医療法人の院長が亡くなったら、どうやって相続税を支払うのが、一番効率的なのか?

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2012/06/04
医療法人の院長が亡くなったら、どうやって相続税を支払うのが、一番効率的なのか?

日本は、急速に少子高齢化社会になってきました。

戦後すぐの第一次ベビーブームで生まれた人たちの年齢も70歳を超えてきています。

同じ時期に生まれた医院や病院の院長も多く、高齢の方が増えました。人口に比例して、医院経営や病院経営に携わる人が増えるのは当然です。

そして数字を見ると驚いてしまうのですが、医院や病院の院長の年齢の構成は、下記のようになっています。

年齢

構成割合

平均年齢

29歳以下

0.0%

62.7歳

30歳 ~ 39歳以下

2.5%

40歳 ~ 49歳以下

10.7%

50歳 ~ 59歳以下

29.3%

60歳 ~ 69歳以下

30.7%

70歳以上

26.8%

どうですか?

医院や病院の院長で、60歳以上の方が占める割合が、57.5%にもなるのです。

そして、平均年齢は、62.7歳です。この統計資料は、平成18年度の資料です。

それから5年以上経っているので、もっと年齢構成は高くなっているはずです。

 

このように、平均年齢が高くなり、医院や病院の院長の相続の問題も比例して増えてきました。

この問題は大きく分けると2つです。

  • 【1】相続人同士が、財産の遺産分割の協議で争っている
  • 【2】相続税が支払えない

上記のうち、【1】の親族間の争いは、医院や病院に特有の問題ではなく、一般会社でも、土地を持っている地主さんの家庭でもよくある話しです。

一方、【2】は一般会社や地主さんの家庭では、あまり多くありません。

というのも、地主さんの家庭であれば、土地を売却すれば、相続税は支払えます。土地自体を物納するという方法もあります。

一般会社であっても、会社の預金を株主に配当すればよいのです。そのお金がないという会社であっても、財産を売却すれば、問題は解決できます。

同じように、個人医院の場合には、どうしても相続税が支払えなければ、医院や病院の土地や建物を売却すれば、相続税を支払うことができます。

相続税のために、そこまでするのか?という疑問を持つかもしれませんが、税金が支払えないと、強制的に売却させられてしまうこともあるのです。

それに、税金を滞納すれば、7%前後(現時点の金利)利子を支払うことにもなります。

個人で銀行から借りるという方法もありますが、結局は担保を差し入れなくてはいけません。

できるだけ、速やかに相続税は支払うべきです。

一方、医療法人の出資持分が高いために、相続税が支払えない場合だけは違います。

なぜかと言えば、医療法人は配当することができないからです。

例えば、下記のような決算書の医療法人はどうなるのでしょう。

この医療法人の出資持分の価格は、原則、10億円となります。

院長が持っている他の財産の価格によっても、相続税の税率は変わってしまいますが、30%と仮定しましょう。(最高税率は50%)

とすれば、この医療法人の出資持分に対して、3億円の相続税がかかることになります。

これ、どうやって支払えばよいのでしょうか?

相続税を支払えないことで、医院経営や病院経営に悪影響を与えないようにしなければいけません。相続税のせいで、医療法人が倒産したというのでは、本末転倒です。

これが一般会社であれば、先ほども言いましたが株主に会社の現預金を配当してしまえば、この相続税を支払えます。

それでも、その配当にも所得税がかかるため、5億円を配当しなければ、3億円の現金は手元には残らないでしょう。(所得税の最高税率は50%です)

ただこの方法は、配当することが禁止されている医療法人では使えません。

では具体的に、どうすればよいのでしょうか?

一つ目の方法は、
院長に対する死亡退職金を支払うことです。

死亡退職金であれば、所得税は安くなります。

ただ、限界もあります。

通常、医療法人が支払える退職金の最高金額は、下記の数式で計算します。

退職金 = 最終月額報酬 × 勤続年数 × 3倍(功績倍率)

もちろん、これより低い金額でもよいのですが、今は相続税を支払うために、できるだけ多くの退職金をもらった方がよいので、最高額を出すとします。

例えば、この医院や病院の院長の役員報酬が毎月300万円、年間で3600万円だったとして、勤続年数が20年あれば、1億8000万円を支払えます。

この死亡退職金には約20%の所得税がかかるので、手取りは1億4400万円となります。

これだけでは、3億円の相続税は支払えません。

あとは、どうすればよいのでしょうか?

二つ目の方法として、
医院や病院の出資持分を医療法人に売却してしまうのです。

これも、禁止されている配当規制に抵触するのでは?と思うかもしれません。

定款に「出資割合に応じて払戻請求権を有する」と書かれている医療法人は、この方法が認められると解されています。

そのため、医院や病院の院長が亡くなった場合、最悪は相続税を支払うために、出資持分を医療法人に売却しましょう。

ただ、この場合でも2点だけ注意が必要です。

【1】定款の内容

定款に「出資額を返還する」となっている場合には、それを超えて、出資持分を払い戻すことができません。そのため、事前に定款を変更しておいてください。

【2】 院長の死亡退職金

院長の出資持分を医療法人に売却した場合、出資額を超えた部分は、配当金として所得税がかかります。最高で50%程度、最低でも40%ぐらいはかかると考えるべきです。

そのため、院長の出資持分を売却する場合でも、必ず院長の死亡退職金を併用して使うようにするべきです。

やはり、死亡退職金で支払う方法が、一番の節税になります。

ただこれも、事前に「退職金規程」を作成しておく必要があります。

なお、平成20年7月31日の東京高等裁判所で、医療法54条の「医療法人は、剰余金の配当をしてはならない」に着目して、院長の出資持分を医療法人に売却して、出資額を超えてお金を受け取った行為は無効という判決がありました。

もちろん、この医療法人の定款には、「出資額に応じて持分の払戻を請求することができる」と書かれていたのですが。

これは最高裁判所の判例ではないため、あくまで参考であり、かつこの医療法人には特殊な事情もありましたが、まったく無視はできないとだけ付け加えておきます。

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