勤務医と医院との関係は、雇用契約なのか、委託契約なのか? ②

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2017/04/20
勤務医と医院との関係は、雇用契約なのか、委託契約なのか? ②

勤務医と医院との関係は、雇用契約なのか、委託契約なのか? ②

前回、医院や病院と勤務医との間での契約が、雇用契約なのか、委託契約なのかで、お互いの税金が変わることを説明しました。ただ、委託契約になることは、どちらにとってもメリットがありました。

ところが、労働基準法から考えてみると、医院や病院と勤務医の利益が相反することになります。

勤務医と医院との関係は、雇用契約なのか、委託契約なのか? ②

労働基準法は、あくまで雇用された社員を保護する法律です。もちろん、雇用契約を締結していれば、勤務医も含まれます。もし実態は雇用契約であるのに、委託契約を締結しただけで適用が受けられないとなると、社員にとってはデメリットです。
勤務医であったとしても、医院や病院とはある程度対等な立場とはいえ、最初の交渉のときに、「委託契約で締結して欲しい」と言われたら、断りにくい立場です。そこで、労働基準法が適用になるかどうかは契約書の形式ではなく、実態をみて判断することになっています。

医院や病院としては、雇用契約ではないことで、下記のメリットがあります。

勤務医と医院との関係は、雇用契約なのか、委託契約なのか? ②

なお医院や病院にとってのデメリットが1つだけあります。
それは、同じ仕事をしてもらったとしても、
「勤務医の給与 < 委託先としての報酬」
となる場合がほとんどということです。
それでも、残業代や社会保険料を負担しないメリットを考えれば、デメリットはカバーできるはずです。

また、雇用契約であれば、医院や病院からの命令に対して勤務医は拒否できないが、委託契約であれば、勤務医から命令を拒否されることもあるという指摘もあります。ただ現実問題として、医院や病院の院長先生から勤務医に命令があった場合、それを拒否できることはまずないと思います。そのため、医院や病院にとって、その点はデメリットにならないでしょう。それに、勤務医に診療行為以外の雑用を行うように指示することは少なく、そもそも拒否する場面がないかもしれません。

実際に、医院や病院が勤務医とは委託契約で締結して、外注先と認識していても、勤務医が労働基準監督署に飛び込んだことで、「委託先 → 社員」とされてしまうこともあります。勤務医でなくても、看護師や受付の社員が「残業代が支払われない」などで不満があり、飛び込んだことで、労働基準監督署の調査が入り、結果として勤務医との契約に関しても指摘されてしまうことあります。

勤務医と医院との関係は、雇用契約なのか、委託契約なのか? ②

(2)の社会保険料に関しては、過去に遡って支払うことになれば、その期日が区切られてしまいます。その期日を過ぎれば、延滞金がかかってしまいます。
そのため、委託契約であれば、契約書などの形式だけではなく、実態からも判断されるようにすべきです。

もともと、医院と病院側と勤務医側で、委託契約と認識しているから大丈夫という意見もあります。ただ最近は在宅医療も増えてきているため、注意が必要です。

というのも、雇用契約であれば労災の申請ができるのですが、委託契約の場合には労災の申請ができません。

在宅医療では車での移動がほとんどです。
自分がどれほど気を付けても、他の車の不注意で、ぶつけられることは避けられません。事故があったときに、委託契約の場合には、勤務医は自己負担になるのです。実際に、労災が申請できなかった有名な事件があります。

旭紙業事件 最高裁 平成8年11月28日 判決

勤務医と医院との関係は、雇用契約なのか、委託契約なのか? ②

ということで、この裁判は自分のトラックを持ち込んだ運転手が労働者に当たるのかを判断した初めての最高裁判決となりました。
結果的に、労災は申請できず、労働者敗訴の判決です。
勤務医と比較すると、同じように医院や病院の指示のもと、診療行為を行うスケジュールは決められていたとしても、それ以外は自由に行動できる点では同じです。

それに、そもそも医院や病院と勤務医が、実態面から委託契約を構成させるようにしているならば、在宅医療に従事しているときに事故に合ったとしても労災は申請できないでしょう。

医院や病院は、メリットとデメリットをよく話し合った上で、雇用契約にすべきなのか、委託契約にすべきなのか、勤務医と決めるべきです。

もし委託契約にして、かつ在宅医療に関わるならば、勤務医は自分で民間の生命保険に加入しておくなど、保全もしておきましょう。

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