医療法人を設立する一番大きなデメリットは、小規模宅地の適用が受けられないことです。

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2017/03/10
医療法人を設立する一番大きなデメリットは、小規模宅地の適用が受けられないことです。

医療法人を設立する一番大きなデメリットは、小規模宅地の適用が受けられないことです。

父親の財産が相続税の基礎控除額を超えると、相続税がかかります。
基礎控除額とは、「3000万円+相続人の数×600万円」となります。

例えば、法定相続人が妻と長男1人で合計2人とすれば、4200万円が基礎控除額と計算されます。父親が医院経営や病院経営を行っていれば、これよりも財産の評価額が低いということはないと思います。このとき、父親の財産のうち、自宅と医院や病院の土地と建物が大きな割合を占めていることがあります。

過去に医院や病院がかなり儲かって、父親に莫大な現金としての貯金があるケースもありました。ただ、大体の場合、医院や病院が儲かっても、建物を建築するときの借金を返済する原資に回ったり、新たに増築するための資金や最新の医療機器を買うために使ってしまい、貯金額に比べて不動産の評価額がかなり大きいケースがほとんどでした。もし自宅と医院や病院の土地や建物の評価額が高く、妻や長男が相続税を支払えない事態になれば、売却するしかありません。

ただ、妻が同居している場合に、ずっと長年住んできた自宅を相続税が支払えないという理由で引越しをしなければいけないとしたら、酷い話です。また医院や病院を継いだ子供が相続税を支払えずに、建物と土地を売却して閉院して、従業員も解雇しなければいけない事態になることは、やり過ぎです。

そこで相続税では、一定の土地に関しては、小規模宅地の特例を適用することになっています。小規模宅地の特例とは、一定の要件を満たせば、評価額を50%減または80%減にしてくれるという制度です。自宅は80%減なので、例えば、1億円の自宅の土地が2000万円に減額されるということですので、かなり優遇されています。

小規模宅地の特例は3種類あり、下記がその一覧となります。

医療法人を設立する一番大きなデメリットは、小規模宅地の適用が受けられないことです。

 

1. 自宅の土地について

自宅の土地については、配偶者である妻が相続するならば、自動的に80%減となります。妻が居住しなくてもよく、長男が住んでも構いません。そのため、父親が亡くなったあとは、妻が相続すればよいのですが、問題は二次相続のときです。
長男が相続する直前に、妻(長男から見たら母親)と長男が同居していなければ、小規模宅地の適用がないのです。もし同居が難しい場合には、次の2つの方法で80%減の特例を適用できないかを検討することになります。

1つ目は、下記のように二世帯住宅を建てることです。

以前は中で行き来ができる二世帯住宅でなければ認められませんでしたが、現在では玄関が別の二世帯住宅でも同居していたとみなしてくれます。

医療法人を設立する一番大きなデメリットは、小規模宅地の適用が受けられないことです。

2つ目は、長男が自宅を所有していないのであれば、そのあと妻(長男から見れば母親)が住んでいた自宅を相続することで、80%減の特例を適用できます。長男が、「すでにマンションを買って住んでしまっている」と後悔していても、賃貸マンションに引っ越して、自分のマンションを他人に貸しても構いません。

ただ長男が、「引越したら、子供が小学校を転校することになるので、それはできない」と言う場合には、そのマンションを妻(長男から見たら母親)に買ってもらえばよいのです。
あくまで、自宅を所有していて、そこに住んでいると80%減の特例が受けられないという要件なのです。何とか工夫すれば、自宅の土地は80%の評価減ができそうです。

 

2. 医院や病院の土地

東京都、名古屋市、大阪市はビル診療が多いですが、それ以外ではビル診療ばかりではなく、住宅併用で医院や病院の建物が建っていることをよく見かけます。
この場合、父親が死ぬまで医院経営や病院経営を行っていたとすれば、つまり保健所に開業届出を出していて、長男である子供はあくまで勤務医として働いていた場合には、相続で長男が継げばその敷地にも80%減の特例の適用があります。

