MS法人で請け負う事業を選定しないと、否認される可能性があります。

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2015/07/10
MS法人で請け負う事業を選定しないと、否認される可能性があります。

ms法人で事業を選定しないと否認される可能性

個人の医院や病院、または医療法人の業務の一部を委託する、メディカルサービス法人(MS法人)を設立していることがよくあります。
このとき、誰もが、できるだけ、MS法人への委託料を増やしたいと考えるでしょう。

というのも、MS法人の代表取締役を妻、取締役を子供にしておき、その2人に給料を支払えば、所得税の税率が低いことで、節税できることになります。
青色専従者にして、給料を支払っても同じと考えるかもしれませんが、MS法人の役員であれば、その給料を税務署に届け出る必要はありません。

青色専従者である妻や子供には、退職金を支払うことができませんが、MS法人の役員であれば、支払うこともできます。
また、院長先生が、個人で生命保険に加入しても所得控除にしかなりませんが、会社で支払えば、経費になるのです。

 

さらに、基本的に、個人の医院や病院であれば、院長先生のポケットにお金が貯まり、医療法人であれば、そのポケットにお金が貯まります。
ただ1つのポケットにお金があるよりも、MS法人のポケット、妻や子供のポケットにお金を分散しておくことは、家族に何かあった時にもリスクの分散につながります。

 

これを聞いて、いきなり、MS法人に、個人医院や病院の医業収益の50%を付け替えるというようなことは、止めてください。
今まで、MS法人への業務委託料が高すぎるということで、税務署から否認された事例が、数多くあるのです。

(1)国税不服審判所 平成元年4月25日 裁決
院長先生が、メディカルサービス法人(MS法人)に対して、医院や病院の建物、給食及び事務の管理を委託する委託契約に基づく委託料を支払っていたが、院長先生の所得税の負担を不当に減少させる結果となっていると認められる。

委託料の額は、適正管理費の額をはるかに超えた異常なものであり、これは、院長先生が医院や病院を営む事業経営者の行為としては不合理、不自然な行為である。これは、同族会社であるがゆえに可能な行為又は計算であると認められる。
院長先生が、委託契約に従った経費を支払うことで、各年分の所得税の負担は、適正管理費の額によって算定された所得税の負担に比べ、各年分で、約500万円から866万円と、かい離している。

(2)国税不服審判 平成14年12月20日 裁決
MS法人に支払った医療機器等の賃借料の額が過大であるとして、更正処分されたことは、適法であるとして、平成10年から平成12年分の所得税を更生されて、追徴税も取られました。

このように、委託料であったとしても、リース料であったとしても、それが不当に高額であれば、経費として認められないことになります。
しかも、ほとんどの場合、納税者が、つまり、院長先生も、医療法人も負けています。
ただ、悲観ばかりしなくてもよいのです。
メディカルサービス法人(MS法人)に支払った外注費が、認められた事例もあるからです。

国税不服審判 平成13年3月13日 裁決
税務署は、個人の医院や病院から、MS法人に委託した請負業務は、契約書及びその実態からみて、実質的に単純労働者の人材派遣業務であること、同族関係間にない通常一般の人材派遣業に係る倍率から算定した認定外注費に比べて、本件外注費は著しく高額である旨主張する。

ところが、院長先生とメディカルサービス法人が交わした請負契約書では、業務に係る費用の負担について定めており、A社は請負業務を実行するに当たり、派遣従業員に係る賃金等以外に賃金等の約3割ないし5割相当の水道光熱費、備品消耗品費等の費用を負担していることが認められる。

この形態は、一般的な人材派遣にとどまらず、MS法人は、院長先生が営む医療保険業の業務全般の委託を受けていると考えるのが相当であり、採用している業務委託料は適正であると認める。

このように、MS法人の仕事に実態があれば、院長先生や医療法人から支払う委託料も、派遣料も認められることになります。

ただ、MS法人に業務を委託するときに、注意して欲しいことが3つあります。

 

1.契約書は作成すること

MS法人に実態があったとしても、それ以前に、形式論が整っていないといけません。
つまり、院長先生や医療法人が、MS法人に委託するときには、必ず、委託契約書を作成してください。
このとき、委託契約書の中に、業務一覧を箇条書きで載せることが大切です。

また、業務委託の内容を記載するときに、固定的にかかる費用、例えば、建物の管理費用などは、一定金額とします。
一方で、医業収益に比例して、変動的にかかる費用、例えば、社会保険診療の請求業務、リネン業務などは、パーセントで設定します。
これで、医院経営や病院経営の医業収益が上がっていったときに、それに比例して委託料を上げることができます。

2.許可が必要な業務を知っておく

MS法人が医療機器を買って、院長先生や医療法人に貸し付けて、リース料を受け取ることができます。
ただ、下記のように、高度管理医療機器に該当すると、MS法人は許可を取らなくてはいけません。

高度管理医療機器

クラスIII、IV

許可 要

特定保守管理医療機器

 

許可 要

管理医療機器(特定保守以外)

クラスII

届出 要

一般医療機器(特定保守以外)

クラスI

届出不要

さらに、MS法人に看護師や社員を在籍させて、個人の医院や病院、または医療法人に派遣する場合には、特定派遣(一般派遣とは違い、届出制)の届出が必要となります。
ただ、これも、先月の派遣法の改正により、近い将来はすべて一般派遣に統一されて、許可制となります。

派遣契約ではなく、出向契約なれば、それに利益を乗せることができなくなります。
つまり、MS法人に利益を移転させることができないのです。
このように、MS法人で、許可が必要となる仕事に関して無視して業務委託料をもらっていると、違法行為になるため、どこかで足をすくわれることにもなり、注意が必要です。

3.MS法人との契約を、何度も見直さない

院長先生が、MS法人に業務委託をする場合、固定で支払う委託料もあり、変動で支払う委託料もありますが、この金額やパーセントを何度も見直すと、利益調整と見られてしまいます。
そのため、原則、一度決めた固定費と変動費の金額は、変更できないと考えるべきです。
特に、固定費は、業務を変更したり、追加した時に変更することはありますが、それ以外で、変更すると、税務調査で否認されやすくなります。

 

このような話をすると、
「過去に税務調査があったときに、業務委託料もチェックされたけど、否認されなかったから、大丈夫」
という話をする院長先生もいます。

それは、たまたま、そのときの担当者が問題視しなかっただけで、これからも大丈夫だというわけではありません。

税務署に「業務委託料が、高すぎる」という理由で否認されてしまうと、不服審判所や裁判でそれをひっくり返そうとしても、納税者が勝った事例は、ほとんどないのが現状です。

もし、個人の医院や病院がかなり儲かり、MS法人への業務委託料だけでは、十分な節税ができないと考えたならば、医療法人を設立しましょう。

そもそも、医療法人になれば、院長先生の個人の所得税の税率に比べて、かなり法人税の税率は低くなります。
そして、医療法人を設立したとしても、個人の医院や病院のときと同様に、MS法人に対して、委託料を支払うことは、何の問題もないのです。

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