監事を依頼する友人に必要とされる資格と職務と、その責任とは

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2017/04/30
監事を依頼する友人に必要とされる資格と職務と、その責任とは

監事を依頼する友人に必要とされる資格と職務と、その責任とは

医療法人には、役員として必ず監事を1人以上就任させなければいけないと決まっています。医療法人を設立するときに就任してもらいますが、そのあとは、社員総会の決議によって再度選任したり、解任したりすることになります。(医療法(Ⅰ)46の5②、46の5の2①)

ただ一般的には、解任することはなく、2年の任期が終了した段階で、再任するか他の人に代わってもらうか決めることになります。監事が遠方に転勤してしまう、外国に行ってしまう、年齢が高くて業務遂行が難しいなど、物理的な理由で辞めることが多いと思います。また監事は理事の行為をチェックする立場ということから独立性が求められ、院長先生の親族は就任できません。

そこで、ほとんどの場合、院長先生の大学病院時代の友人や先輩などにお願いして、就任してもらっているはずです。監事は医師や公認会計士などの資格は必要ありませんが、就任できない条件、つまり欠格事由が医療法で決まっています。

監事を依頼する友人に必要とされる資格と職務と、その責任とは

「株式会社や医療法人が監事になることができるのか?」と、ときどき聞かれることがありますが、上記の通り、就任できません。

当然ですが、理事と監事を兼任することもできません。
また医療法人の監督官庁である都道府県によっては、上記の医療法上の欠格事由に追加して、独自に就任できない者を決めています。

監事を依頼する友人に必要とされる資格と職務と、その責任とは

では実際に監事に就任した場合、どのような仕事を行うのでしょうか?

監事を依頼する友人に必要とされる資格と職務と、その責任とは

まず①に関しては、監事は会計に関することだけではなく、医療法人の業務が法令違反、例えば医療法や薬事法に違反をしていないかをチェックする役割があるとしているのです。

そのため、監事は医療法人の業務運営を理解する必要があるのです。

そして、もし監事が違反を見つけたときには、⑥により社員総会で報告する義務があるので、院長先生に対して異議を申し立てることができる人物となります。ただこの社員総会は1年に1回しか行われないため、緊急を要する場合には、監事が理事に対して理事会を招集するように依頼することができます。もし理事が動かない場合には、監事が自ら理事会を招集するのです。(医療法(Ⅰ)46の8の2③)

さらに、監事が法律違反を発見したことで、理事会を招集する時間もないほど差し迫ったリスクがあると判断した場合には、理事の行為を差し止めることができます。(医療法(Ⅰ)46の8の3、法人法103)

このとき、理事の行為が医療法人に損害を与える可能性がある場合には、監事が医療法人を代表して理事の責任を追及することになります。(医療法(Ⅰ)46の8の3、法人法104)ただそもそも、院長先生から就任を依頼された監事が、責任を追及することが現実にできるのかという疑問もわきます。そこで、医療法では、監事の責任まで決めているのです。

監事が自らの業務を放棄すれば、理事と一緒の責任が負わされるということなのです。

具体的には、監事が上記の義務や職務を怠った場合には、善管注意義務違反(医療法(Ⅰ)46の5④、民法644)となり、医療法人又は第三者に損害が発生すれば、理事と一緒になって損害を賠償する義務を負います。(医療法(Ⅰ)49)

でもこれを聞くと、院長先生は、
「医療法人が損害を被り、万が一に倒産した場合でも、院長である私が責任を負えばよいだけで、監事を訴えることはありえないよ」
と主張するかもしれません。

ただ医療法人が倒産した場合には、債権者である銀行やリース会社が責任を追及することがありえるのです。
また、院長先生の中には、
「今まで、医療法人の理事長が訴えられたという話は聞くし、実際の裁判もあるけど、監事が訴えられたという話は聞いたことがないな」
という方もいます。

この監事の職務や責任については、平成27年度の第7次医療法改正で明確になったことであり、これから監事の責任が追及される案件が増えると予想されているのです。

ということで、院長先生としては、いくら友人や先輩と言えども責任が発生するならば、監事の就任の依頼を少しだけ躊躇するかもしれません。ここで大切なことは、監事にすべてのチェック機能を任せようとするから荷が重くなるのです。監査役が就任している株式会社では、内部統制という機能を働かせています。

つまり、内部の社員同士でも牽制するような体制を作り、それを監事に報告するという組織を作り上げることができれば、それほど監事の仕事は大きく削減できます。
では具体的に、社員同士の牽制とはどのようなものなのでしょうか?

第一に、マニュアル化することです。
当然ですが、理事会や社員総会の議事録を作成します。特に、理事会の議事録は作成していないことも多く、そこで決定した内容を監事に報告する体制が必要です。また、社員が行った業務を院長先生などに承認してもらうプロセスなどを文書化します。

結局、誰がどのような業務を行い、医療法人の組織の中での責任者が誰であり、意思決定権を持っているのかを明確にすることは、社員にとってもメリットがあります。

社員が仕事で疑問を持ったら、誰に何を聞けばよいのかが分かるからです。

第二に、同じ人が兼任しないことです。
窓口でお金を精算する人と、領収書を発行する人と、通帳を管理する人が同じ場合、不正をしやすい状況となります。できるだけ、それぞれの仕事をする人を変更することです。
また理事も親族だけで固めるのではなく、勤務医を理事に就任させて、意見を聞くことも1つの牽制になります。実際に私の顧問先では、今まで院長先生が独断で決めていたところ、理事会を開くようになってから、理事に就任した勤務医の先生からの助言で看護師や社員の意見が上がるようになりました。そのおかげで、離職率が3分の1に減ったのです。

第三に、専門家の話も聞くことです。
医師だから医療法や薬事法に詳しいというわけではありません。そのため、医療法や薬事法に詳しい弁護士を顧問として迎えることも大切です。毎月、数万円の顧問料を支払うだけで、医療法改正などの情報を得られ、リスクが減るならば安いものです。

今まで何となく監事に就任してもらい、1年に1回程度、医療法人に来てお茶を飲んでいたというケースも多いと思います。これを機に職務と責任を監事に説明して、最低でも月に1回は来てもらうようにして、実際の業務を行ってもらうことが、医療法人の経営を健全にする機会になるのではないでしょうか。

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