また一方で、すでに父親は引退して長男が医院や病院を継いでいた場合には、長男が生計一の場合には、そのまま医院経営や病院経営を続ければ、敷地に80%減の特例の適用があります。

このとき、「1.」の自宅の特例と「2.」の医院や病院の土地の特例は併用できるのです。

つまり、それぞれの面積に上限がありますが、最大で、330㎡+400㎡=730㎡まで評価減ができることになります。730㎡と言えば、221坪超にもなる広さなので、ほとんどの場合、自宅兼医院の土地をすべてカバーできると予想できます。

例えば、1坪50万円ぐらいの地方都市であれば、221坪で1億1千万円になります。これが、80%減されると、22百万円の評価となり、相続税の節税対策としてはかなり高い効果が発揮できます。

 

ここまでは、「1.」と「2.」がフルに使えることを前提にしましたが、医院や病院の土地に「3.」(表の中の数字のこと)が適用されると少し話が違ってきます。

「3.」が適用されてしまうと、「1.」と併用しようとすると単純に合算ではなく、適用面積で上限の計算が必要となるのです。

医療法人を設立する一番大きなデメリットは、小規模宅地の適用が受けられないことです。

例えば、居住用の土地の面積が50坪とすれば165㎡となりますので、残りの貸宅地の土地は100㎡までが限度となり、しかもその部分は50%の評価減となります。結果、居住用と合わせて最大80坪までが限度となり、かつ貸宅地は50%減なので評価額はかなり高くなってしまうのです。もし居住用の部分が100坪ある場合には、医院や病院の土地はまったく評価減されないことになります。

それでは、「3.」の貸宅地に該当する場合とは、どのような場合でしょうか?
実は、医院経営や病院経営では3つのケースが考えられます。
1つ目が、個人事業主である父親の医院を生計別の長男が継ぎ、父親の生前から建物と土地を借りて医院経営や病院経営を行っている場合です。この場合には、長男が父親と生計一になれば、「3.」の貸宅地ではなく、「2.」の事業用土地として認められます。

または生計一が難しい場合には、父親にずっと経営をしてもらい、あくまで長男は勤務医として働くことです。

このとき、「事業主の父親の所得よりも、勤務医の子供の給料が高いとおかしいのでは?」と質問を受けることがあります。実際に、働いている時間が長男の方が長く、メインで診療しているのであれば、父親よりも高くても全然、構いません。

2つ目が、持ち分の定めのある医療法人が建物を賃貸している場合です。
父親が貸付事業を行っていることになりますので、やはり「3.」の貸宅地になってしまいます。
この場合には、父親の生前に医療法人が建物を所有する方式に変更して、かつ医療法人の理事長となる長男が、医院や病院の土地を相続すれば、「2.」の事業用の土地として認められます。建物を所有する手段としては、医療法人が買ってもよいですし、父親が贈与しても構いません。

3つ目が、持ち分の定めのない医療法人が建物を借りている場合です。
持ち分の定めのない医療法人の場合には、借りている場合は当然のこと、建物を所有したとしても、父親が所有する土地は「2.」の貸宅地にはなりません。今後は、設立する医療法人はすべて持ち分の定めのない医療法人となります。そのため、これから医療法人を設立する場合には父親の所有する医院や病院の敷地も建物と一緒に買うという方法でしか相続税を下げることができません。持ち分のない医療法人が土地を所有すれば、相続税がかからなくなります。

ただ、父親が譲渡するときに、土地の売却益に20%の所得税がかかります。そのまま、個人事業主として経営して、長男が引き継げば、相続税がかからない可能性があったのです。
これは、医療法人を設立する場合の最も大きなデメリットと言えます。

父親は自分の医院や病院の敷地の評価額を計算してから、自分の代で医療法人を設立した方がよいのか、事業を継いだ子供が相続のあと医療法人を設立した方がよいのか、事前にシミュレーションして判断しましょう。

 

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