医療法人の議決権は、頭数で決まるので、将来の相続で誰が社員になるかを予想しておこう

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2013/07/10
医療法人の議決権は、頭数で決まるので、将来の相続で誰が社員になるかを予想しておこう

現在は、医療法人を設立すると、持分の定めのない形態になり、子供が相続するときに相続税はかかりません。

そのため、ずっと個人で医院経営や病院経営を行ってきた院長先生も、事業承継のことを考え始めて、相続税の試算をしてみると、医療法人にするメリットが大きいことに気づきます。
そのため、今は若い院長先生だけではなく、70歳以上の院長先生が医療法人を設立するケースも増えてきました。

そもそも、医療法人は、常勤の医師3名以上が必要という要件がありましたが、2名に緩和されて、現在では1人でも特例で医療法人を設立できることになっています。
いわゆる、「1人医療法人」ですが、現実には、医療法人の80%が、この医療法人に該当するため、特例とは言え、常勤が院長先生1人だけでも、必ず設立は認められます。
ただ、医療法人を設立するときに、事前に知っておくべきことがあります。

1.議決権は頭数で決まる

まず一番最初に知っておくべきことは、医療法人の議決権についてです。
医療法48の4で、「社員は、各1個の議決権を有する」と定められています。

医療法人の社員とは、株式会社の株主のことを指します。
株式会社の「株主総会」に当たるものを、「社員総会」と呼びます。
そして基本的に、都道府県の指導で、医療法人を設立するときの持分は、3人もしくは5人となっているはずです。

たとえば、あなたが院長先生で、家族3人で医療法人を設立したとします。

医療法人の議決権は、頭数で決まるので、将来の相続で誰が社員になるかを予想しておこう

普通の株式会社であれば、80%を出資した院長先生の議決権が過半数を超えているため、いや3分の2さえも超えているため、他の2人の妻と長男の意見は聞かなくても、何でも決定できてしまいます。

ところが、医療法人の場合には、基金を出資した割合とは関係なく、社員総会では社員が議決権を1個ずつ持つことになるのです。

「まぁ、別に私と妻が喧嘩するわけもないから、それで過半数になるよ」
とあなたは、思われるかもしれません。
確かに、今のままで、妻と長男が結託して、院長先生に反旗を翻すというケースは、私も見たことがありません。
ところが、このあと院長先生の相続が発生すると、医療法人をめぐって争うケースがあります。

これは、私が実際に担当したケースですが、院長先生には、長男と次男、長女の3人の子供がいました。
院長先生は、長男に持分を相続させるつもりで、遺言書を作成していました。
ところが、妻が先に亡くなったのです。

医療法人の議決権は、頭数で決まるので、将来の相続で誰が社員になるかを予想しておこう

院長先生は、「まさか、妻が先に亡くなるとは・・・」と思っているうちに、その持分の一部は次男と長女が相続することになったのです。相続なので、次男と長女が医療法人の持分を放棄することを承諾しないかぎり、自動的に法定相続分に応じて、引き継がれてしまいます。

もちろん、医療法人を継がないはずの次男と長女に持分を持たせても仕方がありません。
そこで、別の財産をあげるので、医療法人の持分は放棄するように説得しました。

ところが、2人とも院長先生の助言を聞かず、結果的に、妻の遺産分割協議は紛糾したのです。

院長先生は、この段階で自分が亡くなったら、この3人が喧嘩すると予想して、私のところに、ご相談に来ました。

その後も、次男と長女にお金を渡すことで諦めてもらおうと説得を続けましたが、まったく応じません。次男と長女は、院長先生ではなく、長男に対して「子供ときから、ムカつく」という気持ちがあったようです。

父親が長男ばかりに肩入れして、次男と長女をないがしろにしていたことも原因でした。2人は父親に対しても、快い感情を持っていませんでした。母親が生きているうちは、実家に帰ったりしていましたが、そのときには、まったく顔も会わせない状態でした。

彼らは、お金ではなく、父親と長男を困らせてやろうという気持ちの方が強いと感じました。

「家族なんだから、相続で争うことはないよ。みんな、仲が良いからね」
と言われる院長先生がいます。

ところが、家庭裁判所で争っている人たちに話を聞くと、

「家族だからこそ、冷静になれずに、
感情的になってしまう」

という答えが多いのです。
家族でなければ、お金で解決できることも、感情が入るとお金の問題ではなくなってしまうのでしょう。

お金の話しではないと言われてしまうと、もう解決する方法がありません。
裁判をやったとしても、次男と長女が妻の持分を相続する権利はあるのですから、勝てるはずもありません。

ただこのままでは、家族の争いで、医院経営や病院経営が破たんしてしまいます。
まったく関係のない、医院で働く看護師や社員、それに患者さんにも迷惑がかかってしまいます。

そこで、院長先生の持分を、長男の妻と子供に贈与してもらい、長男側を3名として、過半数の議決権を獲得する方法に切り替えました。

一応、問題は解決しましたが、次男と長女には子供がいます。
そのため、将来、相続が発生したときに、どれだけの社員が増えるのか、そして長男側が頭数で勝つことができるのかは分かりません。
医療法人を舞台に、家族の争いは終結したわけではないのです。

医療法人の持分は、事業承継者以外に拡散させないことが大前提です。

そもそも、医療法人の設立時に妻に持分を持たせるのではなく、長男の妻、もしくは子供(院長先生から見れば、孫)に持たせればよかったのです。
家族で争うことも、医院経営や病院経営に悪い影響を与えることもありませんでした。

もし医療法人の設立時に、孫が生まれていなかったり、議決権の知識がなかったとしても、妻に遺言書を作ってもらえばよかったのです。

医療法人の議決権は、出資した金額ではなく、頭数で決まることに注意してください。

医療法人を設立するとの注意点は他にもありますが、それは次の記事で説明します。

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