MS法人を設立して、妻に医薬品の卸売業を行ってもらっても、問題ないのか?

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2015/01/20
MS法人を設立して、妻に医薬品の卸売業を行ってもらっても、問題ないのか?

MS法人を設立して、妻に医薬品の卸売業を行ってもらっても、問題ないのか? MS法人を設立する理由は、医療法人は、医療法で事業内容が制限されているため、そこではできない事業を行いたいという理由があるはずです。

眼科で、コンタクトレンズの販売を行っていたり、入院施設のある病院では、食堂や売店を開いたり、院長が社宅の土地を保有していたところ、その社宅を取壊し、アパートを建てることもあるでしょう。
また、個人の医院を運営していると、医院経営や病院経営で、医院の内装を修繕したり、医療機器を買うお金は借りることができますが、まったく違う事業を行う場合には難しくなります。

そこで、MS法人を設立すれば、院長個人とは別人格となるため、銀行も事業に対するお金を貸しやすくなります。

ただ、どちらの場合にせよ、MS法人の事業だけでは、売上や利益が足りず、医院経営や病院経営の利益を移転させることができれば経営も安定し、医療法人や個人医院の節税対策にもなり、一石二鳥と言えます。

もちろん、MS法人は、一般の株式会社であり、何の事業を行ってもよいのですが、医療法人や個人の医院との関係としては、主な事業は5つとなるはずです。(自由診療が多い医院経営や病院経営であれば、他の業務もあります)

  • 1. 医療法人や個人医院が、MS法人に管理委託料を支払う
  • 2. MS法人が医療機器を買って、医療法人や個人医院にリースする
  • 3. MS法人が建物や土地を管理する、又は医療法人や個人医院に又貸しする
  • 4. MS法人が医薬品や消耗品を買って、医療法人や個人医院に卸す
  • 5. MS法人が社員を雇って、医療法人や個人医院に派遣する

院長としては、MS法人を設立して、軽い気持ちで業務委託を行っていたところ、突然、税務調査ですべて否認されてしまう事例が増えています

院長としては、「他の医院や病院も、MS法人を設立して、同じことをやっているはずだ」という気持ちから、税務署の言い分に納得がいかず、裁判を行うこともあります。
その裁決事例(裁判所で院長と税務署が争い、判決が下りた事例)をご紹介します。

 

1.管理委託料についての事例

両社が認めている事実

個人医院を経営していた院長は、青色で確定申告を行っていたが、MS法人に給食及び事務の管理委託を行っていた。院長とMS法人の間には業務委託契約書があり、そこには事務管理の受託業務として、「清掃、営繕業務、防災並びに、診療報酬請求事務、受付事務、及びそれに付随する一切の事業」と書かれていた。
なお、MS法人は、この個人医院に対してのみ、業務を提供しているだけで、他の事業は行っていなかった。

MS法人を設立して、妻に医薬品の卸売業を行ってもらっても、問題ないのか?

税務署が指摘した問題点

  • 【1】MS法人が行うべき給食の管理の範囲が、明確になっていない
  • 【2】MS法人には、給食を管理する責任者も決まっておらず、それを専業で働く社員もいない
  • 【3】給食の献立、カロリー計算、材料の決定、納品の検収は、個人医院の社員が行っている
  • 【4】給食の材料に対して、MS法人が仕入れた金額に約80%も上乗せして支払っている
  • 【5】個人医院は、給食の材料をMS法人だけではなく、直接、仕入れることもある
  • 【6】給食の材料の領収書のチェックは、個人医院の社員が行っている
  • 【7】管理委託業務に伴う電気料、消耗品等はすべて個人医院が、直接支払っている
  • 【8】MS法人は、個人医院の事務所を一部借りていたが、賃料を支払っていない
  • 【9】MS法人の管理委託業務を行う社員はいたが、タイムカードは個人医院と共通である

平成元年4月25日に裁決

MS法人は、給食の管理業務は行っておらず、管理委託業務も請け負いで行っている様子はなく、人材派遣業に該当すると考えられる。そのため、MS法人で支払った人件費に、人材派遣業の平均的な利益率を上乗せした金額を、個人医院からMS法人に支払うことだけを認める。

業務委託の契約書は作成していましたが、MS法人には、その業務を行う組織も、場所も、資料もなく、実態は運営されていませんでした。

どうでしょう。

あなたが、MS法人をすでに設立していながら、上記の問題点と同じような心当たりがあれば、修正しないと、同じように否認されてしまうことになります。

そもそも、MS法人が管理委託の実態を備えて、その業務料の算定根拠の資料を揃えていれば、税務署も自分たちが集めた資料だけで否認することは難しくなります。

というのも、あくまで税務署が管理委託料を否認するためには、医療法人や個人医院、MS法人が揃えた資料が不合理であることを立証しなければいけません。さらに、その上で、税務署で適正な管理委託料を計算し、自分たちの方が合理的であることを立証しなければいけないのです。

 

上記の事例でも、MS法人が、1つの医療法人や個人医院に専属で給食及び事務の管理委託を行っていたとしても、それは何の問題もありません。

MS法人として、個人医院とは別に組織を作り、業務を行っていた実態がないことが問題となったのです。

 

2.リース料についての事例

両社が認めている事実

歯科医院の院長が、取締役に就任しているMS法人と契約を行い、医療機器を借りて、リース料を支払っていた。

税務署が指摘した問題点

  • 【1】歯科医院は、医療機器の耐用年数を超えても、減額しないリース料を支払っていた
  • 【2】医療機器が撤去されたあとも、リース料を支払っていた
  • 【3】歯科医院の院長は、レンタル契約だと主張したが、契約書はリースの様式だった

平成14年4月24日に裁決

一般の医療機器は、リース期間が終わると、通常は10分の1程度に下げて、再リース料を支払う。それに比べて、支払っているリース料は不当に高く、歯科医院の利益が減らされ過ぎている。そのため、リース料としての経費は否認する。

 

ここには、2つの論点があります。

1つ目は、リース料が高いか、安いかということです。
通常、リース会社から医療機器を再リースする契約を行えば、かなり減額されます。確かに、そこまでリース料を支払い続けるのは、おかしいと言えます。

そして、2つ目が最も悪い点です。
それは、歯科医院に院長の主張が矛盾していることです。

リース料であれば、医療機器を撤去したあとも、借金なので支払いの義務が発生します。
ところが、レンタル契約というのであれば、医療機器がないのですから、借りることはできません。レンタルと主張しているは、医療機器の耐用年数が終わっても、同額のレンタル料だったという口実です。

税務署だけではなく、裁判所も、時間をかけて、どちらが正しいことを言っているのか判断します。その場で取り繕った言い訳は、すぐに見破られてしまうということです。

 

このことから、MS法人を設立して、医療法人や個人の医院が契約を締結するならば、

【1】医療法人や個人の医院は、どのような契約内容で支払いを行うのか

【2】他の一般的な取引と比較して、明らかにおかしくないか

【3】税務署に指摘されたときに、主張できる根拠資料は揃っているか

【4】理論が一貫していて、矛盾している点はないか

を確認しましょう。

給食及び事務管理の委託を行ったり、リース料を支払うだけの業務なので、集める資料が膨大になったり、契約内容が複雑になることはあり得ません。
税務調査が来る前に修正しておけば、税務署から否認されるリスクは、かなり小さくなるのです。

他の裁決に関しては、次回、ご紹介いたします。

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