理事長への退職金は、いつ、いくらまで、支払うことができるのか?

住所
医療関連のコンサルティング
医院経営/病院経営コンサルティング > 医療法人のメリットを最大限に活かす方法 > 理事長への退職金は、いつ、いくらまで、支払うことができるのか?
2016/01/20
理事長への退職金は、いつ、いくらまで、支払うことができるのか?

 

理事長への退職金は、いつ、いくらまで、支払うことができるのか?

 

個人事業主として開業している院長先生は、自分に退職金を支払うことができません。
配偶者(妻)が、医院経営や病院経営を手伝っていて、青色専従者給与をもらっている場合でも、その配偶者に対して、退職金を支払うことはできません。

同様に、同居していて、生計が一緒になっている子供へも退職金を支払うことができないのです。
ところが、医療法人であれば、院長先生にも、配偶者(妻)にも、同居している子供にも、退職金を支払うことができます。
これは、大きなメリットです。
理由は、2つあります。

 

(1)医療法人の経費になる

通常、院長先生に給料を支払うと経費になりますが、定期同額給与として、毎月一定額を支払うことが必要となります。

1年の決算が終わり、社員総会で、その年度の1年間の院長先生の給与を決定していきます。
ところが、ちょうど利益をゼロにすることはできず、医療法人に利益が貯まっていきます。
医療法人は配当が禁止されているため、この貯まったお金を院長先生、もしくは医院経営や病院経営を手伝ってくれている配偶者や子供に渡すためには、退職金という方法しかありません。
では、この退職金は、いくらまで支払えるのでしょうか?

 

月額の給料 × 在籍年数(切り上げ) × 功績倍率 = 退職金の限度額

 

このとき、功績倍率は、医療法人の理事長である院長先生なら3倍、配偶者が理事となっていれば、2倍が限度です。

例えば、院長先生の月額の給料が、250万円で、在籍年数が20年、功績倍率が3倍とすれば、1億5000万円まで、退職金を支払えることになります。
当然、ここまでの退職金を1年間で支払えば、医療法人は赤字になります。
それでも、個人事業主で開業しているときには、赤字が3年間しか繰り越せませんが、医療法人であれば、10年間も繰り越すことができます。
10年もあれば、この赤字を黒字と通算することができるでしょう。

 

(2)院長先生の所得税が安い

退職金をもらった院長先生に多額の所得税がかかるならば、そもそも、月額の給料を高くしておけば、よいことになります。
基本的に、退職金は、老後の生活費の準備であり、現役時代と同じ所得税をかけるのは、ちょっとやり過ぎです。
そこで、退職金に対する所得税は、下記のように計算された退職所得を、給料などとは分離して計算してよいことになっています。

 

退職所得 = 
( 退職金 - 退職所得控除額 )×1/2

 

  • 退職所得控除額 勤務期間20年以下  40万円×勤務期間
  • 勤務期間20年超 70万円(勤務期間-20年)+ 800万円

 

先ほどの1億5000万円の退職金を院長先生に支払った場合について、所得税を計算してみましょう。
院長先生は、20年間働いたので、退職所得控除額は800万円となり、退職所得は、7100万円と計算されます。
これを所得税の税率表に当てはめると、所得税は、住民税と合わせて、約3420万円となり、実効税率は「3420万円÷1億5000万円=22.8%」となります。
給料の所得税率が最大で55%となることに比べると、かなり安いと言えます。

このように、医療法人から退職金を院長先生に支払うことは、法人も個人も、メリットがあるのです。
ということで、これだけの税務上のメリットがあるため、税務署も無暗に退職金を支払うことを認めてくれません。
いろいろな制約があります。

その中でも、最もよく議論になるのが、「退職金は、院長先生が退職したときにしか支払えない」ということです。

 

あなたは、「退職金なんだから、当然だろ?」と考えるかもしれません。

 

ところが、退職しない院長先生が、いるんです。

 

