできるのか? ②

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2018/02/20
医師の業務委託の報酬を、株式会社の売上として入金させることはできるのか? ②

医師が自分で株式会社を設立して代表取締役となり、アルバイトで勤務する医院や病院から外注費を受け取ることができるかという問いの続きのブログになります。

まずは医師が雑誌の原稿料やセミナーの講師代、書籍の印税などの収入があれば、これを株式会社の売上にすることは、まったく問題がありません。このとき、医師から下記のような質問を受けることがあります。

「個人事業主の収入(雑所得)にしても、株式会社の売上にしても、かかった経費を差し引いた利益に税金がかかるのは同じでしょ。所得税率よりも、法人税率の方が低いのは知っているので、その分だけは得するかもしれないけど」

法人税率は利益が800万円までは約23%の実効税率となっているため、かなり低い金額です。

個人で投資用の不動産を購入したり、証券口座を開いて株へ投資すると、給与に対して高い所得税率を支払った残りのお金を使うしかないため、資金効率が悪いのです。

所得税の税率は所得が900万円を超えると43%、1800万円を超えると50%となります。つまり、給与からの手取りは半分となり、そこから投資するしかないのです。それならば、会社で利益を出して23%の法人税を支払い、残った77%で投資した方が得なのは当然です。

借金の返済でも同じです。
医師が個人で借金をして投資している不動産があれば、それを株式会社で借り換えて所有権を移転させることを考えてみましょう。

医師個人が50%の所得税を支払って元本返済するよりも、会社が利益から23%の法人税を支払って元本返済する方が、断然お得なのは明らかです。元本に利子がつくとすれば、元本を早く返済することが、どれだけ特になるのかも理解できるはずです。だから先ほどの医師からの質問は間違っていません。

ところが、株式会社の売上にした方がよい理由は、他にもあるのです。
実は、個人事業主と株式会社では、計上できる経費の性格が違ってくるのです。そもそも、個人事業主の所得税には必要経費という考え方があります。必要経費とは、「収入を得るために直接必要な売上原価や販売費及び管理費のこと」と定義されています。つまり、収入を得るために「直接」必要な費用と判断されない限り、経費としては計上できないのです。

例えば、すでに開業して医院経営や病院経営をやっている友人の医師と居酒屋に行ったとします。そこで、あなたは自分自身の医院開業についての相談をしました。この飲食代が本当に事業に「直接」必要なものでない限りは、経費となりません。税務調査の場面で、わざわざ食事をしながら話し合う内容だったのか、その結果、どの収入が実際にどれだけ上がったのかを、担当官から問われるのです。

先日の必要経費に関する東京地裁の判決でも、不動産賃貸業を行っていた個人事業主が経費として計上された車両の維持費用、インターネット利用料、電話代などが事業と「直接的」な関連がないとして経費には認められないとされました。まだあなたが医院開業していないのに、友人に医院開業の相談をしたとしても、収入に直接関係するものとは言えません。結果、経費としては認められないというのが結論です。

一方、法人税には、売上を得るために「直接」必要な費用でなければいけないという規定がありません。

というのも、株式会社は営利を目的として設立されているため、利益を稼がない行為はそもそも行わないということが大前提だからです。

このことから法人税法では「支出の目的、相手、方法」が分かれば、経費として認めると定義されているのです。雑誌の原稿料であれば、そのネタを集めるために居酒屋で相談することもあり、それが会社の売上につながらなかったとしても、飲食費を経費として計上できることを意味します。もちろん、会社の仕事とはまったく関係がない同窓会の飲食費、地元の野球部での飲食費などは経費にはなりませんが、個人事業主に比べると、かなり認められる範囲が広くなるのです。

これを聞けば、株式会社を設立して、アルバイト先の医院や病院と業務委託契約を締結して、外注費として売上を上げるのが一番よいと考えるでしょう。ところが、株式会社が診療行為による売上を上げることはできません。それは医療法人にしか許されていない行為なのです。

それならば次に考えるのは、株式会社が医師や歯科医師を医院や病院に派遣する方法です。これならば、株式会社は労働の対価である派遣を医院や病院から受け取るだけで、診療行為の報酬ではありません。ところが、労働派遣事業については、下記のように規定されています。

あくまで株式会社が派遣できるのは、医師、歯科医師、看護師の紹介予定派遣だけで、一般的な派遣は禁止されているのです。やはり診察、手術、検査などは医師、または医療法人しか行えないのです。

「それならば、最初から株式会社が医院や病院と業務委託契約を締結することなんて無理じゃないか」と、あなたは言うかもしれません。

でも上記の規定をよく読むと、「医師、歯科医師の業務について」派遣できないとしているのです。ただ裏を返せば、診察、手術、検査以外であれば、株式会社でも行えることを指します。つまり、株式会社が、医院や病院と診察、手術、検査以外の業務委託契約を締結することはできるのです。

例えば、医院や病院の看護師や受付の従業員を教育したり、医療機器の選定を指示したり、医院経営や病院経営全般について助言する業務は医師としてではなく、コンサルタントとしての業務となります。そのため、診察、手術、検査などの行為に関する給与と、それ以外の業務委託の報酬(外注費)を分けて、医院や病院と契約すればよいことになります。

すべての医院や病院が2つの契約を締結してくれるはずはありません。というのも、コンサルタント業務を行っていなければ、業務委託契約の締結は難しいでしょう。

ただ実態として指導も一緒にしているのであれば、2つの契約に分けることが可能です。「収入を2つに分けると、株式会社の売上としては500万円ぐらいにしかならない。これでは節税にならないのでは?」と聞いてくる医師もいます。

確かに、500万円程度の売上ですと節税対策にはならないかもしれません。

それでも将来、医院開業したときに、この株式会社はMS法人として使えます。

しかも売上が少ないながらも計上され、利益も出ている実績があれば、新規の設立法人に比べて銀行からもお金が借りやすくなります。

株式会社を設立する手続きなどが面倒ではないかと悩んでいる医師もいます。でも悩まずに、まずは株式会社を設立することをお勧めします。煩雑な手続きや面倒なことはほとんどありませんし、節税できて将来の医院開業にも役立つことをやらない手はありません。

 

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