分院長に、利益連動の賞与を支払えるのか

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医療関連のコンサルティング
2014/07/20
分院長に、利益連動の賞与を支払えるのか

医療法人の理事長である院長の給料は、毎月一定額でなければ、増額された部分は役員賞与として、経費になりません。

分院長に、利益連動の賞与を支払えるのか

所得税率と法人税率は、まったく違います。
この医療法人のように、今年の利益がほぼ確定したときに、院長の給料を増減させてしまえば、簡単に節税できてしまうのです。

そのため、院長の給料を増額した場合だけではなく、減額した場合にも、差額が役員賞与となり、経費として認められないと決まっています。

このように、役員賞与は医療法人の経費にはならないのですが、理事長の給料であることには変わりないので、所得税はかかります。

 

例えば、医療法人の利益が3000万円になりそうだとします。
理事長は知らずに、こんなに利益を出す必要はないとして、決算日の直前に、月額の給料とは別に、1000万円の給料を余計に受け取ったとします。

名目が給料だったとしても、税務上は、この1000万円を役員賞与とみなします。
この1000万円が医療法人の経費にならないので、1000万円に対して40%の400万円の法人税がかかります。

さらに、1000万円は、理事長の給料として、50%(最高税率は55%)の所得税がかかれば、500万円です。
つまり、1000万円の利益に対して、法人税と所得税を合算すると、その90%の900万円の税金が取られてしまうのです。

だから、役員賞与を支払う医療法人は、本当に、特別な理由がないかぎり、存在しないのです。

 

一方、看護師や社員への給料や賞与は、医療法人の法人税率を考慮して、決めるわけではありません。
そのため、いつ、どれくらい支払っても、毎月の給料が変動しても、所得税はかかりますが、賞与も医療法人の経費としては認められます。

それでは、医療法人が分院を出して、そこに分院長がいる場合、その人への賞与は経費になるのでしょうか?

 

医療法人の院長から、「分院長にやる気を出してもらうために、分院の利益に連動した賞与を支払いたい」という意見をよく聞きます。
原則、医療法人の理事という役職である分院長に、利益に連動した賞与を支払うと、経費としては認められません。

そこで、分院長に賞与を支払いたい場合には、「使用人兼務理事」とします。

使用人の部分は、他の看護師や社員と同じ基準の給料として、その他に、毎月一定額で理事としての給料を支払うのです。
これにより、すべての給料が経費として認められます。

ただし、2つのことを守らないと、経費として認められないことになります。

 

【1】賞与は、他の社員と同じ基準とする

他の社員の賞与が、「月額給料×2か月分」という計算方法であれば、分院長の賞与を計算するときも、原則2か月分という月数に統一しなければいけません。
分院長の賞与を分院の利益に連動して支払いたいならば、そもそも、他の社員も利益に連動した賞与を支払うようにしなければいけません。

そのため、これを機に、社員の賞与を、分院の利益に連動した基準に変更することで、モチベーションを上げるという方法も考えられます。

院長の中には、分院が利益を稼ぐことばかりに集中するのは、医療サービスという点からは好ましくないという考えもあります。
もちろん、分院の利益に連動して、賞与を支払う義務はありません。

あくまで、他の看護師や社員と同じ基準にしなくてはいけないという意味なのです。

 

【2】理事の給料は一定にする

理事の仕事に該当する給料は、毎月一定にして、給与台帳に記載しておかなければいけません。

また分院長が、単なる理事ではなく、理事長は当然のこと、副理事、専務理事などの特別な役職になると、「使用人兼務理事」とは認められなくなります。
医療法人の経営の重要な意思決定権を持つ理事が、使用人とは考えられないと意味です。

さらに、分院長が、理事長である院長の親族であると、「使用人兼務理事」とは認められないと考えてください。
親族であっても、馴れ合いで給料を決めているわけではないと主張するかもしれませんが、税務署は、本当の部分まで見抜けません。

ほとんど一律、親族であれば、役員賞与と認定されてしまうのです。

また、今まで医療法人で勤務医であった人を、分院を出すのと同時に理事にして、分院長にすることがあります。
この勤務医から理事になるときに、「使用人」としての退職金を支払い、経費に計上することができます。「使用人兼務理事」という立場であったとしても、「使用人」としての退職金が認められるのです。

もちろん、使用人から理事になるときに退職金を支払わずに、医療法人の理事を辞めるときに、使用人ときの退職金と一緒に支払うことも可能です。

さらに、退職金規定がなかったため、すでに理事になってしまった人がいても、今から作成して退職金を支払い、経費に計上することもできます。

退職金は、医療法人の経費になるだけではなく、受け取る分院長にとっても、所得税がかなり安くなります。
できるだけ、早めに支払ってあげることが、そのあとの分院長のやる気を引き出すことにつながるはずです。

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