「退職せずに、院長が働き続けても問題ないんじゃないのか? それだけ、医業収益も上がり、よいことだ」とも考えるかもしれません。

ただ、医療法人の場合、院長先生の退職金のために、生命保険で利益を繰り延べていき、解約返戻金が最大になった時点で、解約するというスキームを組んでいることが多いのです。
「生命保険を契約したときには、10年後に退職して子供に、医院や病院を継がせようと計画を立てていたけど、まだ体も心も元気なので、もう少し続けたい」という気持ちに変わることは、悪いことではありません。

私も、いままでお付き合いさせて頂いた院長先生は、「70歳で引退しようかな」と言って、本当にそこで辞める先生は、3分の1ぐらいで、残りの方は、まだ現役を続けています。
ここで問題となるのが、生命保険を解約する時期を逃すと、大きく損をするため、「実際には引退しないけど、退職金だけは支払わないといけない」と考えてしまうことなのです。

そこで、理事長から理事、もしくは監事という役職になり、理事長としての退職金をもらおうとするのです。

ただ、法律では、「医療法人の経営上、重要な地位に占めている者は、退職したと認めない」と記載されています。
そのため、理事長から理事になろうが、監事になろうが、医療法人の意思決定に参加していれば、退職金は支払えないことになります。

子供が理事長になり、自分が理事になるだけでは、退職金は支払えないのです。

 

ここで、法律には「給料が50%未満になれば、退職したとみなす」とも書かれています。
この事例を持ってきて、「理事長から、理事に降格し、給料を今までと比べて、50%未満にすれば、退職金が支払えるはずだ」と主張する院長先生もいます。

確かに、平成19年以前は、このように給料だけでも判定できましたが、法律が改正されたことで、給料が50%未満であっても、「医療法人の経営上、重要な地位に占めている者は、退職したと認めない」ことになっています。
そのため、確認した資料が古かったり、昔の事例を参考にすると、間違った判断をすることになります。

ただこれらを聞いて、理事長を辞めて退職金をもらったあとも、医療法人に在籍し続けるが、経営上の重要な地位ではなく、単なる非常勤の医師として働くので大丈夫と安易に考えた方は注意してください。
というのも、税務調査で、退職金が指摘されると、かなりもめるからです。
例えば、現在、院長先生の給料は定期同額給与といって、毎月、同額の給料でなければ、いけません。
もし、増額や減額をすると、差額は給料ではなく、賞与とみなされて、医療法人の経費になりません。

 

理事長への退職金は、いつ、いくらまで、支払うことができるのか?

 

また、交際費についても、医療法人であれば、1年間で800万円までが経費となり、それ以上は、半分しか経費になりません。(持分の定めのない医療法人で、「純資産×60%>1億円」の場合は、すべての交際費の半分しか経費にならない)

ただ、1人当たりの飲食代が5000円以下であれば、会議費として経費になります。
これらは、すべて税務署との交渉にはなりますが、一部が否認されると、追加で税金が発生します。それでも、かなりいい加減な処理をしていない限り、全額が否認されることは、まずあり得ません。

 

ところが、退職金の場合には、話が違ってきます。
つまり、税務調査で、「退職金として認めない」と断定されると、院長先生に対する賞与とみなされて、全額が医療法人の経費にならず、追徴課税となるのです。
院長先生も退職所得ではなく、賞与となれば、そのまま給料に合算されて所得税が計算され、不足分は追徴課税となります。

例えば、先ほどの1億5000万円の退職金であれば、
法人税=1億5000万円×30%(法人税率)×(1+15%)(過少申告加算税)=約5100万円
所得税=1億5000万円×55%(所得税率)×(1+15%)(過少申告加算税)=約9500万円
となり、合計で、1億4500万円の税金を支払うことになります。

なお、上記の税率は、院長先生が退職金をもらった年に、理事長としての給料をもらっていたこと、退職金以外にも税額の修正があったことを前提にしています。
これだけではありません。
延滞税も加算されるため、実際に1億5000万円の税金を支払うことになるでしょう。
これは、税務署と交渉で下がるものではありません。

 

退職金として認めるか、それとも認めないか、「ゼロか、100か」という議論になってしまうのです。

 

このように、退職金は金額が大きく、税務署ともめると大変なことになるので、注意が必要です。
これ以外にも退職金ついては、注意すべきことがあるので、それは次に説明します。

 

facebook
twitter
google+