タイムカードを押さずに、ずっと残っている看護師がいるときは、どうすればよいか?

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2016/05/20
タイムカードを押さずに、ずっと残っている看護師がいるときは、どうすればよいか?

タイムカードを押さずに、ずっと残っている看護師がいるときは、どうすればよいか?

医院や病院では、タイムカードを使って、出社と退社を管理していることが多いはずです。
このとき、出社の時刻はよいとしても、退社の時刻が問題になることがあります。

① 医院や病院の診療も、受付の仕事も終わっている。(並んでいる患者はいない)
② 着替え室で話をしていて、退社のタイムカードを押さない看護師や社員がいる。
③ 院長先生から、タイムカードを押してから、着替えるように指示する。
④ 1ヶ月ぐらいは改善されるが、そのあとは、忘れてしまう。
⑤ 院長先生も、いちいち注意するのは面倒なので、黙認する。
⑥ 子供の迎えなどで、急いで帰る看護師や社員から、不公平だという不満が出る。

医院や病院において、「タイムカードの打刻時間」と「実際の仕事の終了の時刻」が、かい離していると、問題です。 

タイムカードで管理していれば、出社と退社は、打刻されて、自動的に印字されます。
通常、その打刻は、看護師や社員が自ら行うので、実際の仕事が終わった時間と、多少の違うことがあっても、やむを得ません。

もっと具体的に、院長先生から、「タイムカードの打刻時間と、実際の終業時刻の乖離は、どのくらいまで、許容されるのか?」と質問されることもあります。

これに関しては、判例で「30分程度は、退社するための猶予時間」とされています。

つまり、30分程度であれば、実際の終了時間で残業代を支払えばよいのです。
ところが、これ以上になってくると、許容される範囲ではなくなり、タイムカードの打刻をもとに、残業代を支払う必要が出てきます。
それでも、医院や病院としては、「実際に仕事が終了した時刻で、給料を支払いたい」と考えるのが、普通です。
医院経営や病院経営としても、無駄な残業代を支払わない方が、利益は大きくなります。
それに、正直にタイムカードを押している看護師と、いい加減にタイムカードを押している看護師がいる場合、後者の方に残業代を多く支払うとすれば、公平ではありません。

ところが、このタイムカードの時刻で、争った裁判があります。

<日本コンベンションサービス事件 平成12年6月 大阪地裁>

  • 退職した社員が、在職中の未払いの残業代を請求した。
  • 「タイムカードで計算した残業代 > 実際の残業代」となっていた。
  • 会社は「実際の残業代」を支給していると主張し、請求に応じなかった。
  • 退職した社員は、裁判所に「タイムカードで計算した残業代」の支払いを訴えた。

 

裁判所の判断は、下記となります。

  • 「タイムカードの内容 = 実際の労働時間」と推定されるので、未払い残業代はある。
  • 特別の立証がなければ、タイムカードの時間で、残業代を計算すべき。

つまり、会社が裁判に負けたのです。

 

ということで、タイムカードの時刻が、実際の終業時刻よりも遅い場合でも、医院や病院が「残業をしていない証明」をしなければ、支払うことになるのです。

 

例えば、私用、親睦会への参加、同好会活動、労働組合の活動などをしていたと、医院や病院が把握して、証明する必要があるのです。
それ以外でも、医院や病院に労働基準監督署の調査があった場合でも、同じように、「形式的なタイムカードの時間」で残業代が計算されることになります。

院長先生が、「注意したけれど、看護師や社員が耳を傾けてくれなかった・・・」と主張するだけでは、負けてしまうのです。

しかし、現実的には、「看護師や社員が、仕事終了後にダラダラしていて、打刻時間が遅くなった」と証明するのは、無理でしょう。

そこで、どうしても、看護師のタイムカードの打刻の時間が改善されない場合には、下記の対策の方法もあります。

① タイムカードを廃止する。
② 看護師や社員が使用するパソコンのログイン、ログオフで、労働時間を管理する。

実際に、私の顧問先の医院や病院でも、看護師と社員を合せて10名程度でしたが、この方法を導入しました。
すでに5名の看護師や社員はパソコンを使っていましたが、それ以外の看護師と社員には、タブレット型のパソコンを与えました。
コスト的には、1台3万円だったので、合計で15万円程度でした。

 

これにより、仕事の終了時刻は、「パソコンのログオフ時刻」となり、業務終了後に医院や病院にいても、パソコンがオフになっていれば、残業代は発生しないことになりました。

 

結局、今まで支払っていた残業代に比べて、10%も圧縮されたことで、医院経営や病院経営の利益は改善されたのです。
逆に言えば、今まで、無駄な残業代を支払っていたことになります。
何より、正直にタイムカードを押していた看護師や社員にとってみれば、公平な扱いをされたことで、不満も減りました。

実際に、労働基準監督署の調査でも、このパソコンのログイン、ログオフの時刻を見せれば、問題はありません。
つまり、これが残業代を計算する「根拠として有効」ということですし、その判決もあります。

  • 管理職であった社員が未払い残業を請求した。
  • 会社は、タイムカードを導入していなかった。
  • 会社は「管理職」のため、残業代は不要と判断していた。
  • 管理職であった社員は、裁判所に残業代を支払うように、訴えた。

 

裁判所の判断は、下記となります。

  • 社員は管理職でないので、残業代は必要である。
  • 「パソコンのログイン、ログオフの時間 = 労働時間」とした。

 

会社は、残業代を支払うことにはなりましたが、パソコンの時間で計算できたのです。

また先ほどのタブレット型のパソコンを渡した医院では、毎日、ログオフする前に、院長先生に、今日の仕事の内容、または良かったこと、悪かったことを、メールするようにしました。
それにより、患者とのトラブルや社員同士の関係なども、分かるようになったのです。

それでも、医院や病院の場合、看護師や社員に、タブレット型のパソコンでも渡しても、それを使う機会がないということもあるでしょう。

 

その場合には、残業をするときには、事前申請の制度を導入するという方法もあります。

 

これであれば、「事前の申請がされていない」にも関わらず、「タイムカードの打刻時間が、実際の業務終了時刻と乖離していた」としても、残業代は発生しません。
つまり、タイムカードでの推定は行われなくなるのです。

看護師や社員1人に、パソコンを1台貸与することができない場合には、事前申請の制度の導入を検討しましょう。

 

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