医療法人が社員総会を開催する前に、社員の選任には注意が必要です。②

住所
医療関連のコンサルティング
医院経営/病院経営コンサルティング > 医療法人制度の基礎知識と理事長がやるべきこと > 医療法人が社員総会を開催する前に、社員の選任には注意が必要です。②
2016/11/30
医療法人が社員総会を開催する前に、社員の選任には注意が必要です。②

医療法人が社員総会を開催する前に、社員の選任には注意が必要です。②

前回に続き、第7次医療法改正により、明らかになった医療法人の社員と社員総会の役割りについての解説の続きです。

医療法人の社員とは、株式会社の株主に当たります。

つまり、医療法人において、最高の意思決定機関になります。

社員は出資した金額に関係なく、1人1議決権を持つため、誰を就任させるかを院長先生がよく考える必要がありました。
平成28年9月から施行された第7次医療法改正の前から、社員総会という制度はありました。ところが、院長先生も、他の理事も、社員総会は開催せず、勝手に医療法人の運営を決めていました。それが、今回の改正で、ハッキリとやるべきことが明文化されたのです。

 

(1) 理事、監事を選任、解任できる

社員総会によって、理事と監事を選任するだけではなく、解任することができます。

いきなり、理由もなく理事や監事を解任はできませんが、下記の場合には、解任できることになりました。

医療法人が社員総会を開催する前に、社員の選任には注意が必要です。②

解任までこじれる前に、総社員の5分の1以上の社員による請求で、社員総会を招集できて、そこで、理事の行為の差止め請求ができます。

理事長である院長先生であっても、これを無視して実行し法人に損害を与えた場合には、責任を追及されることになるのです。

 

(2) 報酬の決定権限がある

株式会社であれば、通常、毎年、株主総会で決議をして、取締役や監査役の報酬を決定します。同じように、医療法人でも、理事や監事の報酬の金額を、社員総会で決めることになりました。理事や監事の報酬は、定款で定めておくこともできますが、変更するたびに定款を変更するのは大変ですので、通常、社員総会で決めます。

このとき、社員総会で総額を決定し、理事会で個々人の報酬額を決定することもできます。

その場合には、社員総会議事録と理事会の議事録の2つが必要となるため、家族だけで理事会を固めている医療法人であれば、社員総会議事録で、個々人の報酬を決めてよいと思います。

なお、報酬だけではなく、医療法人から受ける財産上の利益があれば、それも社員総会で決める事項に含まれます。つまり、金銭ではなく、院長先生の生命保険料であったり、借上げ社宅の賃料など、理事だけに与える特別な利益があれば、報酬とみなされるため、社員総会議事録に記載しておく必要があります。

 

(3) 理事や監事を訴える

社員は、医療法人に対して、書面その他の厚生労働省の定める方法により、理事や監事を訴えることもできます。社員が、家族だけであれば、そのような事態にはなりませんが、社員の中に第三者が入ってくれば、あり得ることになります。

例えば、「看護師や従業員が横領したことで医療法人に損害が発生した」、「経理部長が独断で投機的な金融商品に出資していて、多額の含み損が発生した」ことに対して、理事としての監督責任を問われることがあります。

 

(4) 社員名義を整備する

医療法人は、社員名簿を備え置き、社員の変更があるごとに、必要な修正を加えなくてはいけません。このとき、社員名簿には、以下の事項を記載することになっています。

医療法人が社員総会を開催する前に、社員の選任には注意が必要です。②

社員名簿については、医療法人の設立当初から、家族だけという場合には、それほど難しい作業ではないでしょう。

ところが、家族だけではなく、支店を作ったり、勤務医を社員にするなど、入れ替わりが激しい医療法人の場合には、設立当初からの履歴をすべて残さなくてはいけません。

あとで、退任した理事から、「私は、社員だったはずだ」と主張されたら、それに対抗しなくてはいけません。
第7次医療法では、医療法人や院長先生が訴訟に巻き込まれやすくなりました。

真っ先に行うべき対策が、社員名簿の作成なのです。

あとで、理事を解任されたと文句を言われたときも、誰が社員として社員総会で賛成意見を述べたのか、誰が反対したのかをハッキリさせなくてはいけません。

多分、ほとんどの医療法人が社員名簿を作っていないと思います。
作っていたとしても時系列ではなく、現在の社員の名前と住所をエクセルなどで、一覧にしているだけのはずです。

できる限り、遡って社員名簿を作成しておくことが、将来のリスクを下げることにつながります。なお、院長先生から、「祖父の相続対策の一環で、私を飛ばして、子供に持分の一部を相続させた。子供は、まだ小学生だが、社員として認められるのか?」と聞かれることがあります。

運営管理指導要綱には、「未成年であっても、社員になることができるが、自分の意思で議決権を行使することができる程度の弁別能力を有していることが必要となる。自分の意思で議決権を行使することができる程度の弁別能力を有している者の基準として義務教育終了程度の者」と記載されました。

つまり、小学生では年齢が若すぎるので認められず、高校生以上であれば、社員として参加できることになります。

ただし、都道府県の管轄で未成年は、認めないと指摘される可能性は残ります。そのときも、この運営管理指導要綱を見せて、交渉してください。

ここまで、社団法人である医療法人について、社員や社員総会の役割りを解説してきました。
医療法人は、財団法人という組織形態もあります。
財団法人の場合には、社員が評議員に、社員総会が評議員会に変わり、基本的には、同じ役割りとなります。さらに、特定医療法人の場合には、社団法人なのですが、社員総会と評議員会が併存することになります。

医療法人が社員総会を開催する前に、社員の選任には注意が必要です。②

財団法人でも、同じように訴訟のリスクが高まっています。

今すぐ、評議員名簿を作りましょう。

 

facebook
twitter
google+