なぜ、あの医院は開業するときに、借地という方法を使ったのか?

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2013/03/08
なぜ、あの医院は開業するときに、借地という方法を使ったのか?

なぜ、あの医院は開業するときに、借地という方法を使ったのか?東京の都心で、新規に医院開業をしようとすると、親が資産家でないかぎり、賃貸で始めるはずです。

もちろん、医院経営や病院経営が失敗して閉院することを前提に、医院開業するわけではないのでしょうが、賃貸の方がリスクはかなり低いと言えます。

閉院しないまでも、医院や病院の開業場所を変えるということはあり得ます。
それに東京の都心で、土地を買って、建物を建てるだけで、数億円かかってしまいます。
同時に、医療機器も買うので、何億円の資金が必要になるか分かりません。

例えば、私が今まで手掛けた、都心で開業した医院や病院は下記のような感じでした。

項目

金額

土地 1坪350万円×40坪=1億4000万円

1億4000万円

建物 5階建て(上の2階部分が院長の住宅)

1億3000万円

医療機器

5000万円

駐車場の確保のための保証金

1000万円

合計

3億3000万円

どうですか?

銀行はお金を貸してくれますし、それに土地は資産価値もあるし、駐車場の保証金は最後には返還されるとしても、頭金が最低1億円ぐらいなければ、開業はできません。
だからこそ、都心では賃貸で開業するのが普通なのです。

一方、都心から離れた駅前になると、賃貸で医院開業する場所を見つけるのが難しくなります。
駅前に数多くのビルがあったとしても、医院や病院は害虫を嫌がります。そのため、同じフロアに飲食店が入っているビルなどは医院開業の場所には適さないのです。

しかも、ビルの1階の路面店の空きを探そうとすると、医院や病院とは関係ない他の業種の競合も多いので、なかなか難しいのが現状です。
そこで、駅から徒歩5分以内、もしくは遠くても徒歩10分以内の場所に土地を買って、医院や病院を建てるということになります。

同じように、郊外の幹線道路沿い(ロードサイド)で開業する場合も、同じように、賃貸の物件を探すのは難しいので、土地から買って、医院や病院を建てることになります。

ただ、最近は土地を借りて、建物だけを自分の所有権にして、医院開業する方法も流行っています。いわゆる、借地と呼ばれるものです。
これは医院や病院だけではなく、特別養護老人ホームや老人保健施設を建てるときも、最近ではよく使われる方法です。

借地は地主さんにとっても、土地を手放すわけではなく、将来は返ってくるという安心感があり、かつ相続税の対策にもなるので、説得しやすいのです。

そして、医院開業する医師や歯科医師側にとっても、借地を使うメリットは初期投資が小さいというだけではなく、税金のメリットが大きいと言えます。

まず、土地の固定資産税を支払う必要がなくなります。
そして、所得税や法人税が抑えられるため、資金効率がよくなるのです。

5000万円の土地と
5000万円の建物を買って、
医院開業した場合

土地は借地にして、
1億円の 建物を買って、
医院開業した場合

医業収益

1億円

医業収益

1億円

医業経費

-3000万円

医業経費

-3000万円

 

 

土地の借地料

-200万円

建物の減価償却費

-1500万円

建物の減価償却費

-3000万円

機械の減価償却費

-500万円

機械の減価償却費

-500万円

税引前の利益

5000万円

税引前の利益

3300万円

所得税又は法人税

-2000万円

所得税又は法人税

-1320万円

税引後の利益

3000万円

税引後の利益

1980万円

キャッシュフロー

5000万円

キャッシュフロー

5480万円

土地を借地にした方が、税引前の利益は小さいのですが、キャッシュフローは大きくなっています。

キャッシュフロー =
税引後の利益 + 減価償却費の合計

もちろん、これを見て、あなたは、たったの480万円じゃないかと思うかもしれません。
でも、同じように開業して20年経ったとすれば、

480万円 × 20年間 = 9600万円

も手取りが違ってくるのです。

しかも、この9600万円を建物の借金返済分にあてて、繰り上げ返済すれば、金利分でも得になるのです。

5000万円で買った土地が、20年後に9600万円を超えていればよいですが、現在の経済状況で、そんなことはほとんどないはずです。
逆に、5000万円よりも下がっている可能性の方が高いのです。

節税対策を行い、資金効率をよくするためには借地という方法を検討してはどうでしょうか。
ただし借地は大きく分けて3つの方法があるので、基本的な知識は知っておきましょう。

