MS法人との業務委託契約の内容が、都道府県からチェックされることになります。②

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2017/09/20
MS法人との業務委託契約の内容が、都道府県からチェックされることになります。②

医療法が改正されて、「関係事業者との取引に関する情報開示」として、一定の要件に当たる取引は毎年、事業報告書と一緒に都道府県に届け出る必要があります。前回で関係事業者の範囲について説明しました。
では、関係事業者と取引をしたら、それが1円でも報告の義務が発生するのでしょうか?

医療法人と院長先生、または医療法人とMS法人との取引金額が以下の基準を超えたら、報告義務が発生します。

①の取引について
事業収益又は事業費用ですから、この典型的な事例は医療法人からMS法人に手数料や賃料を支払うケースを指しています。
例えば、医療法人の窓口業務をMS法人に請負契約で任せて、月額100万円の手数料を支払っていれば1年間で1200万円となり、報告義務が発生するのです。

ただ都道府県に取引内容を報告すればよいだけであり、MS法人に手数料を支払ってはいけないと言っている訳ではありません。

それでは、監督官庁である都道府県は、何をチェックしているのでしょうか?

実は、監督官庁である都道府県は、医療法人がお手盛りでMS法人に利益を移転していないかを確認したいのです。

手数料に多額の利益が上乗せされていたり、不動産の賃料が高ければ、結果的に医療法人のお金がMS法人に移転していることになります。もともと、医療法人は医療法54条で「医療法人は、剰余金の配当をしてはならない。」と規定されています。医療法人の医業収益のうち約90%が社会保障や税金によるものです。そのため、医療法人のお金は医療のために使われるべきものだと厚生労働省も都道府県も考えているのです。

例えば分院を出したり、医療機器を購入したり、院長先生、看護師や社員に労働としての適正な対価を支払ったり、医療法人を運営することに使ってほしいのです。これを無暗にMS法人に吐き出して、そこで利益を貯めることができたら医療法54条で配当を禁止している意味もありません。
ということで、医療法人が適正な利益率でMS法人に手数料を支払っていれば、文句を言われることはありません。

適正な利益率であるかどうかは、大きな病院であれば入札を行うことで、診療所など小さな医院であればアイミツを取ることで証明すればよいのです。

報告書を提出したあと、都道府県から連絡がある前に、資料を準備しておきましょう。

②と③の取引について
①については適正であれば、問題ありませんでした。
一方、②と③の取引については、かなり慎重に対応する必要があります。

理由は、②と③は通常では発生しない損失が医療法人に発生しているから、事業外損益または特別損益が計上されているからです。

例えば、医療法人が所有していた社宅を院長先生に売却するとします。
もし購入したときと比べて土地の時価が下がっていれば、かなりの損失が発生するのです。第三者に売却する場合に損失が発生することは仕方がないですが、院長先生に売却することで損失が発生すれば、説明を求められる可能性があります。それでも合理的な説明ができれば、問題はありません。

ところが意図的に損失を発生させているようなケースは、注意が必要です。必ず、それを回復させるように監督官庁の都道府県から指導されるはずです。

例えば、医療法人が契約者兼受取人、院長先生が被保険者として、生命保険に加入していることがあります。この生命保険の契約者兼受取人を院長先生に変更することもできます。解約返戻金に相当する金額を医療法人に払い込めば、税務上は問題が発生しません。
この解約返戻金は、保険期間によってかなり変動します。

契約者を院長先生に変更した時点では、解約返戻金と生命保険料の累計金額との間には大きな差額がありますので、これが医療法人の雑損失となります。

院長先生はその時点での解約返戻金のお金を医療法人に払い込みます。
医療法人にも、院長先生にも税金は発生しませんし、税務上のリスクもありません。そのあと院長先生が生命保険料を払い込み続けて、「解約返戻金=生命保険料の累計金額」となった時点で解約します。

すると、「解約返戻金-医療法人に振り込んだお金-院長先生が個人で支払った生命保険料の累計」が一時所得して課税されるのです。
一時所得は下記の計算式で所得税を計算します。

「÷2」としてから所得税率を掛けあわせるため、かなり所得税が低くなります。これは医療法人が損をした金額について、院長先生が儲かったことになり、その所得税が低いため、かなり手取りが多くなるのです。
これを都道府県に報告したら、どのように指摘されるでしょうか?

当然ですが、契約者を変更する合理的な理由がないかぎり、医療法人に意図的に損失を発生させていますので、元に戻すように指導されるはずです。

合理的な理由の1つとしては、「院長先生が退職するとなれば、被保険者が医療法人からいなくなるため、生命保険の契約を続けることができずに、仕方がなく契約者を変更した」などです。理由なく強引にやれば、業務改善の指導が入り、それを無視すれば、最大20万円の過料がかかり、それを無視すれば、業務改善命令となり、それを無視すれば、医療法人の認可取り消し・・・・・となる可能性もあります。
こんなことで、監督官庁である都道府県ともめる必要もないので、生命保険の契約者変更については十分に気をつけましょう。

④以降の取引については、次のブログで解説します。

 

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