医療法人は、一般の会社に比べて、どのように優遇されているのか?

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2012/04/02
医療法人は、一般の会社に比べて、どのように優遇されているのか?

個人医院と医療法人との税金の違いは、あなたは、よく知っているかもしれません。

では、医療法人と一般の会社とは、税金で、何が違うか知っていますか?

医療法人は、一般の会社に比べて、優遇されている項目がたくさんあります。

【1】法人税率

法人税率は、一般の会社と同じです。ただし、特定医療法人についてだけは、税率が軽減されています。

個人の医院経営 単位:千円

税率
出資金1億円以下の医療法人

年800万円までの所得金額(※)

22%

年800万円を超える所得金額

30%

出資金1億円を超える医療法人

30%

特定医療法人

22%

(※)所得金額とは、医業収益のことではなく、経費を差し引いた利益と考えてください。

なお、特定医療法人とは、下記の要件を満たす法人です。

1:財団又は持分の定めのない社団の医療法人であること

2:理事・監事・評議員その他役員等のそれぞれに占める親族等の割合がいずれも3分の1以下であること

3:設立者、役員等、社員又はこれらの親族等に対し、特別の利益を与えないこと

4:寄付行為・定款に、解散に際して残余財産が国、地方公共団体又は他の医療法人(財団たる医療法人又は社団たる医療法人で持分の定 めがないものに限る)に帰属する旨の定めがあること

5:法令に違反する事実、その帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装して記録又は記載している事実その他公益に反する事 実がないこと。公益の増進に著しく寄与すること

6:社会保険診療にかかる医業収益(公的な健康診査も含む)の合計額が全収入の8割を超えること

7:自費患者に対し請求する金額は、社会保険診療報酬と同一の基準により計算されるもの

8:医療診療収入は、医師、看護師等の給与、医療提供に要する費用等患者のために直接必要な経費の額に100分の150を乗じた額の範囲内であること

9:役職員一人につき年間の給与総額が、3,600万円を超えないこと

10:医療施設の規模が告示で定める基準に適合すること

  • (1)40床以上(専ら皮膚泌尿器、眼科、整形外科、耳鼻いんこう科又は歯科の診療を行う病院にあっては、30床以上)
  • (2)救急告示病院
  • (3)救急診療所である旨を告示された診療所であって、15床以上を有すること

11:各医療機関ごとに、特別の療養環境に係る病床数が当該医療施設の有する病床数の100分の30以下であること

【2】留保金課税

一定の要件に当てはまる会社については、事業年度の利益のうち、配当せずに法人内部に留保した金額に対して、特別税率による税金がかかります。これを、「留保金課税」と呼びます。

なぜ、このような税金があるかというと、所得税の最高税率は、住民税を合わせると、50%になります。一方、法人税率は、上記の表に、事業税などの地方税を合わせると、最高で40%程度になります。

ということは、医療法人に、1億円の利益が発生した場合、それを院長の現在の給与に上乗せして支払うと、5000万円の所得税がかかります。

そのまま、医療法人の利益にしておけば、4000万円の法人税ですむのです。これだけで、1000万円の節税ですよね。10年間続ければ、1億円も節税できてしまうことになります。

これを防ぐため、会社に利益を溜め込むと、最高で10%の「留保金課税」というものがかかるのです。これで、所得税と法人税の税率は同じになります。

なお、溜め込んだ利益を、株主に配当すれば、所得税がかかります。それならば、国も税金がとれます。そのため、会社に利益が出たとしても、それを溜め込まず、配当してしまえば、「留保金課税」はかかりません。

ただし、医療法人は、そもそも、配当ができません。

そのため、医療法人には、
「留保金課税」の制度がないのです。

医療法人から、院長が高額の給料を受け取っていて、医療機器や内装の修繕を行なうときに資金が足りなくなり、結果的に、院長が医療法人に貸付をしている決算書をよく見ます。

これでは、院長が10%も税金を余分に支払って、お金を貸していることになるのです。

そのため、医療法人で将来、使うことが見込まれるお金は、院長の給料として抜かずに、利益として残すと、節税になります。

【3】社会保険診療報酬に対する概算経費

社会保険診療報酬が5000万円以下の医療法人については、概算経費の特例が認められています。概算経費とは、税務署が、実際にかかった経費に変えて、自動的に経費を計算してもよいと認めているものです。

社会保険診療報酬の額(A)

概算経費の額

2500万円以下

(A) × 72%

2500万円超~3000万円以下

(A) × 70% + 50万円

3000万円超~4000万円以下

(A) × 62% + 290万円

4000万円超~5000万円以下

(A) × 57% + 490万円

これは、かなり医療法人にとっては、有利な経費の計算方法となります。ただし、医業収益の合計が、5000万円以下という要件があるので、大きな医院や病院には、適用できません。使えるのは、一人医療法人の場合ぐらいです。

【4】事業税の特例

医療法人の法人事業税を計算するときに、社会保険診療報酬に対応する利益については、非課税となります。

法人事業税は、地方税なので、各都道府県で計算方法が違いますが、下記の計算方法で、事業税率を掛け合わせる利益を計算すると覚えておけばよいでしょう。

次に税率ですが、下記のようになります。

課税所得(利益のこと)

法人事業税の税率

年400万円まで

2.7%(2.95%まで上げることができる)

年400万円を超える部分

3.6%(3.93%まで上げることができる)

【5】外形標準課税の不適用

外形標準課税とは、資本金1億円以上の法人の法人事業税について、利益に対する税金以外に、資本金等の額や給与の支払額、支払利子などを課税標準として計算する税金のことです。

これは、利益が出ているから課税されるわけではないので、赤字の会社にも外形標準課税はかかります。一方、医療法人は基金が1億円以上であったとしても、外形標準課税はかかりません。

ただし、基金が1億円を超えると、法人税の中小企業の特例が使えなくなるため、外形標準課税だけで、判断しないでください。基金を1億円超にするときには、そのメリットとデメリットを比較する必要があります。

以上のように、医療法人は、法人税に関しては、一般の会社に比べて、かなり有利な特例があるのです。

そのため、一人医療法人のように、小さな医院や病院でも医療法人に成ったり、独立するときから、いきなり医療法人で始める院長もいるのです。もし、あなたが、まだ医療法人化していないならば、一度、税金のシミュレーションをしてみるべきでしょう。

また、個人医院の院長で、MS法人を設立して、節税対策を行なおうと思っているならば、もしかしたら、医療法人に成った方が、メリットは大きくなるかもしれません。

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