医療法人が社員総会を開催する前に、社員の選任には注意が必要です。①

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2016/11/20
医療法人が社員総会を開催する前に、社員の選任には注意が必要です。①

医療法人が社員総会を開催する前に、社員の選任には注意が必要です。①

第7次医療法改正により、社員総会の役割りがハッキリと明文化されました。これにより、今まで、「社員って、何だ?」と言っていた院長先生も、しっかり構成を考えていく必要があります

 

(1)社員になれる人

医療法人の社員とは、株式会社でいう株主のことです。
株式会社では、金銭出資、もしくは財産を出資しないと株主にはなれません。一方、医療法人は、労務出資でもよいので、「俺、出資していないけど、社員なのか?」と言う人もいるのです。

実際に、私が見たことがある社員名簿で、院長先生の家族全員、勤務医全員の名前が載っていて、15人もいるということがありました。

社員は出資した金額とは全く関係なく、1人1票の議決権が与えられています。

この場合、院長先生には、1議決権しかないので、他の人たちが反旗を翻したら、大変なことになります。実際に、相続のあと、親族でもめて、議決権が乱用され、倒産した医療法人もあったのです。そのため、誰を社員にすべきかを、よく考えなくてはいけません。
まず、誰が社員になれるのでしょうか?

実は、自然人だけではなく、営利を目的としない法人も社員になれます。

営利を目的としない法人とは、一般社団法人やNPO法人を指します。

当然、社員となれるので、法人として1票の議決権を持ちます。

なお、間違えやすいのは、医療法人には、持分のある医療法人と持分のない医療法人があることです。持分のある医療法人は、持分を譲渡することができます。そのため、株式会社がその持分を所有していることがあります。ただ、その場合には、社員にはなれないので、株式会社は議決権を持ちません。医療法人を解散したときに、残余財産を分配してもらう権利があるだけとなります。

議決権の話をすると、院長先生は、「社員は、家族だけにしておけばいいのでは?」と思うかもしれません。医院や病院が1ヶ所であれば、それでも問題ありません。
ただ、医療法人が支店をいくつも出す場合には、支店ごとに管理者となる医師を常勤させなくてはいけません。

子供が医師であればよいですが、ほとんどの場合、第三者の医師に任せるはずです。その医師は、管理者として、医療法人の理事となるのですが、別に社員にする必要はありません。ところが、都道府県によっては、「理事=社員です」と指導していることがあります。その場合には、どうしても、社員に家族以外の人が入ってくることになります。

実際のところ、家族であっても、何かのきっかけで、関係が決裂することもあり、支店がなくて、家族で固めているので大丈夫とも安心できません。

 

(2)相続でもめると大変なことに

社員を家族だけにしている場合、大きな問題が発生するリスクがあるのが、相続です。まず、社員たる地位は、他の社員の同意があって、初めて与えられます。

例えば、下記のように持分のある医療法人の社員である父親(院長先生)が亡くなり、その持分が相続人である母親と4人の子供に相続されたとします。

医療法人が社員総会を開催する前に、社員の選任には注意が必要です。①

長女と次男は、医療法人の持分を相続することはできます。相続人同士で争ったとしても、共有で持分を持つことになります。ところが、長女も次男も、社員ではないので、議決権は持ちません。あくまで、母親と長男が、それぞれ1票の議決権を持ち、50%ずつとなるのです。

ここで、長女と次男が医療法人の社員になりたいと主張しても、母親と長男の2人が同意しないと、過半数とならず、社員へ就任することができません。これは、持分のない医療法人であっても、同じです。持分のない医療法人は、持分がまったくないので、遺産分割の対象にもならず、社員として参加できるかどうかだけの争いになります。

ただ、家族でもめたとしても、長男が理事長になり、長女と次男は議決権を持てず、医療法人の経営には口を出せないので、問題ないと思うかもしれません。確かに、持分のない医療法人はよいのですが、持分のある医療法人は、定款で、

「社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払い戻しを請求することができる」

と定められていることが、ほとんどなのです。
社員資格を喪失とは、「除名、死亡、退社」のことを指します。

先ほど、長男が同意しなければ、長女と次男は、社員になれず、議決権がありません。そもそも、長女も次男は、医師でもなく、今まで医療法人の経営には関わっていません。議決権もなく、経営にも関与しなければ、当然、持分を払い戻して欲しいと要求するでしょう。父親が100%の金銭出資を行い、母親も長男も労務出資だとすれば、長女と次男の2人で3分の1の持分にもなり、それに対応する財産を払い戻さなければいけなくなります。

医療法人の持分に相当するお金は、貯まっているわけではなく、建物や土地、医療機器に投資されているのです。長男は、ずっと医療法人の事業を続けるつもりなので、それを売却して払い戻せるわけがありません。結局、家族が裁判で何年間ももめているケースが、世の中にはたくさんあるのです。

 

(3)持分のない医療法人になる

家族での争いを防ぐためには、父親の生前に、持分のある医療法人が、持分のない医療法人に組織変更することです。

持分のない医療法人になれば、長女と次男が持分を相続することもなくなり、払い戻しの請求もやってきません。ただ、持分のない医療法人になるときに、医療法人に贈与税がかかります。その贈与税は、経費にもなりません。
それでも、銀行がそれに見合うお金を貸してくれます。
そのため、一度、贈与税を試算してみましょう。
持分のない医療法人になれば、長男に相続税がかかることもなくなります。

このとき、あなたが、「医療法人を継ぐ子供は、まだ決まっていない」というのであれば、少し待っても良いかもしれません。最近は、医療法人のM&Aも増えてきています。もともと、子供が医師にならない場合だけではなく、子供が医学部を卒業して医師になったにも関わらず、父親の医療法人を継がないこともあります。その場合、医療法人で働く看護師や社員、通っている患者のことを考えれば、売却してでも存続させるべきです。

もし持分のある医療法人であれば、金銭出資をしている社員以外はすべて退社させて、持分を売却すれば、売却益に対して20.315%という所得税を支払うだけで、M&Aの手続きは完了します。

ところが、持分のない医療法人の場合、院長先生が売却する持分がありません。引継ぐ医師が理事となり、同時に社員として参加するだけとなります。他人に、医療法人の財産をタダであげる院長先生はいないので、売買金額を退職金でもらうしかありません。

退職金だけで、院長先生が希望する金額に達すればよいですが、無理ならば、給料で何年間にも渡ってもらうことになります。勤務せずに給料をもらえば、税務上は否認されてしまうため、希望するお金に達するまで、働き続けることになります。持分を譲渡するときには、売却益に対して20.315%でよかった所得税が、院長先生が給料としてもらうことになれば、最大で55%にもなります。

このように、M&Aを実行するときには、持分のない医療法人は、圧倒的に不利になります。

院長先生が医療法人の社員の構成を考えて、かつ持ち分のある医療法人のままにするか、持分のない医療法人にするかという戦略を練る必要があります。

次回は、この続きで、社員総会の役割りについて、考えていきたいと思います。

 

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