【1】普通借地

実は民法では、賃貸借の最高期間は20年と決められています。
他人からものを借りるときに、30年という契約書を作ったとしても、自動的に20年に短縮されてしまうのです。

ところが、借地借家法という法律があり、民法の特例を認めています。
つまり、土地は20年よりも長く借りることができるのです。

普通借地と呼ばれるものは、契約期間が最低30年となっています。
これは、「最高」ではありません。「最低」です。

そして、30年後に1回目の更新をするときには20年間以上(これで、最低50年以上の契約になる)、2回目の更新以降は10年間以上と決められています。
医院開業するときに作る建物が、RCだったとしても、2回目の更新の終わりの60年後にはかなり古くなっているはずです。

マンションなどの住宅とは違い、患者や看護師、それに製薬会社の営業マンなど、人の出入りが多く、建物の寿命は長くありません。
医院の建物を木造で作れば30年間、鉄骨で作ったとしても60年間が限度でしょう。
普通借地であれば、期間は十分です。

それに、普通借地の場合、ひとつだけ大きく医院や病院側に有利な点があります。
それは、借りている医院や病院から更新の意思を告げられると、地主さんに正当な理由がないかぎり自動的に更新してしまうのです。

医院や病院の建物が寿命になっても、大規模修繕をすれば、建物は生き返ります。地域医療を考えると医院経営や病院経営は止めない方がよいでしょう。
とすれば、普通借地で契約すると、地主さんは自分が生きているうちに、土地の利用権がほとんど戻ってこないという覚悟をするため、借地の賃借料は高くなりがちです。

しかも「戻ってこない=ほとんど売ったのと同じ」という感覚になるため、最初に地主さんを説得するのが難しいというデメリットもあります。

なお、よくお寺の周りに木造住宅が建っていて、「ここら辺の家はみんな借地なんですよ」と聞くこともあるかもしれません。
これらは、昔の借地借家法に基づいて契約しているため、上記で説明した普通借地とも違います。より借りている方の権利が強いのです。

ただ今から医院開業するのであれば、昔の借地借家法では契約できないため、ここでは説明しません。

【2】一般の定期借地

定期借地の契約期間は、50年間と決められます。
医院経営や病院経営を続けていたとしても、50年後には建物を取り壊して、更地を地主さんに返さなければいけません。

50年後にもう一度、定期借地権の契約を締結することはできます。
ただ、そのときには定期借地権の法律も変わっていると思いますが。

契約期間が50年と決まっているため、RCで医院や病院の建物を建てるのがよいかもしれません。期間が決まっているため、途中では借地の契約が解約できません。

【3】事業用の定期借地

この定期借地の契約期間は、10年以上50年未満となります。
一般の定期借地と同様に、契約期間の満了時には、更地にして返還する必要があります。
これは事業用なので、住居併用で医院や病院を建てることができません。

ただ、契約期間を短く設定することもできるので、あなたが医院開業するときに、すでに引退するときの年齢を予想して決めることができます。

子供が医院や病院を継がないというのであれば、建物も取り壊しやすい木造、もしくは軽量鉄骨で作ると初期投資が抑えられます。
しかも契約期間が短ければ、地主さんが生きているうちに利用権が戻ってくることになり、毎年の土地の賃借料も、他の2つの方法に比べて安くなります。

郊外のロードサイドで、チェーン展開している飲食店やアパレルのお店、それにコンビニが平屋建てで事業を行っているのをよく見ると思います。
そこでは、この事業用の定期借地が使われていることが多いのです。

医院経営や病院経営は永久に継続させて、地域医療に貢献するという意味では、短期間でつぶすことは好ましくありません。ただ契約満了時に、もう一度、契約を締結することもできます。

実際に30年間はやってみて、医院や病院を取り巻く環境によって、更新をどうするか意思決定するという方法もよいかもしれません。
地主さんも、30年後は気持ちが変わることも多いものです。

あなたが、医院開業する場所を探すときに、
地主さんに借地という方法を提案してみましょう。

借地で開業すれば、医院経営や病院経営の資金繰りは、かなり楽になります。
地主さんも、医院や病院は一般の事業よりも倒産して撤退するリスクも小さく、自分も地域医療に貢献できるという気持ちが湧くものです。

今まで私が手掛けた医院開業でも、提案してみると意外と地主さんは承諾してくれるものだと知りました。
医院開業の1つの方法として、知っておいて損はないはずです。

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