看護師から、「退職理由を、医院からの解雇にして欲しい」と頼まれた

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2014/08/30
看護師から、「退職理由を、医院からの解雇にして欲しい」と頼まれた

看護師から、「退職理由を、医院からの解雇にして欲しい」と頼まれた看護師が医院を辞めるときに、
「退職理由を自己都合ではなく、解雇ということにできませんか?」
と依頼される場合があります。

具体的な手続きとしては、
「離職票の退職理由の欄に『解雇』と記載して欲しい」
ということです。

これは退職理由により、違いがあるからです。

自己都合で、看護師が辞めた場合

  • 【1】失業保険をもらえるまでに、3ヶ月以上かかる
  • 【2】失業保険をもらえる期間が、解雇よりも短い
  • 【3】退職金が、解雇の場合よりも低いことがある(就業規則による)
  • 【4】即日に会社を辞めても、解雇でなければ、解雇予告手当はもらえない

特に、【2】に関しては、例えば、35歳で10年間も医院に働いていた看護師が解雇という理由になれば、180日も失業保険がもらえます。
もし自己都合となれば、半分の90日となります。

これだけでも看護師にとっては、解雇はかなりメリットがあります。

ということで、解雇で看護師が辞めた場合

  • 【1】失業保険をすぐにもらえる
  • 【2】失業保険のもらえる期間が長い
  • 【3】退職金が自己都合の場合より、多くもらえることもある(就業規則による)
  • 【4】即日に会社を辞める場合、解雇予告手当がもらえる

看護師にとっては、解雇で辞めると、先ほどの失業保険以外にも、有利な条件がたくさんあるのです。
だから、本当は自己都合で辞めるのだけど、「解雇にしてほしい」と依頼してくるのです。

10年も働いてくれた看護師から頼まれたら、院長としては、それぐらいやってあげてもよいかなと思うかもしれません。

ただ、ウソで解雇にすることは、絶対にやってはいけないことになります。

看護師が医院を辞めていく理由は、今働いている職場が嫌で、他の医院に転職したいという理由ばかりではありません。
看護師は女性が多いため、「結婚、夫の転勤、出産、子育て、親の介護」などで、現在の医院で働きたいけれど、仕方がなく辞めていくことも多いのです。

とすると、院長としては、辞めていく看護師の生活を心配して、頼みを聞いてあげたい気持ちもあります。

ただここで、もし実態と違うウソで、解雇としてしまうと、あとで医院経営や病院経営にとって大きなリスクを負うことになるのです。

それは、
【1】離職票の虚偽記載
【2】解雇予告手当の請求権が発生する
というリスクです。

まず【1】ですが、不正受給が判明した場合には、看護師が受け取った額を返還し、さらに不正受給額の2倍の額を払わなければなりません。
つまり、辞めた看護師には、3倍返しのリスクがあるのです。

院長は、これは辞めていった看護師の問題だろうと考えてはいけません。
あとで辞めた看護師が、これを支払いたくないと考えて、医院に責任があると主張するかもしれません。

そして、医院で働く看護師や社員の数は多くありません。
1人の看護師が、「院長に頼んだら、OKにしてくれた」と他の看護師や社員にもらせば、それは全員に確実に知れ渡ります。

次に辞める看護師や社員も、「自分も解雇にしてもらおう」と、お願いしてくるでしょう。

何度も言いますが、本人たちにとっては、メリットが大きいのです。
とすれば、1人の不正受給が発覚すると、同時に他の看護師や社員の不正受給も同時に発覚すると考えるべきです。

とすれば、退職した看護師や社員の不正受給がバレるというリスクを、ずっと追いながら、医院経営や病院経営を行うことになります。

しかも不正受給とはよい響きではありません。周りの住民にまで、そのことが知れ渡れば、患者を減らしてしまう結果にもなります。

 

次に、【2】についてです。
実態は、「本人の依頼で、しかも院長が心配した結果」であったとしても、「形式上は」解雇となっています。
その看護師の離職票の退職理由の欄にも「解雇」と記載されているのです。
とすれば、看護師は、解雇予告手当をもらえる権利があることになります。

あとで、もし看護師がその離職票を持って、労働基準監督署に持ち込めば、
「医院は、1か月分の給料相当の解雇予告手当を、看護師に支払いなさい」
と言われてしまうのです。
これは、法律的に勝てる話ではありません。

どちらも、あとで看護師が裏切ることを前提にしています。
「いや、あの子は、大丈夫」と、理由もなく自信を持って主張する院長もいますが、実際に、ウソの解雇がバレて、大変なことになっている医院もあるのです。
その看護師に会っても、別に悪い感じではありませんし、そんな裏切るような性格にも思えません。それでも、結果的に、その医院ともめ続けているのです。

医院経営や病院経営のリスクを防ぐために、退職していく看護師や社員に対して、院長は情には流されず、正しいことを行いましょう。

もし退職について医院の意向が多く含まれる場合は、その旨を退職理由の欄に記載することもできます。
この場合、単なる自己都合とは異なり、看護師本人が「特定受給者」に認定されることになります。

特定受給者とは、「解雇と同じ条件」で失業保険がもらえる制度です。

とすれば、無理やり、解雇という理由にこだわる必要はないのです。
もちろん、本当に自己都合であれば、特定受給者でもなく、「自己都合として」辞めてもらってください。
それが、当然のことだからです。

 

なお、雇用に関する助成金をもらっている医院は、「解雇者」を出した場合、助成金がストップされてしまうことがあります。
医院の看護師はプロであり、手に職があるので、転職ができる職業です。

医院は工場などと違って、どこの地域でも、同じ医療サービスを患者に提供しているので、やることが大きく変わりません。
東京で働いていたところ、夫の転勤で大阪について行ったとしても、周りの医院で働くことができるはずです。

それでも、看護師は新しい土地で、働ける医院が見つけられるのかという不安を持つかもしれません。だから、失業保険を長くもらいたいという看護師の気持ちも分かります。

院長が、その気持ちを理解したとしても、辞めていく看護師のことよりも、医院で働いている看護師や社員のことを考えましょう。

医院経営や病院経営で、辞めていく看護師のリスクを負って、結果的にがんばって働いてくれている看護師や社員、それに患者にまで迷惑をかけていたら、本末転倒です。
院長が情に厚いことはよいことですが、不正はいけません。

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