医院や病院が移転するとき、どこまで賃貸物件の原状回復義務があるのか?

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クエスチョン医院や病院が移転するとき、どこまで賃貸物件の原状回復義務があるのか?

アンサー医院経営や病院経営では、どうしても建物の大きさで、患者の数が限られてしまいます。また、ビルが古いと通信回線のスピードが遅いこともあります。医院経営や病院経営では、画像の送受信も多く、それによって、困ることもあるようです。そこで、もっと診察室を拡張するため、または駅前により新しいビルができると、そちらに移転することがあります。

このとき、今までの医院経営や病院経営を行ってきた場所の原状回復義務が問題となります。

まず、「原状回復」という文字を見て、どのように感じますか?漢字の意味的には、借りたときの状態に戻すと読めませんか?ところが、賃貸借契約書で、「原状回復」と書いてあるのは、そのような意味ではありません。「損害賠償」と同じ意味で使われているのです。

そもそも、建物を賃貸していると、3つの損耗が発生します。

  • 経年変化・・・建物や給排水設備等の自然的な劣化・損耗等
  • 通常損耗・・・医院や病院の通常の使用により生じる損耗等
  • 特別損耗・・・医院や病院の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等

このとき、医院や病院が原状回復しなければいけないのは、特別損耗の部分だけです。

原則、経年変化や通常損耗は原状回復する必要がありません。医院や病院に患者がたくさん来ることで、床や壁が汚れていても、通常の使用ならばよいということです。そもそも、住居を貸しているわけではなく、毎日、不特定多数の人が出入りすることは、大家も理解して貸しているのです。もっと簡単に言えば、経年変化や通常損耗の部分まで、原状回復してしまうと、建物の価値が上がってしまい、原状回復の範囲を超えてしまうのです。

ところが、「原則」と書いたからには、「例外」があります。それは、下記の2点です。

賃貸借の目的と違う使い方をした場合

そもそも、医院経営や病院経営を行うつもりではなく借りていた場合、賃貸借契約書の記載内容とは違う使い方なので、通常損耗も認められません。よくある事例が、住居としてマンションを貸したのに、知らない間に、事務所として使われていた場合などです。ただ、医院経営や病院経営は特殊なので、別の利用目的で借りた物件を、医院や病院に改造することは考えられません。

事業用での賃貸借契約書の特約

問題は、こちらです。実は、特別損耗だけを原状回復すればよいというのは、一般消費者保護の観点からの判例です。つまり、住居として利用する場合には、借主に対して、あまりに多くの負担を押し付けても、それは無効になるということです。

ということは、事業者である医院や病院が借りた場合には、一般消費者ではないため、賃貸借契約書に、特約がついていると、それに従う必要があるのです。

賃貸借契約書に、退出時のハウスクリーニング、全面の壁紙の張替え、床の補修、給排水設備の入替えなどは、すべて賃借人の負担とすると、具体的に書かれていると、医院や病院で使っていたならば、それに従うことになります。

退出時に、そんなことを聞いていないと主張したとしても、賃貸借契約書に記載されていれば、通用しません。もちろん、賃貸借契約書に具体的ではなく、単なる「原状回復義務」や「借りたときとまったく同じ状態にして」と書かれているだけならば、医院や病院は特別損耗部分だけ回復させればよいことになります。

最初に、医院開業するときには、やる気もあり、ここで、がんばるという気持ちになっているため、退出するときのことなど、気にしないかもしれません。ただ、借りた場所が、自分のものでない限り、いつかは出て行くのです。賃貸借契約書をチェックして、納得がいかない箇所があれば、大家とまたは仲介の不動産会社と交渉しましょう。退出時の負担が大きいことが原因で、別の場所を選択する医院や病院も、現実にあるのです。