MS法人との業務委託契約の内容が、都道府県からチェックされることになります。③

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2017/09/30
MS法人との業務委託契約の内容が、都道府県からチェックされることになります。③

医療法が改正されて、「関係事業者との取引に関する情報開示」として、一定の要件に当たる取引は毎年、事業報告書と一緒に都道府県に届け出る必要があります。
前回では、下記の取引のうち③まで解説しました。
今回は、④からの取引の解説になります。

④の取引について

立替金で最も多いのは、院長先生に対するものです。
「医療法人に、お金を立替えてもらうことなんてないよ」
と主張する院長先生もいます。
ただ医療法人から一定のお金をもらって、それで院長先生が飲食など交際費で使い、その領収書を毎月精算している場合があります。

もちろん、医療法人の事業に関連する飲食であれば、何の問題ありません。
ところが、すべての領収書が経費に計上できるわけではなく、中には個人的な領収書が紛れていて、それが毎年少しずつ貯まっていくと1千万を超えてしまうのです。その場合には、都道府県の監督官庁に報告する義務が発生します。1ヶ月で10万円ぐらいだとしても、1年間で120万円となり8年ぐらいで1000万円に達します。これは医療法人から院長先生への貸付金として処理されていることもあります。その場合でも、上記の⑤に該当するため、やはり報告義務が発生します。

ただ医療法人が院長先生へ貸し付けることは税務上も問題が多いこと、またすぐに精算しようと思って立替金として処理していることが多いと予想されます。

立替金であったとしても、貸付金であったとしても、早急に精算しましょう。

精算する方法としては、院長先生の個人の通帳から医療法人にお金を振り込んでもらうしかありません。

 

⑤の取引について

医療法人が分院を作るときには、都道府県の許可が必要となります。申請してから許可が下りるまで、約3ヶ月から半年ぐらいかかります。許可が下りてから、分院の内装や医療機器を導入するなれば、さらに半年ぐらいかかってしまいます。そこで先に分院長に就任してもらう予定の医師に開業してもらい、それを分院として取り込むことがあります。

ただその分院長の資金が潤沢にあるわけではなく、院長先生が貸し付けるケースがほとんどです。

このとき、医療法人から分院長にお金を貸し付けていることがあります。院長先生に給料を支払って、残ったお金を貸し付けると所得税率が最高で55%と高いため、かなり資金効率が悪くなります。一方、医療法人の法人税率は30%前後で低いため、医療法人で利益を出してお金を貯めて貸し付ける方が資金効率はよくなります。

この場合に、医療法人が他人にお金を貸すことは利益供与となるため認められません。それが将来の分院長であったとしても同様です。

分院長に事業ためにお金を貸す場合には、当然ですが1000万円は超えてきます。今後は、監督官庁である都道府県に報告義務が発生しますので、資金効率は悪いですが院長先生から個人的にお金を貸し付けるしかありません。都道府県がこの内容を知れば、分院の許可を出してくれません。

また院長先生が分院長に貸し付ける金利はいくらが妥当かと聞かれることがあります。個人が例えば、友達にお金を貸す場合には、無利息の場合もあり得ます。必ず院長先生が儲からなくてはいけない訳ではありません。そのため何億円も貸すのではなく、数千万円の範囲内であれば無利息で構いません。

 

⑥の取引について

株式会社が他の株式会社の株式を所有すれば、親子会社という関係になります。普通に見られるグループ会社の形態です。

ところが医療法人は、他の医療法人の持分を所有することはできません。

持分がない医療法人だけではなく、持分がある医療法人でも同じです。そのため、他の医療法人の子会社となることはあり得ないのです。

一方、兄弟会社であれば可能です。
つまり、院長先生が他の医療法人の社員(株主のこと)になることです。ただ兄弟会社となるためには、院長先生が個人でお金を出資しないといけません。院長先生が個人でお金を貯めることは資金効率が悪く、医療法人からお金を借りると、やはり今回の報告義務にかかってしまいます。

そこで医療法人が他の医療法人と合併する、もしくは事業譲渡によって購入してくる形態がほとんどのケースとなります。合併を選択する場合も多いと思いますが、被合併会社として消滅する医療法人が債務超過であったり、借金が大きいとそれらもすべて存続する医療法人が引き受けることになります。そこにリスクがあると考えるならば、事業譲渡を選択することになります。事業譲渡は、売却する医療法人側で消費税がかかってしまうことがあり、その問題だけは事前に確認する必要があります。

事業譲渡で取引をした場合には、通常1000万円以上で売買するはずなので、⑥の取引に該当して報告義務が発生することになります。ただ事業譲渡を行ってはいけないという訳ではありません。監督官庁である都道府県も、医療法人のM&Aを禁止していません。

事業承継者がいない医療法人を誰かが引き継いでくれる方が、地域の医療にとっても好ましいはずです。

そのため、事業譲渡が適正価格で行われていれば、報告しても何の問題も発生しないのです。では、適正価格とはどのようなものなのでしょうか?

適正価格を算定したプロセスが重要となります。
通常は、第三者間でM&Aを行うはずですので、適正価格の算定に疑義が生じることは少ないですが、営業権の金額が大きくなることがあります。
例えば、事業譲渡する資産と負債の内訳が、下記のようだったとします。

実際の医療法人の負債の中には銀行からの借金などがあったとしても、それは引き継がずに支払ったお金で勝手に精算してもらうことにします。すると引き継ぐ負債は通常は医療機器のリースの債務や従業員の賞与と退職金の債務となります。賞与は6ヶ月の計算期間で支払うため、数百万円を引き継ぎます。退職金については、事業譲渡するときに支払ってしまうことも多く、引き継がないこともあります。

 

とにかく上記のような資産と負債の内訳で事業譲渡すると、資産と負債の差額が1000万円しかなく、これでは事業譲渡する医療法人側にとってもメリットがありません。建物内装や医療機器については、購入したときは高額でも時間が経過すると減価償却されていくため、その評価は下がっていくのです。そこで、営業権として4000万円を上乗せして、5000万円で売買することにします。

この営業権はノウハウであり、目に見えるわけではありません。

事業譲渡を受ける側の医療法人のお金が、何の根拠もない金額で支払われてしまうとなれば、監督官庁である都道府県から指摘があるかもしれません。
そのため、

事前に営業権の評価のプロセスの資料を準備しておくべきです。営業権はDCF法などの将来の利益から算定するのが、通常です。

 

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